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令和7年(2025年)9月20日(土) / 日医ニュース

2024~2025年度武見フェロー帰国報告会を開催

2024~2025年度武見フェロー帰国報告会を開催

2024~2025年度武見フェロー帰国報告会を開催

 2024~2025年度武見フェロー帰国報告会が8月19日、日本医師会館で開催され、ハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院武見国際保健プログラムで研究に従事し、帰国したフェローから研究成果の発表が行われた。
 報告会には、日本医師会役員、日本製薬工業協会(製薬協)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、武見フェロー、日医総研の研究員など、約50名が参加した。
 冒頭あいさつした松本吉郎会長は、本プログラムについて、ハーバード大学において40年以上継続している大変ユニークな学際的プログラムであり、世界の保健医療の推進にも寄与しているとして、資金援助を行う製薬協やPhRMAに対して感謝の意を述べた。
 また、今後も本プログラムが日本の医療を更に推進させるとともに、地域医療に役立つものになることに期待を寄せた。
 引き続き行われたフェローによる報告では、まず、加藤大祐ハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院社会・行動科学部門訪問研究員が「バーチャルコミュニケーションは高齢者の孤独を軽減するか?―機械学習を用いた効果の不均一性の検証―」と題して、バーチャルコミュニケーション(以下、VC)と高齢者の孤独感の関連性に関する研究結果を説明。
 VCは平均的に高齢者の孤独感を軽減させるが、効果には個人差があり、効果が乏しい、あるいは逆効果になり得る人もいるため、全体の平均効果だけで判断してはいけないこと、効果が大きい人に優先配分することで健康格差縮小の可能性もあることを示すとともに、「アクセス障壁を下げる」「オンラインとオフラインを併用する」「公平性を担保する」といったことの重要性も強調した。
 続いて、西川佳孝京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野准教授が「放射線災害後の安定ヨウ素剤による甲状腺防護策の実態調査」と題して、2011年に起きた福島第一原子力発電所事故後の子どもにおいて、安定ヨウ素剤の内服と甲状腺検診結果との関連は認められなかったことを紹介した他、単回服用による副作用は大きくないことも示唆されたと説明。
 また、安定ヨウ素剤を内服しなかった理由として、安全性への不安や副作用、効果に関する情報不足等が挙げられたことにも触れ、子どもや保護者、妊婦への啓発と効果的なコミュニケーションは原子力緊急事態への備えとして重要であるとした。
 その後は、フェローと出席者との間で活発な質疑応答が行われた。
 本研究で得られた知見を医療保険制度や臨床現場に導入する可能性について問われた加藤研究員は、今回は観察研究であり、政策に実装するには更に研究を進める必要があるとした上で、他の選択肢を複数検討して患者に情報提供を行い、最終的に患者に選択してもらうのが大切な臨床のあり方だと考えていると述べた。
 また、災害時に備えて、安定ヨウ素剤は全国の自治体で用意すべきか問われた西川准教授は、実際に服用するかは被害状況による判断となるが、全国の自治体で備え、いざという時に服用できる状況を整えておく他、実際に配布する際には医師会や薬剤師会等の助言を踏まえて自治体が速やかに決定できるフローが理想だと回答した。
 最後に濵口欣也常任理事から、2026~2027年度の日本人フェローを募集中であることの紹介があり、報告会は終了となった。

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