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令和5年(2023年)6月5日(月) / 日医ニュース

健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会を開催

健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会を開催

健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会を開催

 健康スポーツ医と運動指導者の多職種連携推進講演会が4月16日、日本医師会館大講堂で開催された。
 本講演会は、日本医師会の運動・健康スポーツ医学委員会が昨年6月に『健康スポーツ医学実践ガイド:多職種連携のすゝめ』を刊行したことを記念して開かれたものである。
 冒頭のあいさつで松本吉郎会長(長島公之常任理事代読)は、人生100年時代において、運動・スポーツにより、健康増進と健康寿命延伸を図ることは大変重要なことであるとした上で、そのためには健康スポーツ医と健康運動指導士を始めとする運動指導者の日頃からの連携が不可欠であることを強調し、『健康スポーツ医学実践ガイド』の活用に期待を寄せた。
 また、「運動・スポーツ関連資源マップ」について、運動関連施設や医療機関の場所、機能などを地図上に示して"見える化"するものであるとし、作成によって地域の多職種連携を推進していくことを要請。今後、日本医師会としても、健康スポーツ医と関係者との協力体制の構築に向けて、健康・体力づくり事業財団、日本健康運動指導士会などの関係団体と一層連携を強化していく姿勢を示した。
 続いてあいさつした青地克頼日本健康運動指導士会長は、「多職種連携の一員として、認定健康スポーツ医を始めとした医師の先生方と連携させて頂くことは、運動指導者が一次予防の側面から機能できる大変意義のあること」とし、運動指導の効果を発揮するために欠かせない運動の習慣化において、運動指導者の日頃の経験から培われたエビデンスが役に立つと述べた。

健康スポーツに関わる日本医師会の取り組み

 講演では、まず長島常任理事が、「健康スポーツに関わる日本医師会の取組~健康スポーツ医を中心に~」と題して、(1)運動・健康スポーツ施策に関する国への提言、(2)withコロナ時代の運動、(3)多職種連携の推進―について説明。
 (1)では、令和2年6月には横倉義武元会長が鈴木大地スポーツ庁長官(当時)に「運動・健康スポーツ施策に関する提言書」を提出し、リスクに応じた運動の推奨や、運動関連資源マップの作成、かかりつけ医と運動施設・運動指導者との連携体制(運動連携パス)の整備などを求めたとした。
 (2)では、同年11月に中川俊男前会長が室伏広治同庁長官と会談し、ウィズコロナ時代に高齢者の健康二次被害をスポーツや社会参加で予防していくことを確認するとともに、同庁が日本医師会の協力の下でパンフレット『Withコロナ時代に運動不足による健康二次被害を予防するために』を作成したことを報告。人との接触を避けて外出を自粛した高齢者だけでなく、テレワークで座位時間が増えた人や子どもに対しても、日常生活の中で適度な運動を勧める内容であることを紹介した。
 (3)では、運動の実施状況や自治体の取り組みの格差が大きいことから、地域・属性別の運動実施率の見える化や、運動関連事故の登録・分析などによるデータ分析が必要であるとした上で、連携体制のステップとして、「運動関連資源マップ」の作成や連携パス・様式の開発などを行うよう求め、スポーツ関連障害や事故を入口とした連携のあり方を例示した。
 長島常任理事は、独居世帯が増えていることなどから、運動スポーツに関しても地域包括ケアシステムを生かして「地域の力」で支えることが重要だとし、かかりつけ医を窓口として活用するよう強調。かかりつけ医には、地域の運動施設、運動指導者、自治体の取り組みを把握してネットワークの要として活躍することが期待されるとし、地域医師会の支援の重要性にも言及した。

健康スポーツ医学実践ガイドの目的

 引き続き、日本医師会運動・健康スポーツ医学委員会の津下一代委員長が、「健康スポーツ医学実践ガイドの目的:多職種連携の意義」と題して講演した。
 同委員長は、自身の経験を踏まえ、日常診療の中で運動の必要性を伝えても、実践状況の把握や、運動における実際の指導ができないもどかしさがあることを指摘。患者が運動の場に行った際に地域で支える環境づくりが肝要であるとして、運動指導者につなぐ重要性を強調した。
 一方、患者側には、病気が分かると運動施設では受け入れてもらえないのではないかとの恐れから、自身の健康状態を隠して運動をしているケースも見受けられるとして、運動のメリットとともにそのリスクを把握し、運動指導者の指導の下で一人一人に合った運動を段階的に進めていくことで、運動器と生活習慣の両方を良くすることが可能であるとした。
 その上で、運動・スポーツ関連資源マップの作成こそが連携を深めるためのシステムづくりであると指摘。そのマップを用いて、リスクを層別化(医療の必要な高リスク層、中リスク層、低リスク層、健康層)した利用者を、対応可能な指導者や受け入れ可能な施設・組織につなげていく仕組みを解説するとともに、「加齢に伴う内科系疾患と整形外科系疾患を併せもつ高リスク層であったとしても、マイナス面を回避した運動を提示することはできる」とした。
 また、運動を始めたきっかけについては、テレビや会社からの勧めよりも、医師からの勧めが明らかに多いとして、「運動に関心のない人にも健診や日常診療で接する機会のある医師が、背中を押す役割を担っていくべきである」と述べた。
 なお、当日予定されていた下光輝一健康・体力づくり事業財団理事長による講演は、ご自身の体調不良のため急きょ中止された。

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