「いつまでも若いと思っていても体が......」
よく耳にしても自分はまだまだ大丈夫と思っていたが、年齢も50歳に近付くと頭で認識したことと体の反応にズレを自覚するようになった。筋トレなどの運動もすればそれなりの成果(?)はあったが、徐々に痛みや不調が目立ちだす。
50歳を過ぎ、毎年その症状は顕著になっていく。職員健診では完全なメタボで固定状態。このままではいけない。気持ちだけは焦る。
まずは体を動かさなければと思い、休日に運動公園にランニングに行った。急に激しい運動をしたことで今までに経験したことのない不調違和感を覚え、むしろ危険を感じた。体力に合わせ、効率も良く、場所も取らないものは無いかと思った時、なぜかボクサーのスリムなボディと縄跳び姿が頭に浮かんだ。
家族で公園に行った際に縄跳びをしてみた。すると意外に負荷もあり安全かつ良い運動になりそうな気がした。小学生の娘が、体育でやっているいろいろな跳び方を教えてくれた。自分も小学生の頃は器用にできたのを思い出し、試してみるとこれがうまくできない。大して時間も経っていないのに体力だけは消耗する。縄跳びへのモチベーションが早くも急降下しそうになる。
単なる跳びはつまらないが、肥満の私にもできる面白い跳び方は無いかと娘に聞くと"ひよこ返し"ならできるかもとのアドバイス。これならと諦めずに練習すると2回、3回と徐々に連続でできるようになった。モチベーションは簡単に急上昇。まんざらでもないと思った矢先、膝を曲げた際に後方にバランスを崩して体勢を立て直す間もなく、後ろ向きに大きく転倒し背中・後頭部を地面にぶつけた。地面が公園の芝で良かったと実感した。それ以降、硬い地面の上では縄跳びはしないことにした。
他に安全で老化の防止になるものは無いかと考えてみた。自分は眼科医であるが、指の動きは手術に直結する因子である。加齢とともに指の動きも変化は出る。指の動きや刺激で脳の活性化はできるかを考えてみた。
中学1年からフォークギターを始め、中学3年でエレキギターとエレキベースを始めた。高校に入ってからはバンドを組み、ドラムを始めるきっかけとなった。どれも頭にいい剌激になりそうではあったが、今のマンション暮らしでは選択肢が限られる。ギターが現実的であった。フォークギターは音を気にしなくてはいけないが、エレキギターなら音の大きさも音質も多様に楽しめる。これだと思い、妻に相談すると「エレキの影響で子どもがヘビメタになったらどうするの?」の一言でフォークギターとなった。妻の中では、エレキ=ヘビメタのイメージがあるようだ。まあ、私の高校時代のバンドはヘビメタを選曲し、マイケルシェンカーグループ、レインボー、ゲーリー・ムーア、ジャーニーなどをコピー演奏していたが、確かにのどかな雰囲気で聴くというものではなかったかも知れない。
早速、楽器店に行きフォークギターを買ってきた。中学時代を思い出しわくわくした気分でアリス、かぐや姫などの懐かしい曲を弾いてみた。コードもかなり忘れていたが、コード表を見ながらやってみる。指の動きは体が覚えていた。これはなかなか良いかもと思い始めた時に、今度は弦を押さえる指の痛みが気になりだす。長らく弾いていないため練習するほど指がとにかく痛い。頑張って弾いた後は数日痛みと違和感が残り、練習機会も遠のいていく。
どれもなかなか思いどおりにはいかないものである。しかし、結果がうまくいかないものほど面白くもある。失敗を反省しながら自分なりにアレンジして自分にマッチした健康維持方法を模索していきたいと思う今日この頃である。
(一部省略)
愛媛県 新居浜市医師会報 765号より