神村裕子常任理事は3月15日に、有床診療所委員会の齋藤義郎委員長(徳島県医師会長)から中川俊男会長に、オンラインで答申がなされた(写真)ことを報告した。
本委員会は、会長諮問「地域医療提供体制を支える有床診療所のあり方について」を受け、7回にわたり議論を重ねた上で、答申書を取りまとめた。
答申は、「はじめに」、(1)有床診療所と新型コロナウイルス感染症の流行、(2)全世代型地域包括ケアシステムの中核としての有床診療所、(3)有床診療所の経営の安定から承継まで、(4)専門医療―からなっている。
「はじめに」では、コロナ禍において、「全国の有床診療所は発熱外来やワクチン接種、宿泊療養患者、自宅待機・自宅療養者の往診等の外来機能だけでなく、コロナ感染症対応基幹病院の後方支援病床として入院機能を発揮し、地域に身近なかかりつけ医として先導的な役割を果たしてきた」と指摘。平時・有事を問わず、かかりつけ医としての身近な病床を活用し、患者中心の医療の実現を目指すことが重要と述べている。
(1)では、まず、有床診療所は24時間の診療体制を敷き、コロナ禍にあっては、発熱外来やPCR検査等の診療対応を行うとともに、在宅療養者に対しても往診等で24時間対応していることを報告した上で、特にワクチン接種で大きな力を発揮したことに言及。2021年9月に発表された日医総研のワーキングペーパーによると、個別接種は全体の7割の有床診療所で実施され、うち内科系施設では9割が院内と在宅で実施されていることを紹介した上で、集団接種や職域接種については、有床診療所の特性を生かして対応し、日本全体のコロナ禍対応の中で果たしている有床診療所の役割は十分に評価されるべきであると強調している。
更に、コロナ禍におけるオンライン診療については、主治医同席の下、他の医療機関の医師がオンライン診療を行う"D to P with D"に関して、有床診療所に入院中の患者を他科受診させたい場合での活用が考えられるとの見解を示している。
(2)では、全世代型地域包括ケアシステムの中核としての有床診療所について触れ、有床診療所が医療と介護をカバーし、また、多職種のパイプ役として、地域包括ケアシステムの中核となり得ると強調。
更に、ICTの活用により、有床診療所の空床情報をリアルタイムに発信することによる病診連携、診診連携の推進等についても明示されている。
(3)では、有床診療所の経営の安定から事業承継について触れ、経営問題、人材確保面と経費削減、税制、新たな施設体系の議論等に関して記されている他、(4)では、専門医療として眼科、産科における働き方改革及び整形外科の現状分析を基に、その改善策について触れている。
会見で最終答申の内容を説明した神村常任理事は、有床診療所は外来機能以外にさまざまな可能性のある施設形態であるとした上で、施設規模や従業員数も比較的大きい有床診療所によるワクチン接種における活躍を例に挙げ、全国的に大きな役割を果たしていることを改めて強調。「今回の答申の内容・要望に沿い、日本医師会としても、地域に寄り添って活動している有床診療所に対し、引き続き支援を行っていきたい」との意向を示した。
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