

明けましておめでとうございます。
会員の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。
本年の干支(えと)は、「丙午(ひのえうま)」です。「丙午」は、ある意味で最も有名な干支かも知れません。根強い迷信によって、前回の1966年でも出生率が前年より約25%も下がるなど、大きな影響力がありました。
「丙」「午」は共に「火」の要素をもちます。それが迷信にもつながっているのですが、別の面から見ると「情熱」や「エネルギー」と捉えることができます。実は私も午年生まれで本年は年男でございますので、高市早苗内閣総理大臣も自由民主党新総裁就任時に仰っておられましたが、私自身も「馬車馬のように」医師会のために働き、地域医療を守るという強い決意と信念の下、情熱的、かつ、エネルギッシュな一年にしたいと思います。
日本では、新年に門松・しめ縄・鏡餅の飾り付け、おせち料理、お屠蘇(とそ)、初詣、年賀状など、新しい年の無事を願うさまざまな風習があります。
わが国には、平安時代に宮中医官を務めた丹波康頼(たんばのやすより)が撰(せん)した、日本に現存する最古の医学書で、984年に朝廷に献上された「医心方」があります。現存する仁和寺の「医心方」は1952年に、東京国立博物館の「医心方」(半井家本(なからいけぼん))は1984年に、いずれも国宝となっています。日本医師会では、国宝「医心方」のユネスコ「世界の記憶」への登録を目指して活動しています。新年を機に、ぜひ、多くの会員の先生方に知って頂きたいと考えております。
また本年は、2月に冬季オリンピックがイタリアのミラノとコルティナ・ダンペッツォで、6月にサッカーワールドカップ2026がアメリカ・カナダ・メキシコでそれぞれ開催されます。日本選手が大いに活躍されることを期待しております。
さて、昨年は参議院選挙が行われました。本会からは当時副会長であった、かまやち敏先生が組織内候補として出馬し、初当選を果たされました。与党が過半数割れし、自民党の全国比例の得票数も前回から大きく減少するという極めて厳しい状況の中でしたが、皆様のご尽力によって、医療・社会保障関係候補者7名のうち、トップの17万4434票余りを獲得することができました。
組織強化につきましては、私が日本医師会長に就任して以来、力を入れて取り組んで参りました。新たな医師会会員情報システム「MAMIS」によって、これまで書類で行ってきた入会・異動等の手続きをWEB上で行えるようになったこともあり、今年は更なる会員増に向けて活動を推進して参ります。ご協力頂いております全国の医師会の先生方には改めて深く感謝申し上げます。「MAMIS」につきましては、本格的な運用開始後、さまざまなご意見・ご要望を頂いており、順次改善して参ります。
なお、本年夏頃には、昨年から建設しておりました新オフィスビル「JMA EXTRA」も竣工予定です。
また、昨年4月より、かかりつけ医機能報告制度が施行され、地域における面としてのかかりつけ医機能の更なる発揮に向けた取り組みが始まりました。この1月から3月に掛けて、かかりつけ医機能報告制度のG―MISを活用した申請も始まります。地域を面で支えるため、全ての医療機関に報告頂きたいと考えております。日本医師会としても、かかりつけ医機能報告制度を見据え、研修の充実等を図って参ります。
今年は、令和8年度の診療報酬改定が行われますが、その改定率は3・09%となりました。
改定に当たっての基本認識として、まず、日本経済が新たなステージに移行しつつある中での賃金・物価の上昇、人口構造の変化や人口減少の中での人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性が挙げられております。
次に2040年頃を見据えた、全ての地域・世代の患者が適切に医療を受けることが可能で、かつ、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築、更には、医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進による、安心・安全で質の高い医療の実現、そして、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和といった方向性で、診療報酬改定が進められることになるかと思います。
そのための基本方針として、「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」「安心・安全で質の高い医療の推進」「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」の四つが挙げられています。
日本医師会としては、まずは急激な物価高騰に対応するとともに、公定価格で運営されている医療機関・介護施設等における就業者約938万人の賃上げが可能となる環境を整えることが不可欠だと考えております。
また、医療機関は、病院、診療所共に一体となって地域を支えており、いずれも必要不可欠です。特に財務省等は、「病院と診療所」「高齢者と若者」「病気の人と健康な人」など、さまざまな二項対立で分断を煽(あお)っておりますが、それが社会の不安定につながっていきます。社会格差と健康格差を生まないような社会にしていかなければなりません。
保険料は全て国民の健康と生活を支える医療・介護として還元されています。社会保障給付は、医療・介護ニーズの高い高齢者を中心に利用されるため、現役世代の社会保険料負担のみに着目した議論になりがちですが、現役世代にとっても、離れて暮らす高齢の親への仕送りや医療・介護を心配することなく安心して働き、能力と適性に応じた場所で活躍できることこそが、子どもの有無にかかわらず現役世代のメリットとなります。
このような課題に対し、医療保険制度を持続可能とするための方策として、高額療養費制度や、高齢者の自己負担のあり方、金融所得の勘案の検討、OTC類似薬の保険給付のあり方、医療保険制度における出産に対する支援の強化等が挙がっております。
その他にも医薬品の安定供給や2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の検討など、医療界には取り組むべき課題が山積しております。日本医師会は、医療界の総力を結集して議論をリードしつつ、活動を進めて参ります。
新しい年が会員の先生方お一人お一人にとって充実した幸多き年となりますことを祈念申し上げ、年頭に当たってのごあいさつといたします。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



