白クマ
日医白クマ通信 No.1634
2013年1月31日(木)


第4回医療政策会議
「在宅ケア・終末期ケアの経済分析と死亡場所の変遷をテーマに講演」

第4回医療政策会議


 第4回医療政策会議が1月23日、日医会館で開催された。

 冒頭、横倉義武会長は、「新年に首相官邸を訪問し、社会保障への十分な配慮を求めてきた。先日、財政制度等審議会が平成25年度予算編成に向けて取りまとめた報告書の内容は厳しいが、国民の健康を守るという立場から問題を指摘していきたい」とあいさつした。

 議事では、二木立委員(日本福祉大学教授・副学長)が、「在宅ケア・終末期ケアの経済分析と死亡場所の変遷―私の今までの研究と最新の実証研究の紹介を中心にして」と題して講演し、質疑応答を行った。

 同委員は、かつて医師として東京都心の病院で勤務していた際、在宅医療を経験したことから、在宅ケアとその経済分析が自らの臨床と医療経済学研究の原点であると前置き。その上で、歴代の著書において、「重度障害者の在宅ケア費用は施設ケア費用よりも高い」との自論を展開してきたことを紹介した。在宅ケアを拡充しても、施設ケアが減らせるわけではないことも主張し、在宅医療の推進により医療費が抑制出来るとの従来の厚生労働省の考え方の誤りを指摘した。一方、厚労省幹部の中に、「在宅ケアは施設ケアに比べて効率が悪くて費用がかかる」との認識や、「在宅と入院では、在宅の方が安いと言い続けてきたが、女性が仕事を辞めて介護をしたり、自宅をバリアフリーにするなど、本当のコストなども含めて議論すべき」との認識を持つ人もいることを評価した。

 終末期ケアにおける医療費の問題については、死亡前1年間の医療費が老人医療費の1割に過ぎず、アメリカのメディケアの3割よりははるかに低いという実証研究があり、また、2007年の日医総研ワーキングペーパー『後期高齢者の死亡前入院医療費の調査・分析』でも、終末期ケアが医療費の高騰を招いている訳ではないことが明らかにされていると強調。しかし、小泉政権時代には、厚労省より「自宅等での死亡割合を4割に引き上げれば2025年度に約5,000億円の医療給付費を削減出来る」との試算が示され、誤った議論がなされてきたとした。

 死亡場所とその割合については、(1)平成2〜22年に病院病床数は5%減ったが、病院での死亡率は34万人も増加しており、主因は平均在院日数の短縮である、(2)平成11〜21年に特別養護老人ホームでの死亡数は2.2倍になっており、介護施設が今後、死亡場所の大きな受け皿になる、(3)低下傾向にあった自宅死亡割合は、平成17、18年で下げ止まったものの、首都圏では逆に急増しており、その背景に孤独死の増加がある―と説明。

 厚生労働省の“在宅”には、自宅だけでなくグループホームやサービス付き高齢者住宅、届出のない老人施設も含まれることから、自宅での死亡割合を正確に把握することが難しいことを指摘したほか、「介護療養病床の廃止方針は、死亡場所の確保面からも再検討を迫られるのではないか」「地域包括ケアシステムの推進には賛成だが、今後の死亡急増時代に自宅死亡割合を大幅に高めることは困難である」との見解を述べた。

 質疑応答では、自宅の定義の曖昧さについて意見が相次ぎ、二木委員は政策立案のためにも正確な死亡場所を把握することが重要であるとして、「死亡診断書における死亡場所の種別を、“狭い意味での自宅”と“それ以外”に区別するよう、日医が提言して欲しい」と要望した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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