喫煙は体の細胞の遺伝子や器官を傷つけ、がんの他、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの生活習慣病、さらに歯周病などさまざまな病気の原因になります。
また妊娠中の喫煙は、血流を介しておなかの赤ちゃんにも影響し、早産や低出生体重児などが起こるリスクを高めます。しかも妊娠に気づきにくい初期は、胎児の内臓をつくる細胞が成長する大事な時期ですので、妊娠前から喫煙をやめ、たばこ煙を避けるようにしましょう。
世界に感染が広がった新型コロナウイルス感染症については、喫煙が重症化の最大リスクであることが明らかになっています1)。感染して重症化し、人工呼吸器が必要になった人と死亡した人の数は、非喫煙者の3倍以上という報告がありますし、WHOでも新型コロナウイルス感染症対策として禁煙を推奨しています2,3)。
1)Liu W, et al. Chin Med J (Engl). 2020 Feb 28.
2)Guan WJ, et al. N Engl J Med. 2020 Feb 28: NEJMoa2002032.
3)WHO. WHO supports people quitting tobacco to reduce their risk of severe COVID-19
https://www.who.int/news/item/28-05-2021-who-supports-people-quitting-tobacco-to-reduce-their-risk-of-severe-covid-19(2021年11月4日接続)
喫煙していると歯周病にかかりやすいことも分かっています。歯周病が怖いのは、進行すると歯を失う原因になるだけでなく、全身の健康にも影響することです。
その他、ヤニで歯が黄色くなる、ひどい口臭がするなど、美容やエチケット面でもマイナスばかりです。お口の健康のためにも、禁煙したいものですね。
喫煙が喫煙者本人に影響を与える病気は科学的にも証拠があり、喫煙との因果関係が十分にあると推定される病気を「レベル1」、「レベル1」ほど十分でないが因果関係が示唆される病気を「レベル2」として公表されています。
(注1)妊婦の喫煙との関連
喫煙の健康影響に関する検討会編:
「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(平成28年8月)より作図
たばこを吸う人(喫煙者)の死亡率は吸わない人(非喫煙者)より高く、国内で喫煙に関連する病気で亡くなった人は年間で12万人~13万人4)、世界では年間500万人以上と推定されています。さらに、国内の調査では20歳よりも前に喫煙を始めると、男性は8年、女性は10年も短命になることが分かっています5)。喫煙は、一時の至福感と引き換えに、自分の寿命を削っているのです。
4)厚生労働省:健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料
5)Sakata R, et al. BMJ. 2012; 345: e7093.
35歳~40歳で禁煙すれば喫煙前の余命を取り戻すことができます。また、50歳で禁煙しても6年、60歳なら3年寿命を延ばすことができるといわれています6)。禁煙はいつから始めても遅すぎることはありません。先送りせず、禁煙する気になった時がやめ時です。
6)Doll R, et al. BMJ. 2004; 328(7455): 1519.
たばこは発がん性物質など数千種類の物質が含まれていますが、その中でも三大有害物質といわれているのがニコチン、タール、一酸化炭素です。
たばこの煙を吸い込むたびに、気管や肺はこれらの有害物質にさらされ、炎症を引きおこしているのです。