宮川政昭常任理事は8月28日の定例記者会見で、日本医師会がこのほど取りまとめた「令和7年度医療に関する税制要望」の内容を説明した。
本要望は、日本医師会医業税制検討委員会で検討が行われ、8月6日に開催された令和6年度第14回常任理事会において決定したもので、別掲の10項目により構成されている。
同常任理事は、まず、1.社会保険診療等に係る消費税制度の見直しについて、「診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続し、病院においては軽減税率による課税取引に改める」という昨年度と同じ内容となっていることを説明。
2.医業承継時の相続・贈与に関する税制措置については、医療法人の出資の評価に関して、「持分のある医療法人」の永続性が保証されないのであれば、それに応じて評価の引き下げを行うべきであるとした他、基金拠出型医療法人、認定医療法人、出資額限度法人に関しては「例年どおりの措置を求めている」と述べた。
また、3.医療機関に対する事業税特例措置の存続では、「社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置の存続」「医療法人の社会保険診療報酬以外の部分に係る事業税軽減措置の存続」を、4.医療機関の強靭(きょうじん)化を支援するための税制措置では、地域の防災に資する設備投資への税制措置(特別償却や税額控除など)の創設、医療用機器等の特別償却の延長・拡充、その他を要望しているとした。
5.地域医療構想に適合する病院用建物等の特別償却制度についてはその延長と拡充を求めるとともに、6.医療機関が取得する償却資産に係る固定資産税についての所要の税制措置を要望すると説明。7.社会保険診療報酬の所得計算の特例措置については、引き続き存続を求めるものであることを概説した。
8.公益法人等に関する所要の税制措置としては、「社会医療法人等の『収入要件』について、補助金収入の取扱いの見直しや保険外併用療養費に係る収入の取扱いの見直しを求めている」と述べた。
その他、9.消費税インボイス制度における免税事業者等からの仕入に係る経過措置については、8割控除ができる期間の大幅な延長を、更に、10.賃上げ促進税制における税額控除上限については、上限が「当期の法人税額等の20%」では、病院のように人件費率が高く利益率が低い業態では控除しきれないケースが想定されることから、その引き上げを、それぞれ新規に要望しているとした。
その上で、同常任理事は本要望を8月21日に厚生労働省へ提出したことを報告し、年末の与党税制改正大綱の決定に向けて、これらの要望が実現できるよう、政府与党を始め関係各方面に働き掛けを強めていく考えを示した。
令和7年度 医療に関する税制要望
令和6年8月
公益社団法人日本医師会
1. 社会保険診療等に係る消費税制度の見直し
社会保険診療等に係る消費税について、診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めること
―消費税―
2. 医業承継時の相続・贈与に関する税制措置
(1)医療における法人の新たなあり方の検討
(2)医療法人の出資の評価方法の改善
(3)基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設等
(4)認定医療法人制度に係る税制措置の拡充
(5)出資額限度法人の持分の相続税・贈与税課税の改善
―相続税・贈与税・所得税―
3. 医療機関に対する事業税特例措置の存続
(1)社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置の存続
(2)医療法人の社会保険診療報酬以外の部分に係る事業税軽減措置について地域医療の確保を図る趣旨に沿って存続
―事業税―
4. 医療機関の強靭化を支援するための税制措置
(1)医療機関が地域の防災に資するよう、防災構造施設、防災用設備等に係る税制上の特例措置創設
(2)病院・診療所用建物の耐用年数の短縮
(3)医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー化に資する設備投資等について、即時償却又は税額控除(10%)を選択適用できる措置を講ずること
(4)医療用機器等の特別償却制度について、中小企業経営強化税制と同等の措置が受けられるよう、以下の措置を講ずるとともに適用期限を延長すること
①医療用機器の特別償却制度について、適用対象となる取得価額を160万円に引き下げ、10%の税額控除又は即時償却の選択適用
②勤務時間短縮用設備等の特別償却制度について、税額控除の導入、特別償却率の引き上げの措置
(5)中小企業投資促進税制の適用期限を延長すること
―所得税・法人税・固定資産税・不動産取得税―
5. 地域医療構想の実現に資する設備に関する税制措置
構想適合病院用建物等の特別償却制度について、税額控除の導入、特別償却率の引き上げの措置を講ずるとともに適用期限を延長すること
―所得税・法人税―
6. 医療機関が取得する償却資産に係る固定資産税についての所要の税制措置
(1)医療機関における医療DXへの対応及び省エネルギー化に資する設備投資について、一定期間の固定資産税の非課税措置を講ずること
(2)生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えるとともに適用期限を延長すること
―固定資産税―
7. 社会保険診療報酬の所得計算の特例措置存続
―所得税・法人税―
8. 公益法人等に関する所要の税制措置
(1)医師会について
開放型病院等の法人税非課税措置の拡充、開放型病院等の固定資産税等非課税措置の恒久化、その他の措置
(2)一定の医療保健業を行う非営利型法人等に係る固定資産税等軽減措置及び公益目的事業として行う医療保健業に係る固定資産税等軽減措置
(3)社会医療法人・認定医療法人・開放型病院等の認定要件等における補助金収入の取扱いの見直し
(4)社会医療法人・認定医療法人・開放型病院等の認定要件等における保険外併用療養費に係る収入の取扱いの見直し
―法人税・相続税・贈与税・固定資産税・不動産取得税・登録免許税―
9. 消費税インボイス制度における免税事業者等からの仕入に係る経過措置の延長
―消費税―
10. 賃上げ促進税制における税額控除上限の引き上げ
―所得税・法人税―
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