なるほど診療報酬(しんりょうほうしゅう)

新聞やテレビなどで
医療に関する報道の際に使われている
「診療報酬」という言葉があります。
このコーナーでは、「診療報酬」について
分かりやすく解説します。

「診療報酬」とは?

病気やけがなどの際に、日本では全国民に加入が義務づけられている公的医療保険制度があるため、保険証を提示すれば、誰でも必要な診療行為(診察、治療、処方など)を自分が選んだ医療機関で受けることができます(「国民皆保険」と言います)。
[詳細は「世界に誇れる日本の医療保険制度」
https://www.med.or.jp/people/info/kaifo/)をご覧下さい。]

日本では、診療行為の1つ1つに厚生労働大臣が定めた点数(診療報酬)が決められ、それらの点数を足し合わせて算出した金額が、診療にかかる医療費となります。
そのうち、自己負担分(原則3割※年齢や所得に応じて異なる)を患者さんから、残りは加入している医療保険者から、医療機関等に支払われることになります。

「診療報酬」の図

診療行為ごとに公定価格【点数】が決められている

診療報酬の点数は、1つ1つの診療行為ごとに厚生労働大臣が細かく決めています。
皆さんが受けた診療行為に対する価格は、その行為ごとに決められた点数を基に「1点=10円」として計算されます(例えば、初診料291点ですと2910円になります)。
この診療行為ごとの点数「1点=10円」という金額は、全国どこでも変わりありません。

1点 = 10円

点数はどうやって決まっているの?

診療報酬の点数は、医療の進歩や日本の経済状況を踏まえて、
通常2年に一度見直しが行われています。これを「診療報酬改定」と呼んでいます。
まず、年末に政府が国の予算編成をする際に診療報酬全体の「改定率」を決定し、それを基に、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(以下、中医協)に意見を求めます。

中医協は、支払側委員(保険者・患者・事業主の代表など)、
診療側委員(医師の代表など)、公益委員(学識経験者など)の3者構成
となっており、日本医師会からも診療側委員として議論に参加しています。
中医協では、前回改定の影響を検証するなど議論を重ね、
その上で厚生労働大臣からの諮問に対して、
厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会並びに医療部会で決められた改定の基本方針に従って、個々の診療行為に対する点数の見直し内容を提案しています。

「診療報酬改定」の図

みんなから意見を聞いて決めるんだね!

令和6年度診療報酬改定について

キャラクターイラスト

改定に当たっての
日本医師会の主張
  • 類を見ない物価高騰の中で、全就業者の約14%を占める医療・介護等の就業者(約900万人)の生活を守り、国民に必要な医療・介護サービスを確保するための賃上げを実現するには、その原資が必要である。
  • 日進月歩する医療を全ての国民に提供するため、必要かつ適切な診療報酬上の評価が不可欠である。
これらを
強く主張した結果

キャラクターイラスト

診療報酬本体+0.88%の改定となり、初診料、再診料、入院基本料※1の診療報酬の点数が引き上げられました。※2
また、30年間据え置かれていた入院時の食事療養費が引き上げられました。

なお、従来の診療報酬の改定時期は4月でしたが、準備に伴う医療現場やシステム業者の負担軽減を図るため、今回から6月に変更となりました。?

  • ※1...入院した際にかかる1日当たりの基本料金。診察や看護の他、室料や寝具など、医療環境の提供費用も含む。
  • ※2...薬価、材料価格改定分も合わせると、▲0.12%

「診療報酬」は医師だけの収入?

「報酬」という言葉のイメージから、「診療報酬」は全てが医師の収入と誤解されている方も多いのではないでしょうか?

診療報酬は、医療機関に対して支払われるものです。
医療機関ではさまざまな経費がかかっており、医薬品・医療材料の購入費、医療機器・機材に係る費用、施設維持・管理費用、人件費を主に「診療報酬」から賄っています(図)。

人件費については、医師だけでなく、看護師、その他さまざまなスタッフが働いており、これらすべての職種への給与等に必要な費用となります。
令和6年度の診療報酬改定では、そのうち看護職員や薬剤師などの医療関係職種の賃上げを目的として「ベースアップ評価料」も新設されました。

「診療報酬」は医師だけの収入?の図

病院や診療所のいろんなところに使われているんだね!

必要かつ適切な「診療報酬」の確保が不可欠!

保険医療機関の経営は主に「診療報酬」で成り立っています。国民の皆様に安心・安全な医療を提供し、必要と感じる時に受診してもらえるようにするためには、適正に設定された診療報酬による健全な医療機関経営が必要です。

日本医師会は、今後も国民の皆様の生命と健康を守っていくために、必要かつ適切な「診療報酬」の確保を国に求めて参ります。

今後も皆様の生命と健康を守っていくために、必要かつ適切な「診療報酬」の確保を国に求めていきます。