今号では、医療機関の設備投資を支援する税制措置に関して、会員の先生方から寄せられた質問に対する宮川政昭常任理事の回答を掲載する。会員の先生方におかれましては、本制度の活用を幅広くご検討頂きたい。
宮川政昭常任理事
宮川政昭常任理事
Q1設備投資の促進税制があると聞きましたが、どのような制度でしょうか。
A 500万円以上の特定の医療用機器への「高額な医療用機器の特別償却制度」(特別償却12%)、30万円以上の器具・備品・ソフトウェアへの「医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度」(特別償却15%)及び「地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度」(特別償却8%)の三つの制度があります(図1)。
いずれも2023年3月31日までに取得したものを対象とする措置ですので、設備投資をお考えの先生方には、ぜひ、これらの制度の利用をご検討頂きたいと思います。詳細な内容や手続き等は、顧問税理士等にご相談下さい。
Q2特別償却にはどういうメリットがあるのですか。
A 特別償却とは、設備取得の初年度に通常の減価償却費(普通償却費)に加え特別償却費を追加で償却できる制度です。設備投資の初年度に係る税負担を和らげ、初期のキャッシュフローを改善する効果があります。
特別償却は、将来の減価償却費を先取りするもので、償却期間トータルでは、償却額の累計は通常(特別償却を行わない)のケースと同じになります。
なお、特別償却のメリットを受けることができるのは、一定の利益があって法人税(個人は所得税)を納めている医療機関となります。
Q3「高額な医療用機器の特別償却制度」の概要について教えて下さい。
A 「高額な医療用機器の特別償却制度」は、一定の医療機器(500万円以上)を取得等した場合に取得価額の12%の特別償却ができるものです。
対象機器は、高度な医療の提供に資するもの(厚生労働省の告示に定める品目)または医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内の医療機器です。
全身用CT・MRIについては、効率的な配置促進のため一定の要件を満たすことにつき、都道府県の確認を得ることが必要です。
Q4「医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度」の概要と対象機器等を教えて下さい。
A 医師の働き方改革を進め、医師の健康を確保し地域における安全で質の高い医療を提供するため、医師・医療従事者の勤務時間短縮に資する一定の機器等について、取得価額の15%の特別償却ができる制度です。2019年4月に新設されました。
対象となる機器等は、取得価額が30万円以上の器具・備品(医療用機器も含む)並びにソフトウェアで、「勤務時間短縮用設備等」に該当するものです。
対象となる「勤務時間短縮用設備等」は広範囲にわたります(図2)。また、図2の類型1~5に当てはまらないものであっても、従来の製品より3%以上の効率化が認められる等、要件を満たしていれば認められます。
なお、適用には一定の手続きが求められます。
医療機関が本特別償却制度を利用するには、医師の労働時間短縮に向けた「医師勤務時間短縮計画」を作成し、都道府県の医療勤務環境改善支援センターに提出し、確認を受ける必要があります。また、設備供用6カ月後には計画書のフォローアップ提出を行う必要もありますので、顧問税理士等にご相談の上、手続きを行って下さい。
なお、対象とする医師の勤務時間を管理していることが前提となります。
また、個人開業の診療所でも、本制度の利用は可能です。
Q5「地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度」の概要について教えて下さい。
A 地域医療構想の実現のため、地域医療構想調整会議において提出・確認された医療機関ごとの役割及び医療機能ごとの病床数に関する具体的対応方針に基づく病床再編等により取得または建設をした病院用または診療所用の建物及びその附属設備について、取得価額の8%の特別償却ができます。この制度も2019年4月に新設されました。
特別償却制度の延長・拡充に向けて |
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医療機関の設備投資を支援するこれらの特別償却制度は、全国の医療機関にご活用頂くことによって、患者さんが新たな医療の恩恵を受けやすくなることが期待できるものです。 上記制度はいずれも2023年3月31日までの設備投資を対象とする時限措置であり、日本医師会として本制度の延長・拡充を強く求めていく必要があります。 医療用機器の特別償却制度は長い歴史をもつ制度であり、それだけに、延長等を実現するためには、制度の必要性を示すエビデンスが不可欠です。 この度、本制度の延長を目指す厚生労働省より協力依頼があり、「医療用機器等の特別償却制度に関するアンケート」を行います。 調査票が届いた会員の先生方におかれましては、アンケート調査にご協力を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。 |