令和5年(2023年)9月5日(火) / 日医ニュース
「豪雨被害の被災医療機関等の復旧」「新型コロナウイルス感染症対策」への財政支援並びに「2024(令和6)年度予算要求要望」を加藤厚労大臣に提出
松本会長、釜萢常任理事
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松本吉郎会長は7月31日、釜萢敏常任理事と共に厚生労働省を訪れ、加藤勝信厚労大臣に、(1)令和5年各地における豪雨被害の被災医療機関等の復旧支援に関する要望書、(2)令和5年10月以降における新型コロナウイルス感染症対策への財政支援について(要望)、(3)2024(令和6)年度予算要求要望―の三つの要望を手交し、その実現に向けた協力を求めた。 |
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(1)は、年々激甚化、頻発化する豪雨災害により、本年度も秋田、静岡、愛知、福岡、大分各県等において、医療機関等も大きな被害を受けたことを踏まえて取りまとめたものである。
具体的には、①医療機関建物の修繕・建て替え(事業者負担の軽減・免除)②医療機関設備の修繕・購入(CT、MRI、ICT関連等)③業務を停止または縮小している医療機関従業者の雇用維持④被災医療機関の二重債務問題(建物取得及び建て替え費用)⑤災害復旧資金等の融資に係る利子及び担保・保証⑥被災医療機関に適用され得る財政支援制度(補助、無利子・低利子融資等)を所管する他省庁と連携の上、当該医療機関が最適な選択をすることができるよう、さまざまな支援策を取りまとめて示すこと―を求めている。
松本会長は、自身が秋田県の被災医療機関を視察したことなどを踏まえ、「被害を受けた医療機関は地域医療を支えており、建物の修繕・建て替えなどを含めた国の支援がぜひ必要だ」と指摘。これに対して加藤厚労大臣は、関係省庁とも連携を図りながら支援を行っていきたいとの意向を示した。
(2)は、以下の八つの財政支援①次の感染症に備えるため、改正感染症法(令和6年4月1日施行分)に基づく、病床確保や発熱外来等の協定締結を進捗させるための支援②地域の外来医療体制の維持・充実のための支援③緊急包括支援事業のうち病床確保料等の必要な事業の継続④地域医療介護総合確保基金による介護施設等の掛かり増し経費等の支援策の継続⑤検査や診療を受けない・受けられないといったことがないよう、国民が医療機関にかかる際に、高額な治療薬などの費用負担が発生しない支援⑥診療報酬上の必要な措置の継続⑦介護保険施設を始め高齢者施設等に対する医療支援への対策⑧中小病院における要介護高齢者等の入院受け入れへの対策―を求めるものとなっている。
要望内容を概説した釜萢常任理事は、特に、「10月以降、高額な治療薬などの費用負担が発生し、国民が治療にたどり着けないようなことがないようにすること」「看護配置転換などで医療現場に過度な負担が掛かることのないよう、10月以降の方針を可能な限り早く示すこと」の2点を強く要望。また、高齢者施設等でクラスターが発生した場合、施設内でいかに治療ができるかが大事になるとして、体制が整っていない施設への国の支援を求めた。
加藤厚労大臣は、「引き続き医療機関への支援は継続していきたい」と述べるなど、一定の理解を示した上で、「コロナを平時の医療で対応できるようにすることが基本である」として、10月以降の国の方針は、8月の感染状況などを踏まえて決めていくとの意向を示した。
(3)は、8月末の政府概算要求に合わせて取りまとめ、7月25日に開催された令和5年度第12回常任理事会で了承を得たものである(別掲)。
その内容は、概算要求として以下の4項目(①新型コロナウイルス感染症等への予算確保②働き方改革への予算確保③地域医療への予算確保④医療DXの適切な推進のための予算確保)を、事項要求として、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性」に基づいた診療報酬等改定の実現を求めるものとなっている。
釜萢常任理事は、①について、「国には既に多くの支援を行ってもらっているが、更なる拡充・充実をお願いしたい」とした他、②に関しては、日本医師会としても新制度の施行に向けてしっかり準備を進めていく意向を伝えた。
また、③については感染拡大や災害等の有事に対し、強靭(きょうじん)な医療提供体制を構築していくために要望したものであると説明。④については、医療機関等のサイバーセキュリティ対策の強化及び保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI)の活用等についても、国の支援を求めた。
更に、事項要求については、松本会長が「『骨太の方針2023』に明記された内容に沿った改定となるよう、引き続きの協力をお願いしたい」と述べた。
これらの要望について、加藤厚労大臣は「これから議論していくことになるが、厚労省としてもしっかり要求を行い、年末に向けて良い予算づくりに努めていきたい」と回答。また、限られた予算の中で、医療DXを進めることが今後大きな鍵になると考えているとして、その推進に向けた協力を求めた。
なお、三つの要望の全文は日本医師会ホームページの日医on-lineの中のプレスリリースをご参照願いたい。
2024(令和6)年度予算要求要望
1.概算要求
1.1.新型コロナウイルス感染症等への予算確保
(1)新興感染症まん延に備えた体制づくりへの支援及び新型コロナウイルス感染症への体制の拡充
(2)新興感染症患者及び新型コロナウイルス感染症患者の受入体制の拡充
(3)協定締結医療機関の個人防護用具(PPE)の備蓄等諸経費の支援
(4)検査キットや治療薬等、必要な物資の備蓄・供給体制の構築
(5)新興感染症以外の通常医療を分担する医療機関(救急医療、周産期・小児科、人工透析、がん等)への支援
(6)新興感染症に対応する人材の確保、医療従事者等に対する支援、補償
(7)ワクチン・抗ウイルス薬の開発・備蓄の拡充
(8)不測の事態に備えた余裕のあるワクチンの供給体制の整備
(9)安全な予防接種実施の推進
(10)感染症、予防接種に関する報告等の事務負担軽減
(11)国民へ正確な情報を伝えるためのメディア対策
1.2.働き方改革への予算確保
(1)医師の働き方の制度の基盤整備
(2)教育、研究、臨床、地域医療支援を担う大学病院の働き方改革の支援
(3)医療従事者のタスクシェア・タスクシフト推進のための支援
(4)国民への"上手な医療のかかり方"の推進、啓発
1.3.地域医療への予算確保
(1)地域医療介護総合確保基金の拡充及び柔軟運用
(2)地域医療介護総合確保基金以外の補助事業の拡充
(3)救急災害医療対策
1.4.医療DXの適切な推進のための予算確保
(1)医療機関等のサイバーセキュリティ対策費用支援
(2)HPKIカードの発行支援と一層の利用環境の整備
(3)オンライン資格確認をはじめとする医療DXの導入・維持支援
(4)各種情報システムの一元化の推進
(5)医療情報連携の推進及び適切な活用のための環境整備
(6)AI・IoT研究・開発と社会実装への支援
2.事項要求
次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定