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令和4年(2022年)10月20日(木) / 日医ニュース / 解説コーナー

医療機関勤務環境評価センターへの申請等医師の働き方改革への早期の準備を

医療機関勤務環境評価センターへの申請等医師の働き方改革への早期の準備を

医療機関勤務環境評価センターへの申請等医師の働き方改革への早期の準備を

 日本医師会が厚生労働省から4月1日に「医療機関勤務環境評価センター」(以下、評価センター)の指定を受けてから半年が過ぎ、10月下旬からいよいよ医療機関からの評価申請の受け付けを開始することになった。
  そこで、今号では医師の働き方改革担当の城守国斗常任理事に、評価センターの現状や申請に当たっての流れ等について説明してもらった。

Qまず、働き方改革が医師にも適用となった経緯や「評価センター」の役割についてご説明願います。

A 長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現などを目指し、2019年度から働き方改革関連法が順次施行され、医療機関で働く人を含むほぼ全ての業種を対象に、原則月45時間・年360時間(特別条項付きの36協定締結で複数月平均80時間・年720時間)を限度とした時間外労働の上限規制が導入されました。
 しかし、医師には応招義務があるなど、働き方の特殊性もあることから、診療に従事する医師については5年間の猶予期間が設けられ、2024年度から上限規制が適用されることになり、医師の時間外労働は土日祝日の労働時間を含めて960時間に制限されることになりました。
 その一方で、地域医療提供体制の維持や医師の養成のため、労働時間の上限を1860時間とする地域医療確保暫定特例水準(B水準、連携B水準)と集中的技能向上水準(C―1、C―2水準)が特例として設けられることになりました。
 医療機関がこれらの特例の適用となるためには、時間外労働時間が年960時間を超える医師が一人でもいる場合は都道府県から指定を受ける必要がありますが、その前提として医師の労働時間短縮の取り組みの状況について評価を受けなければなりません。
 その評価を行う他、病院または診療所に対して必要な助言及び指導を行う組織が、日本医師会が指定を受けた「評価センター」となります。

Q「評価センター」の体制や準備の進捗について教えて下さい。

A 日本医師会では、2020年度と2021年度に、厚生労働省の評価センターの準備に関する事業を受託して以来、組織づくりに当たって、人員がどれくらい必要なのか、医療機関の皆さんに負担を掛けずに申請してもらうにはどうすれば良いかなどを考えながら、手探りで準備を進めてきました。
 まず、実際に業務を行っていく上では事務局組織の拡充が不可欠であることから、本年7月1日には日本医師会の健康医療第一課内に「医師の働き方改革推進室」を設置しました。現在その人員は派遣職員等を含め7名となっていますが、今後もその充実を図って参る所存です。
 また、医療機関の評価は、「医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)」(以下、評価項目)に示されている88項目がベースとなりますが、現在は、評価項目の解釈の仕方や、準備する書類等を示した解説集の整備を進めています。
 評価項目(88項目)については、項目数、その内容、必須項目とするか任意項目とするかなど、論点が多岐にわたったこともあり、検討には相当な時間を要し、最終的に厚労省から示されたのは2022年4月でした。
 4月以降、サーベイヤー向けの研修の実施、システム構築等の各種準備を急ピッチで進めているところですが、準備が整い次第、ご案内をして参りますので、よろしくお願いします。
 今後は、11月中には評価センターのホームページに解説集を掲載し、関係各位にその周知を図っていく予定です。引き続き、さまざまな申請ケースへの対応も蓄積して、解説集のブラッシュアップをしていきたいと思います。
 更に、実際に評価に当たるサーベイヤーも必要になりますので、その養成も行ってきました。
 サーベイヤーは医師の他に、社会保険労務士がいるのですが、3段階(第1段階:基本的な内容、第2段階:評価の知識部分、第3段階:実地部分)の研修を受けて頂くこととなっています。現在、第2段階の研修まで修了して頂いており、まもなく第3段階の研修がスタートする予定です。
 サーベイヤーには、一定数の医療機関をご担当頂く予定です。中立性を保つために、原則として、ご自身が勤める医療機関の所在地以外の近隣の都道府県を担当してもらいますが、今後の業務量も見ながら、必要があれば追加養成を行うことも考えています。
 加えて、今後の申請に当たっては、各都道府県が設置している医療勤務環境改善支援センター(以下、勤改センター)にも申請に関する相談や支援を行って頂くことが必要になることから、厚労省と合同で、都道府県担当課長・勤改センター向けに、評価センターの業務内容等の説明会を9月21日に開催しました。今後は、準備が整い次第、医療機関に対しても説明の場を設ける予定です。
 その他、9月16日には評価センターのホームページを開設しました。ホームページでは「評価受審に関する資料集」や「医師の働き方改革に関する法令・政省令等」など医療機関が受審する際に必要な情報提供の他、質問を受け付ける「お問い合わせフォーム」も設けていますので、ぜひ、ご活用頂ければと思います。

