日医ニュース
日医ニュース目次 第1102号(平成19年8月5日)

平成20年度の医療に関する税制に対する意見まとまる

 日医は,七月十七日に開催された第四回理事会で,三十項目からなる「平成二十年度の医療に関する税制に対する意見」を承認した.今後は,そのうちの十七項目を重点項目として,政府・与党および関係各方面に対して,要望していくことになる.
 翌十八日に記者会見を行い,要望の内容を説明した今村聡常任理事は,新医療法人対策,医師不足対策,勤務医対策,地域医療対策といった新たな分野で税制要望を行っていることが,今回の特徴であると説明.さらに,参議院議員選挙後に,消費税率の引き上げに関する議論が開始される可能性があることに触れ,「社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めること」については,より強力に要望していく考えを示した.
 同常任理事は,また,政府・与党に対して消費税非課税問題への理解を求めるため,都道府県医師会に対して地元選出の国会議員等への働き掛けを行うよう,協力を求めていることを明らかにした.
 なお,「重点項目」の内容は,次のとおりとなっている.

〈消費税対策〉

一 社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし,軽減税率による課税制度に改めること.(消費税)

〈新医療法人対策〉

二─一 新たな医療法人制度において,旧医療法に定められた持分の定めのある社団医療法人(経過措置型医療法人)が新たな医療法人に移行する際に,移行が新医療法の理念に沿っていることに鑑み,課税が生じないよう必要な措置を講ずること.(相続税・贈与税・所得税・法人税)
二─二 医療法人の法人税率は,公益法人の法人税率と同率にするとともに,新たな医療法人制度における社会医療法人・特別医療法人(平成二十四年三月までの経過措置)並びに特定医療法人の法人税は非課税とすること.(法人税)
二─三 特定・特別医療法人(平成二十四年三月までの経過措置)及び社会医療法人のために,寄付した場合において,以下の措置を講ずること.
 (1)特定・特別医療法人及び社会医療法人を特定公益増進法人の範囲に含めて,寄付者に対する措置(損金算入・寄付金控除)を講ずること.
 (2)個人が特別医療法人及び社会医療法人のために現物資産を寄付した場合におけるみなし譲渡所得について,寄付者に対する措置として特定医療法人と同様に課税対象から除外すること.
 (3)個人が特定・特別医療法人及び社会医療法人のために寄付した場合における相続財産に係る相続税について,寄付者に対する措置として社会福祉法人と同様に課税対象から除外すること.
 (4)特定・特別医療法人及び社会医療法人において,当該法人の寄付金収入について課税対象から除外すること.(所得税・法人税・相続税)

〈事業税対策〉

三 社会保険診療報酬に対する事業税非課税の特例措置を存続すること.(事業税)
四 医療法人の事業税については,特別法人としての事業税率による課税措置を存続すること.(事業税)

〈産科医療対策〉

五 産科医・産婦人科医不足対策として,以下の措置を講ずること.
 (1)分娩を取り扱う産科・産婦人科において,これらの診療科に係る自由診療報酬に係る所得について,事業税の課税対象から除外すること.
 (2)分娩を取り扱う産科・産婦人科を担う診療所については,法人税の大幅な軽減措置を講ずること.
 (3)分娩を取り扱う産科・産婦人科を担う医師(個人事業主及び勤務医師)の所得税の大幅な軽減措置を講ずること.(事業税・法人税・所得税)
六 産科医療における無過失補償制度(仮称)において,医療機関が支払う保険料については全額必要経費または損金とすることとし,補償の対象者については,受け取った補償額を所得税の課税対象から除外すること.(法人税・所得税・住民税)

〈地域医療対策〉

七 地域医療の確保を図るため,小児科医療,医師不足地域の医療,救急医療,在宅医療のいずれかを担う診療所で,地域医療の確保上重要な診療所については,法人税及び所得税の軽減措置を講ずること.(法人税・所得税)
八 医師不足地域における診療所の事業承継を支援するため,診療所の土地建物を事業承継する医師等に譲渡する際の譲渡益について,軽減措置を講ずること.(所得税・住民税・法人税)
九 救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法に基づく助成金交付事業を行う法人のために,寄付した場合において,以下の措置を講ずること.
 (1)寄付者に対する措置(損金算入・寄付金控除)を講ずること.
 (2)個人が現物資産を寄付した場合におけるみなし譲渡所得について,寄付者に対する措置として課税対象から除外すること.
 (3)個人が寄付した場合における相続財産に係る相続税について,寄付者に対する措置として課税対象から除外すること.(所得税・法人税・相続税)

〈勤務医対策〉

十─一 病院に勤務する医師の支援として,小児科に勤務する医師並びに救急医療に携わる医師に対して所得税の大幅な軽減措置を講ずること.(所得税)
十─二 病院に勤務する医師の支援として,勤務医師に対して所得税の軽減措置を講ずること.(所得税)

〈予防医療対策〉

十一 特定保健指導の受診者の自己負担分について,医療費控除の対象とすること.(所得税)

〈事業承継対策〉

十二 医業を承継する時の相続税・贈与税制度をさらに改善すること.(相続税・贈与税)

〈その他〉

十三 社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階制)を存続すること.(所得税・法人税)
十四 新たな公益法人制度において医師会等に対しては,寄付金課税,利子配当課税,収益事業課税等の特例措置を講ずること.(法人税・所得税・相続税・登録免許税・不動産取得税・個人住民税・固定資産税)

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