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令和3年(2021年)8月20日(金) / 日医ニュース

医療関係団体と共に「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を公表

医療関係団体と共に「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を公表

医療関係団体と共に「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を公表

 中川俊男会長らは7月29日、緊急記者会見を行い、わが国で新型コロナウイルス感染症の感染が全国的に急拡大していることを受けて、日本医師会を始めとした9つの医療関係団体で取りまとめた「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を公表。政府に対して、緊急事態宣言の対象地域を全国とすることなどの検討を求める緊急要請を行った。

 今回公表した緊急声明は、日本医師会を含め日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の九つの医療関係団体で取りまとめたもの(全文は日本医師会ホームページ内「日医On-line」の「プレスリリース」に掲載)である。
 その内容は、(1)なぜ今、緊急声明が必要なのか、(2)医療提供体制確保の取り組み、(3)ワクチン接種の推進―の他、「緊急要請」「みなさんとこの夏を乗り切るために」で構成されている。
 (1)では、①現在、救急搬送困難事案が全国の代表的な都市部で増加し、特に新型コロナウイルスの感染が疑われる例が大幅に増え、感染再拡大による病床逼迫(ひっぱく)が現実に発生しつつある②新規感染者数の増加に伴い、入院治療の必要な感染者数、入院調整のための待機や自宅療養者数、施設療養者数も急激に増え、重症者用病床使用率がステージⅣの指標に達しなくとも、中等症患者の増加も相まって医療の逼迫が迫っている―ことなどを説明。
 「今は何としても、今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須だ」として、政府に対し、緊急声明の内容を今後の措置に反映することを要請している。
 (2)では、これまで行ってきた「重症者、中等症患者の入院病床の確保」や「軽症者の対応」などの取り組みを説明した上で、「急激な感染拡大が続けば、いずれ病床は逼迫してしまう。その事態は絶対に避けなければならない」と強調。「新型コロナウイルス感染症がなければ防ぎ得た死は何としても回避する」との覚悟を示すとともに、政府に対して、感染拡大を食い止めるため、あらゆる手立てを尽くすことを求めている。
 (3)では、かかりつけの患者か否かを問わず、希望される全ての人が迅速かつ確実に接種を受けられるよう、今後も万全な体制を確保していく決意を表明。その一方で、ワクチンが確実に供給されなければ接種の責務を果たすことはできないとして、引き続き、十分かつ安定的なワクチンの供給を政府に要請している。
 更に、日本の現状については、①特に40歳代、50歳代の高濃度酸素が必要な中等症患者が増加しており、重症化による医療の逼迫が懸念される②デルタ株の影響により、これまで考えられていた集団免疫の獲得は6、7割接種では難しく、できる限り多くの方が確実に2回接種する必要があることも明らかになってきている―ことなどを紹介。「政府には、ワクチン接種のメリットが副反応よりも大きいことを今一度、国民、特に若い世代に訴えてもらいたい」としている。
 「緊急要請」では、別掲の三つの事項を挙げ、その実現を強く要求。
 「みなさんとこの夏を乗り切るために」では、熱中症を防ぐ手段として、「水分・栄養の補給、十分な睡眠により体調の管理に気をつけること」「体調が思わしくなければ、我慢や無理をせず休むこと」「何らかの症状があった時はできるだけ早期に医療機関を受診すること」などを推奨。職場や学校においては、抗原定性検査キットを準備しておくことも重要になるとするとともに、検査の際には、厚生労働省のガイドラインにのっとって実施することが安全上大切になるとしている。
 その上で、今できることには「ワクチン接種を受ける」「感染しやすい行動は控える」「体調の維持に努める」など限りがあるが、「私達も全力でワクチン接種、そして地域の医療に専念する」と決意を示すとともに、「みんなで一緒になってこの感染症を収束させていきましょう」と呼び掛けている。

「緊急声明」取りまとめに当たっては尾身会長らと意見交換

 当日の記者会見では、まず、中川会長が今回の緊急声明を取りまとめるに当たっては、尾身茂新型コロナウイルス感染症対策分科会長並びに脇田隆字新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード座長と多角的な意見交換を行ったことを明らかにするとともに、「その内容は、お二人と危機感と方向性を共有したものになっている」と強調。その上で、緊急声明の全文を読み上げた。
 引き続き、会見に出席した医療関係団体からそれぞれ、意見が述べられた。
 堀憲郎日歯会長は、国民の新型コロナウイルスに対する危機意識が低下している現状を危惧。今回の緊急声明が危機意識の共有並びにその強化につながることに期待感を示した。
 山本信夫日薬会長の代わりに出席した安部好弘日薬副会長は、一日も早く希望する全ての国民にワクチン接種をすることが大事になると指摘するとともに、「そのために、日薬としても、最大限の協力を引き続き行っていきたい」と述べた。
 福井トシ子日看協会長は、看護補助者の離職が全国規模で起きていることなどを挙げ、医療現場の状況は限界に来ていると主張。今後は医療従事者と国民が同じ方向を向き、必要な行動を取ることが大事になるとした。
 相澤孝夫日病会長は「今は新型コロナウイルス感染症の感染拡大のスピードを遅くすることが必要だ」とするとともに、「政府には遅くするためにはどうすれば良いのか、真剣に考えて欲しい」と述べた。
 猪口雄二全日病会長/日本医師会副会長は、今の感染者の増え方は感染爆発に差し掛かっていると指摘。「感染者の増加を何としても減らさなければならない」として、国に対して、早急な対策の実施を求めた。
 山崎學日精協会長は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のためにワクチン接種が果たす役割の大きさを強調。政府に対して、十分なワクチンの提供を求めた。また、今後については、「ワクチンパスポートの保持者には時間制限をつけて、飲食店で普通に食事をすることを認める」「トイレの消毒の徹底」などが必要になるのではないかとした。
 尾﨑治夫都医会長は、「ワクチンを接種したからといって、安心であると言うことは現状ではまだ早く、何としても感染を抑え込むことが大事になる」と強調。今の感染を抑え込むためには、原点に立ち返って、人流を抑え込まなければならないとするとともに、政府に対しては実効性のある強いメッセージを出すよう求めた。

緊急要請
①首都圏を始め感染者が急増している地域に対し、早急に緊急事態宣言を発令すること。併せて、緊急事態宣言の対象区域を全国とすることについても検討に入ること。
②感染収束の目途がつくまで、徹底的かつ集中的にテレワークや直行直帰を推奨すること。
③40歳から64歳までと、リスクの高い疾患を有する人のワクチン接種を推進し、できるだけ早く完了させること。

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