白クマ
日医白クマ通信 No.1394
2011年3月7日(月)


医療政策会議「医療の産業化について委員が講演」

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 第4回医療政策会議が2月18日、日医会館で開催された。

 原中会長のあいさつの後、二木立委員(日本福祉大学教授・副学長)が「会長諮問『医療を産業化させていいのか』:4つの話題提供」と題して講演。

 同委員は、会長諮問に関する私見は、医療政策シンポジウム(日医ニュース第1187号>>>)で大方話したと前置きしたうえで、(1)著書『民主党政権の医療政策』、(2)株式会社の病院経営参入論の挫折と医療法人制度改革、民主党政権での参入論の再燃、(3)「医療産業」・「医療の産業化」という用語の来歴、(4)日本の民間病院の「営利性」と「活力」―について説明した。

 そのなかで、まず民主党の医療政策について、政権交代時、医療費抑制政策を見直すとし、医師数増加の目標数値も示したため好意的に評価したものの、今ではマイナスの評価を抱いていることを表明。その理由として、“乱暴な政治主導”と、“医療への市場原理導入論”を挙げ、「医療を経済の下支え、社会安定感の装置として使うことには賛成だが、それが経済成長の牽引車になることはあり得ない」とした。

 そのうえで、小泉政権時代に挫折した株式会社の病院経営参入論が民主党政権下で再燃した背景についての考察を述べるとともに、行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」の『中間とりまとめ(案)』に、「医療法人の再生支援・合併における諸規制の見直し」として、「営利法人の役職員が医療法人の役員として参画することや、譲受法人への剰余金配当金等が認めるべきである」という、医療への市場原理導入の新たな火種が盛り込まれたことについて、その経緯の不透明さを指摘した。そして、この方針が閣議決定されれば、将来、医療法人全体に拡張され、営利法人による医療機関経営の解禁につながる危険があることや、その結果として、医療の非営利原則が弱まり、既存の医療機関の営利的行動・「企業化」が強まることから、国民医療費が不必要に増加し、国民の医療への不信感が強まるとの見方を示した。

 会長諮問に対する暫定的意見としては、「国民皆保険を支える医療産業(医療機関、医薬品産業・医療機器産業等)の健全な発展は重要だが、そのためには、社会保険料を主財源、消費税を含む公費を補助的財源として安定的財源を確保し、公的医療費を拡大することが不可欠である」とし、公的な医療費を抑制して私的な医療費を拡大させても、“コストシフティング”が生じるだけで、総医療費の大幅な増加は不可能であると強調。株式会社の医療機関経営の解禁や、混合診療の全面解禁等の医療分野への市場原理導入には絶対反対の立場だとしたうえで、「医療機関経営の効率化と非営利性の強化を併せて行わないと内閣府に太刀打ち出来ず、国民の支持も得られない」と述べた。

 質疑応答では、医療法人の持分と医療法人制度改革をめぐり活発な意見交換が行われ、二木委員は、法律上の非営利性と実際の活動の非営利性など医療機関の非営利性の在り方の難しさを説明するとともに、医療の企業化においては、企業の参入だけでなく、既存の医療機関の営利的な行動にも気を付けるべきだとした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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