Q評価センターへの申請の流れはどのようになっていますか。

A 初回は原則として書面による評価となります。
 医療機関には、基本情報を記載する「基本情報シート」と評価項目ごとの自己評価を記載する「自己評価シート」を作成して頂きます。「自己評価シート」には、評価項目ごとの自己評価と併せて現在の取組状況、根拠となる資料ファイルを添付して頂きますが、資料ファイルには該当箇所が分かるようにコメントの記載をお願いいたします。
 また、令和6年度(2024年4月)以降の医師労働時間短縮計画の案を作成して頂く必要があります。その際には、評価項目のうち、現時点で取り組みが不十分であっても具体的な実施時期を定め、取り組みを進めていく場合には、その内容を医師労働時間短縮計画に記載して頂きますようお願いいたします。
 評価の際に、労働関係法令及び医療法に規定された事項に係る項目(必須項目)に未達成の項目がある場合等には、評価センターは評価をいったん保留し、サーベイヤーからの助言を付けて一度中間結果報告として医療機関にお返しし、一定期間(90日)のうちに当該項目を改善するよう医療機関に依頼します(中間報告)。
 中間報告の扱いとなった医療機関に対しては、評価センターが改善のために必要な支援を行うことになりますが、医療機関が改善に向けた取り組みを実施し、一定期間のうちに該当項目が改善された場合には、その結果を踏まえた評価を再度実施します。
 一方、該当項目が改善されなかった場合は、医療機関が当初提出した資料に基づき評価を実施することになりますので、申請に当たっては、必須項目が達成されているか、根拠となる資料が添付されているか、取組状況の説明が記載されているか等、ご確認頂きますようお願いします。

Q評価項目の取り組みなどを踏まえた、医療機関の全体評価はどのような考え方で行われますか。

A 評価申請に当たっては、まず、評価項目における必須項目を、評価申請の時点でクリアしていることが必要条件です。次に、任意項目については、評価申請時点で既に取り組んでいることが望ましいのですが、取り組んでいない任意項目については、各医療機関の実情に応じて、医師労働時間短縮計画に取組計画を定めることが求められます。
 全体評価は、必須項目の取り組み、任意項目の取り組み、未取組の任意項目における医師労働時間短縮計画での計画策定状況、アウトカム(年間の時間外・休日労働時間の改善状況)を総合的に勘案した上での評価となります。

Q評価をして頂くには費用(受審料)はいくらぐらいかかるのでしょうか?

A 受審に係る手数料は医療機関の規模にかかわらず33万円(税込)です。医療機関は評価センターの評価を3年に一度受審する必要がありますが、次年度以降の厚労省からの補助金額や受審件数等によっては、今後その額が変動する可能性もあることをご了承頂ければと思います。

Q最後に会員の皆さんに一言お願いします。

A 医療機関の管理者、医師個人のどちらも、まだ働き方改革を正確に理解されていない人が多くおられるのではないかと思っています。
 医師の働き方改革を進めていくためには、まず、医師の労働時間管理がしっかりできているかが大変重要となります。医師の人数が多いところでは時間管理は大変煩雑(はんざつ)になりますし、時間集計を含めた事務作業も難しくなりますが、ぜひ、全医師の年間の時間外・休日労働時間数を再確認頂き、医師の特別則の適用が必要となるのか十分な検討をお願いいたします。
 また、審査に掛かる時間を今後は考慮して頂く必要があります。
 医療機関の申請を受けた後、評価センターでの評価は、サーベイヤーの審査、審査部会、評価委員会を経て最終的には日本医師会の理事会で決定することになっています。その期間は順調に行ったとしても必要書類を受領してから3~4カ月は掛かると考えています。
 その後、都道府県と医療機関にその結果をお渡しし、医療機関は都道府県に指定申請をすることになるのですが、都道府県においても指定に当たっての審査を医療審議会などで議論されることになりますから、ここでも一定の時間を要します。
 それらを考えますと、トータルで半年以上掛かる可能性もありますので、2024年4月からのスタートを考えれば、遅くとも2023年の秋には申請を終えて頂かなくてはなりません。また、その時期に申請が集中してしまえば、評価センターの業務が立て込むことも想定されます。
 各医療機関の方々にはできる限り、早めの申請にご協力をお願いいたします。

関連リンク
医療機関勤務環境評価センターホームページ
https://sites.google.com/hyouka-center.med.or.jp/hyouka-center
医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)第1版(令和4年4月 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000919925.pdf
医師労働時間短縮計画作成ガイドライン第1版(令和4年4月 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000919910.pdf

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