中医協総会が8月2日、都内とWEB会議で開催され、厚生労働省事務局から提案のあった、次期診療報酬改定の実施時期を4月1日から6月1日に後ろ倒しするとの提案を了承した。
診療報酬改定の施行時期については、これまで中医協で改定に関する答申がまとめられて以降、3月に告示が出され、4月1日に施行されることから、初回請求されるまでの期間も短く、医療機関やベンダーの業務負担が大きいとして、その見直しが求められていた。
政府はその改善策として、医療DXの一環として診療報酬DXの推進を進めており、今回の施行日の見直しもその一つの施策として実施されるものである。
当日は、厚労省事務局から現在の診療報酬改定の対応状況について説明があり、改定施行日である4月1日からの患者負担金の計算に間に合うように、短期間で集中的にソフトウエア等を改修する必要があるため、電子カルテ・レセコンベンダーに大きな業務負荷が生じているばかりではなく、改修後にも、4月診療分レセプトの初回請求(5月10日)までに、国の解釈通知等に合わせて、追加的な対応が必要となっていることを指摘。
その上で、①診療報酬改定DXの推進に向け、医療機関・薬局等やベンダーの集中的な業務負荷を平準化するため、令和6年度診療報酬改定より施行時期を6月1日施行とする②薬価改定の施行に関しては例年どおり4月1日とする③経過措置については従来どおり9月末までとする―ことが提案され、議論の結果、了承された。
中医協総会(8月2日開催)で了承された事項
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医療機関のメリットの明確化を求める―長島常任理事
議論の中で長島公之常任理事は、まず、診療報酬改定DXの目的の一つである「医療機関の負担の最小化」が重要と指摘。その上で、「単純に実施時期を後ろ倒しすれば良いというわけではなく、同時に医療機関の負担軽減や効率化をするための取り組みも必要」とし、具体的には、後ろ倒しの恩恵を受ける電子カルテやレセコンのベンダーが保守費用やリース料を大幅に引き下げるなどにより、これまで医療機関が負担してきたコストの低減が、目に見える形で実現されることが望まれるとした。
更に、その実現を担保する具体的な仕組みの必要性にも言及。改定内容が決定後、五月雨式に発出される疑義解釈についても何らかの対応が必要との認識を示した他、「施行が2カ月後ろ倒しになることの、医療機関にとってのメリットを明確にする必要がある」と述べるとともに、この取り組みが患者の利益にもつながることに期待感を示した。
その上で、長島常任理事は、後ろ倒しの効果を最大化させるための取り組み及びその効果検証の実施について、厚労省事務局に質問。事務局からは、診療報酬改定DXの推進に当たり、ベンダー団体との意見交換を実施しており、今後も随時行う予定であるとした他、今秋頃をめどに医科、歯科、調剤などの関係団体へのヒアリングを実施する予定であることを明らかとした。
更に、レセコンの改修やリース費用の低減部分が医療機関に着実に還元されることが重要として、共通算定モジュールや標準型診療報酬の電子点数表の開発を進め、後ろ倒しによってどの程度のコスト軽減が実現されるか、中・長期的にその効果を検証していく意向を示した。
後ろ倒しすることに伴う課題解決を―松本会長
今回の診療報酬改定の施行時期の見直しについて、8月2日の定例記者会見において、その受け止めを聞かれた松本吉郎会長は、やむを得ないものであるとの考えを示しつつも、後ろ倒しにすることに伴う課題の解決を強く求めた。