
Vol.12公開:令和8年3月
社交不安症
北海道大学保健センター 教授・センター長
朝倉 聡

社交不安症とは
社交不安症*1の人は、他の人から注視されるかもしれない社交的状況において、明らかに強烈な不安感や恐怖感が起きることによって、自分が恥をかいたり、恥ずかしい思いをしたり、拒絶されたり、他の人に迷惑をかけて他の人から否定的に評価されたりすることに対して、恐れを感じます。このため、社交的状況を避けることが多くなり、日常生活に支障をきたすことになります。
社交不安症の中でも、人前で話をしたり、演技をしたりする特定の場面のみに不安感や恐怖感が起こり、それ以外の社交的状況では特に症状が出ない場合には、パフォーマンス限局型と特定されます。
*1:社交恐怖とも呼ばれます。

発症・症状・経過
社交不安症の発症年齢は早く、75%程度の人は8~15歳で発症します。成人してから発症することは比較的まれですが、ストレスの強い出来事や職場での昇進など、新しい社会的役割を求められる生活環境の変化があった後に発症することがあります。アメリカでの12ヵ月有病率*2は7%程度、ヨーロッパでは2%程度、日本では0.7%程度とされています。
*2:調査時のある一時点において、過去12ヵ月間に特定の病気や健康状態を経験した人の割合。

不安感や恐怖感の出現しやすい状況、すなわち避けようとする状況としては、人前で話をしたり、字を書いたりすること、公共の場所での飲食や、あまりよく知らない人との面談などがあげられます。例えば、話をする時に声が震えたり顔が引きつったりしていると、他の人に気付かれて恥ずかしい思いをするのではないかと考えて非常に不安になります。また、手が震えていることに気付かれるのではないかと心配になり、他の人がいるところで物を食べたり、字や絵を書いたりするのを避けることもあります。試験など他の人から評価される状況も苦手です。これらの状況では、ほとんどいつも不安症状を体験していて、不安に伴う生理的反応として、赤面、動悸、手や体の震え、声の震え、発汗、胃腸の不快感、下痢などが起こりやすいと言われています。
注意が必要なのは、社交不安症の人は、後からうつ病やアルコール依存など他の精神疾患が起こりやすいということです。
治療
薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor : SSRI)が有効です。日本では、3つのSSRIが保険適用されています。精神療法では、認知行動療法が有効です。治療を受けないままでいると、60%程度の人は数十年にわたり症状が持続することが多く、退学率が高くなったり、職場での生産性や生活の質が低下することが多くなり、未婚、離婚、子どもを持たないことも多いと報告されています。
家族や周囲の人の接し方・生活のアドバイス
本人が自分の内気な性格のせいだと思い込んでいたり、家族など周囲の人からも「気にし過ぎだ、気持ちを強くもて」などと言われると、医療機関を受診するまでに時間がかかってしまうことがあります。病気の知識がないままに周囲の人が励ましてしまうと、本人を苦しめてしまいます。
薬物療法について不安になることがあると思いますが、「薬物療法は力強い味方になる。自分が薬物に変えられるのではなく、不安な状況に自ら立ち向かう手助けにしよう」と前向きに考えるとよいでしょう。

不安感や恐怖感が強くなる状況では、自分の身体反応(赤面、震え、発汗など)に注意が集中してしまい、自分を過剰に観察する状況に陥って、話をよく聴いていなかったり、状況をよく見ていなかったりして、周囲の人の様子を誤解していることも多くあります。よく聴き、よく見ることができるようになると、不安感は落ち着いてくることもありますので、もしできるなら、不安感が起こらないようにと自然にとってしまう回避行動*3を徐々にとらないように努力して行動し、その前後で周囲の人の様子をよく見て、誤解していなかったか確認するとよいでしょう。
*3:人前でのスピーチや他の人との会食を避けたり、集団での活動に参加しなかったりすること。

受診の勧め
社会生活に支障をきたすほどの症状があれば、またこの記事を読んで思い当たることがあれば、医療機関に相談してください。心療内科や精神科を受診して適切な治療を受けると、症状の改善が期待できますし、病気を長引かせて、うつ病やアルコール依存など他の精神疾患を起こしてしまうことへの予防になることも期待できるかもしれません。
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