白クマ
日医白クマ通信 No.1451
2011年8月4日(木)


第6回医療政策会議
「無政府状態下の日本の財政・社会保障」をテーマに委員が講演

第6回医療政策会議


 第6回医療政策会議が7月15日、日医会館で開催された。

 原中会長の挨拶の後、権丈善一委員(慶応義塾大学商学部教授)が「無政府 状態下の日本の財政・社会保障」と題して講演した。

 同委員はまず、我が国の現状について「法案を通す力を持った政府が存在せ ず、これは、政治空白というより無政府状態である」と憂慮。

 医療の産業化については、公的医療保険の再分配機能として、1.疾病リスク が等しい者の間での保険的再分配、2.高所得から低所得者への垂直的再分配、 3.健康な一般国民から病弱者への異なるリスク集団間再分配―の3つを挙げ、 「民間企業に垂直的再分配、リスク集団間再分配を行うことは出来ない。支払 能力によらず、必要に応じて利用出来る医療制度とするためには、医療を市場 に載せることには慎重である姿勢は、論理整合性を持つ」と述べた。

 そのうえで、「65歳以上人口割合とGDP比国民負担率」の表から、日本は 高齢化水準が世界一でありながら、スウェーデン、デンマークの半分程度の国 民負担率しかないことを示し、「OECD30カ国の中で、GDPの社会保障以 外の支出は圧倒的に小さい。これで一体何ができると言うのか」と指摘。社会 保障・税の一体改革を取り上げ、菅内閣の「財政運営戦略」が自民党の「財政 健全化責任法案」をなぞったものであることを説明し、「どんな政権であろう が同じものになってしまう」との見解を述べた。

 また、両党の案で掲げられているように、2015年度までに基礎的財政収支の 対GDP比を2010年度分の2分の1にし、2020年度までに基礎的財政収支を黒 字化出来たとしても、金利が数%上がり、国債費が増加すれば、増税を行って も社会保障費を抑制せざるを得なくなると危惧し、財源調達力の高い消費税の 増税は避けられないとした。

 一方、経済成長を経て生活水準が向上した時代においては、購買意欲が飽和 状態になって経済が停滞してしまうため、社会的に有用な消費を促す必要があ り、その例として医療や介護を提示。消費性向を高める政策の下で、社会保障 は市場問題と生活問題を解決する一石二鳥の策であるとの見方を示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


  日本医師会ホームページ
http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association.
All rights reserved.