日医定例記者会見 5月19日
今村聡副会長は、「骨太の方針2021」の策定に向け、財政制度等審議会財政制度分科会(以下、財政審)や経済財政諮問会議で、医療費適正化計画の見直しが議論の俎上(そじょう)に上がっていることを踏まえて、改めて医療費適正化計画の見直しを含む医療提供体制のあり方に対する日本医師会の考えを説明した。
同副会長は冒頭、現在、都道府県医師会や各医療機関は、新型コロナウイルス感染症対応の病床確保及び治療・検査、並びにワクチン接種に全力を注いでいるとした上で、「このような状況で、医療費の削減、ひいては医療提供体制の縮小につながる議論を進めることは、新型コロナウイルス感染症への対応を中断、後退させることになりかねない」と指摘。
更に、第4期医療費適正化計画に関しては、「3年後の2024年度からスタートすることを踏まえれば、現在直面している新型コロナウイルス感染症へ対応する中で判明した実態や得られた知見なども考慮に入れて、しっかりと議論を尽くして策定されるべき」と述べた上で、(1)医療費適正化計画等における都道府県の役割の強化、(2)都道府県地域医療計画と地域医療構想の関係―の2点について、日本医師会の見解を説明した。
(1)に関しては、財政審等の議論で示されている、都道府県の役割を強化するとの方向性について、「都道府県の中には、現状を分析して医療政策を策定し、実行する機能が十分ではないところもある」として、都道府県が医療現場に一方的な方針を押し付けたり、単に厚生労働省のガイドラインをなぞる施策を進めるだけとなることへの懸念を表明。一方、都道府県と都道府県医師会が綿密に連携しているところもあることから、国と都道府県の関係を改めて整理し、人材を含めた体制整備を図る必要があるとともに、「そうすることで、各都道府県と住民及び患者、保険者、医療関係者等が現状を正しく共有・認識できるだけでなく、より効果的なアクションにつながることが期待できる」とした。
また、財政審等が法改正をしてでも、都道府県の役割を強化すべきとしているが、その実現には公的医療保険制度の権限を都道府県に委譲することになるとして、「国民皆保険の観点から、全国一律であるべき制度の権限が都道府県に移されるのは適切ではない」と反論。
更に、これらの議論の延長線上で、地域別診療報酬の特例、すなわち高齢者の医療の確保に関する法律(以下、高確法)の第14条による1点単価の設定とセットで提案されることも予想されるとし、「診療報酬の特例は高確法の下に運用されるものであり、厳格な手続きが設定されている。地域別診療報酬の特例の導入は、患者負担の不公平につながり、その受診行動を歪める恐れもあるので、容認できない」とした。
(2)に関しては、「医療提供体制のあるべき姿は、感染症への対応と、それ以外の通常医療の両立であり、その実現のためには、地域医療構想調整会議等を活用し、地域の実情に沿ったきめ細やかな検討が必要である」と主張。
その上で、地域で不足している医療機能を手当てする仕組みであり、それぞれの地域の実情に応じ、自主的に収斂(しゅうれん)されていくべきものである地域医療構想と数値目標を設定する医療費適正化計画は相いれないものであるとした。
最後に今村副会長は、「医療費適正化計画」と「地域別診療報酬」、また、「医療費適正化計画」と「地域医療構想」は、それぞれ別の理念に基づくものであり、これを結び付けることは不適切であることを改めて強調した。
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