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令和4年(2022年)6月20日(月) / 日医ニュース

2020・2021年度医療IT委員会答申 「国民と医療の現場に役立つIT化とは何か」

令和2・3年度 会内委員会答申・報告書(全文は日本医師会ホームページ「メンバーズルーム」に掲載)

2020・2021年度医療IT委員会答申 「国民と医療の現場に役立つIT化とは何か」

2020・2021年度医療IT委員会答申 「国民と医療の現場に役立つIT化とは何か」

 2020・2021年度医療IT委員会答申が5月23日、塚田篤郎委員長(茨城県医師会副会長)から中川俊男会長に提出された。
 同答申は、会長諮問「国民と医療の現場に役立つIT化とは何か」を受け、2年間にわたり、計8回開催された委員会での検討結果として取りまとめられたものであり、内容は「はじめに」「本答申における用語について」に続き、(1)オンライン資格確認、(2)地域医療情報連携ネットワーク、(3)オンライン診療に対する考え方、(4)医師資格証の今後の在り方、(5)サイバーセキュリティへの対応―からなり、最後に「おわりに」となっている。
 (1)オンライン資格確認では、2022年4月現在の普及状況について、医療界全体(病院・医科診療所・歯科診療所・薬局)の導入数は4万1367施設、割合は18%であること、2021年3月からのプレ運用期間を経て、同年10月から本格運用が開始されているものの、費用面での負担が大きいため、医療機関の申し込みの伸び率は減少していることなどについて言及。委員会では、費用負担の軽減措置に加え、導入のメリットを強調する必要がある等の意見が挙げられたことを紹介している。
 (2)地域医療情報連携ネットワークでは、全国に約270存在する「地域医療情報連携ネットワーク」(以下、地連NW)を取り巻く状況を検討するとともに、医療IT委員会委員が所属する地域医療連携の実情等を紹介。地連NWと行政との連携、地域包括ケアシステムに寄与するような地連NWの構築を目指すべきとしている。
 (3)オンライン診療に対する考え方では、冒頭、日本医師会の基本的な見解は、「対面診療が原則であり、解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に、適切にオンライン診療で補完するもの」であることを説明。利便性を優先した推進や、営利企業の参入による地域医療の崩壊に懸念を示している。
 (4)医師資格証の今後の在り方では、全ての日本医師会員への普及、更には全ての医師への普及を目標に掲げ、「日本医師会員の更新費用の無料化」「非会員の年間利用料の無料化」「新規医師免許取得者への無料発行」を機関決定したことを冒頭で報告。今後は、資格証の意味の周知や活用場面の拡大が重要としている。
 (5)サイバーセキュリティへの対応では、オンライン資格確認・診療、今後計画されている電子処方せんへの対応等、医療機関のオンライン化が進むに従い、近年、増加傾向にある医療機関へのサイバー攻撃がますます増加することに懸念を表明。攻撃を受けても医療機関を止めないためのサイバーセキュリティの構築等を提言している。
 「おわりに」では、IT化を「医療の質や安全性の向上、あるいは医療現場の負担を減らす手段であって目的ではない」と明記。その上で、ITはかかりつけ医として患者に寄り添い、患者の人生に伴走するための「あくまで新しい時代のツール」であると強調している。
 また、オンライン資格確認の普及が進まない原因を診療所の努力不足とする指摘に対し、高齢者等が使いこなせないことと併せ、ITが「技術として未熟なもの」であるからと反論。今後、患者や医師がスキルを持たずとも、ITであることを意識せずに使えるようになることが、国民と医療の現場に役立つITであるとしている。
 また、今後2年間は、医療のIT化が進む過渡期と位置付け、日本医師会としてこの流れをどうコントロールしていくのか、評価していくのかが課題となるとするとともに、日本医師会からの、医療関係者への分かりやすい情報発信を期待すると結んでいる。

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