閉じる

令和5年(2023年)9月20日(水) / 日医ニュース

都道府県と医療機関の医療措置協定締結の仕組みなどを解説

都道府県と医療機関の医療措置協定締結の仕組みなどを解説

都道府県と医療機関の医療措置協定締結の仕組みなどを解説

 改正感染症法等に基づく協定に関する説明会が8月24日、日本医師会館にてオンラインとのハイブリッド会議で、令和5年度都道府県医師会感染症医療提供体制担当理事連絡協議会と兼ねる形で開催された。
 当日は、厚生労働省からの改正感染症法等の概要説明の後、釜萢敏常任理事が日本医師会の考え方を説明。その後は都道府県医師会と役員との間で活発な質疑応答が行われた。

 令和4年感染症法等の改正では、新興感染症の発生・まん延に備え、都道府県と医療機関等との医療の確保等に関する協定が規定された。公的医療機関等も含め、特に新型コロナウイルス感染症対応をした医療機関によっては協定に関する協議を都道府県から求められる場合があることから、本説明会は、日本医師会としてその仕組みやプロセスなどについて厚生労働省と共に解説するために開催されたものである。
 説明会は江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、「現時点で法改正の内容や主旨が十分に行き渡っていないこともあり、どのように臨めば良いのか、そして有事の際にはどのように動くべきなのかといったことで、各地域において不安や混乱が生じている」と指摘。本説明会がその不安や混乱の解消のために生かされることに期待を寄せた。

(1)改正感染症法等の概要説明

 高宮裕介厚労省医政局地域医療計画課参事官は、3年にわたる新型コロナウイルス感染症への対応に謝意を示した上で、「次なる感染症がどのようなものか分からないが、新型コロナの経験を踏まえて準備をしておくことが重要である」と強調。今回の協定(内容は下記表参照)については、実際に発生した感染症の特性を踏まえ、修正を加えながら対応していくためのものであるとした。
 その上で、都道府県と医療機関の協定の仕組みについては、都道府県知事が平時に新興感染症の対応を行う医療機関と協議を行い、感染症対応に係る協定を締結するというもので、都道府県から要請があれば、全ての医療機関に協議に応じる義務が課されており、協議が調わない場合には、都道府県医療審議会が調整する枠組みとなっていることを説明。
 協定締結医療機関には、コロナ対応を行った約3000医療機関が想定され、①病床②発熱外来③自宅療養者に対する医療の提供④後方支援⑤人材派遣―のいずれか1種類以上の実施を行う他、協定締結医療機関のうち約500医療機関には、流行初期の医療確保のため「流行初期医療確保協定」を設定し、感染初期からの対応を行うこと、ピーク時には一定規模以上の病床確保を行うこと等が想定されているとした。
 また、公立・公的医療機関等、特定機能病院、地域医療支援病院には、その機能を踏まえて感染症発生・まん延時に担うべき医療の提供が義務付けられることにも言及した。
 更に、その財政的支援については、①「平時」は準備行為に応じて補助金で②「感染症発生・まん延時(感染初期)」は"流行初期医療確保措置"に加え、対応に応じた追加的な支援として補助金・診療報酬で―対応することになると説明。
 その他、協定締結のプロセスについては、都道府県知事は、都道府県医療審議会の意見を聴いた上で、地域の感染想定に応じた感染症医療の数値目標(確保すべき病床の総数等)をあらかじめ予防計画・医療計画に規定し、その後は計画に定めた病床を確保するため、事前に策定した協定案(病床の割り当て等)を基に各医療機関と協議を行い、その結果を公表するものであると解説。「協定のひな形を国から都道府県に既に示しているが、協定締結作業については令和5年度中から順次実施してもらい、令和6年9月末までには完了して欲しい」と呼び掛けた。

表 医療措置協定の内容

230920a2.jpg

※1 新興感染症患者対応の病床を確保し、重症者用病床や、精神疾患を有する患者、妊産婦、小児等の特に配慮を有する患者を受け入れる病床の確保も図る
※2 宿泊療養者、高齢者施設、障害者施設等の入所者を含む
※3 全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある等の新興感染症が発生したと位置付ける旨の公表

(2)日本医師会の考え方

 釜萢敏常任理事は、今回の法改正について、新型コロナの経験を踏まえ、幅広い医療機関が体制を整えて適切な医療を提供する準備をするために行われたものであるとした上で、協定が双方の合意に基づくものであることや、感染症の特性に合わせて都道府県と医療機関は協定の内容を見直すことができるなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行えるようになっていることを説明。「問題になる感染症がどのようなものか分からない中で協定を締結する医療機関側の不安は非常に大きいが、行政には状況の変化に応じて柔軟に対応する姿勢を示して頂き、両者が歩み寄って、現実的な協定の締結に進むことが必要である」と述べた。
 また、釜萢常任理事は、協定を締結した医療機関について、協定はコロナ対応を踏まえたものであり、従前の感染症指定医療機関とは別の新たな類型(①病床確保は「第一種『協定』指定医療機関」②発熱外来、自宅療養・宿泊療養は「第二種『協定』指定医療機関」。後方支援や人材確保は対象外)として位置付けられると説明。「従前の特定・第一種・第二種感染症指定医療機関とは名称は似ているが異なるものであり、エボラ出血熱等の1類や2類感染症ではなく、新型インフルエンザ等感染症等に対応することになる」と述べるとともに、特に②の協定については、地域医師会の協力を要請した。
 更に、協定の履行確保措置が設定されていることに対しては、「強制的という印象を受けるかも知れないが、それぞれの医療機関が自分の能力に応じてできる範囲で対応し、その範囲を広げていく努力をするという趣旨のものである」と説明。
 その他、流行初期期間の対応については、感染症発生の公表から3カ月程度が一つの目安になることから、国からの迅速な情報提供を求めるとともに、各医療機関の使用量2カ月分以上の備蓄が推奨されている個人防護具に関する費用についても、その補助を要望していく姿勢を示した。
 引き続き行われた協議では、都道府県医師会から事前に寄せられた質問や、会場及びWEBからの質問に、厚労省と日本医師会より回答。医療機関の感染対策に関する予算措置を求める意見等、活発な議論が交わされ、茂松茂人副会長の総括により、説明会は終了となった。

関連キーワードから検索

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる