白クマ
日医白クマ通信 No.715
2007年8月24日(金)


第8回医療政策会議
権丈善一講師が「日本の社会保障と医療―小さすぎる政府の医療政策」と題して講演

第8回医療政策会議


 第8回医療政策会議(議長・田中滋慶大大学院教授)が、8月22日、日医会館で開催された。

 唐澤人会長のあいさつに続いて、権丈善一講師(慶應義塾大学商学部)が、「日本の社会保障と医療―小さすぎる政府の医療政策」をテーマに講演を行った。

 権丈講師は、初めに、「医療・介護および保育・教育サービスをみんなが自由に使ってよい共有地のように、所得等にかかわらず利用でき、就業形態選択の自由が保障された社会を作ればよい」との持論を紹介。さらに、「福祉国家には、日本型の“家族依存型”、アメリカ型の“市場依存型”、スウェーデン型の“政府依存型”―の3類型がある。少子高齢化によって課題の多い日本の活路は、“市場依存型”か“政府依存型”のどちらかだが、“市場依存型”へと向かわせるような“力”が働いている」と述べた。

 権丈講師は、医療を例にとり、小さな政府を選択するアメリカ型・市場依存型について、以下のように説明した。

 今は、大国の大資本が市場を求めて他国のルール変更さえ求めるようになっている。キーワードとしては、(1)ワシントン・コンセンサス、(2)ウォール街・財務省複合体、(3)「年次改革要望書」(米国通商代表部)―の3つが挙げられる。(1)は、1989年に使われるようになった言葉で、「小さな政府の実現」「民営化」「貿易の自由化」「規制緩和」といった政策の組み合わせが経済開発促進に最も適しているという理論。(2)は、1998年バグワティが、アメリカにおける金融業界と政府当局の癒着を非難した言葉。(3)は、1993年の宮澤・クリントン首脳会談以後、日米間で交わされているもの。特に、「年次改革要望書」の内容は、わが国の規制緩和・規制改革や法律・制度改正案の項目に反映されており、直近の2006年のものでは、医療機器・医薬品への要望に加え、医療のIT化なども求められている。

 そのうえで、日本の医療崩壊を食い止めるためには、厚生労働省の2025年度社会保障給付費141兆円という過大な推計に基づく医療費の抑制をすることなく、医師を増やして数を確保することが喫緊の課題であり、医療費も欧州諸国の平均水準まで増やすべきだと強調した。

◆問い合わせ先:日本医師会情報企画課 TEL:03-3946-2121(代)


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