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令和3年(2021年)4月5日(月) / 南から北から / 日医ニュース

吾輩は猫アレルギーである

 先日、とある患者さんの訪問診療依頼があったためご自宅を訪問した。玄関を開けて、屋内へ案内された時に何となく違和感、体のざわつきを覚えた。そのままリビングヘ案内された時にピーンと来た。そこには猫の砂利を敷いたトイレが二つ置いてあったのだ。ほどなくして、白い3歳になるというネコがすり寄って来た。
 自分の診療所の看板にはアレルギー科を大々的にうたっているが、こう見えて実は私はいろいろなアレルギーを持っている。花粉症は通年性アレルギーであり、動物でもネコ、イヌの抗体価は高い。特にネコのアレルギー症状は厄介で、5分もすると眼の掻痒(そうよう)、鼻汁、くしゃみが連発。その後まだ同一空間にいるとやがて呼吸器症状を合併し、咳、ヒューヒューと息苦しくなってくるのである。目のかゆみは重篤で、いったん擦ってしまうと致命傷となり、充血、浮腫、掻痒(そうよう)が止まらなくなってしまうのだ。
 そのためにできるだけネコには近寄らないようにしている。外来の診察時にネコを飼っている患者さんが診察室へ入ってきたら体が防御反応を示してくれるため、すぐに飼育歴が分かるので、その時は即座に診察室の窓を開けて換気しつつ、顔を洗い、鼻をかんで抗アレルギー剤を投与し事無きを得るが、往診、訪問診療で気付かないまま家に上がってしまうとこうはいかない。しっぽを振り上げてネコがすり寄って来て、ネコのにおいを擦り付けてくるので非常に厄介である。
 診察、会話を始めてほどなくして上記アレルギー症状が出てきて、たまに患者さんからは「先生も風邪を引くんだな」と逆に言われたりもするのだが、なかなか「実はネコアレルギーなんです」とは本人や家族を目の前にしては、可愛がって飼育していることを思うと申し訳なくて、きっぱりと伝えることができないので、ついつい「いえいえ、感冒ではなく、花粉症があるんです」と言い訳をしてその場を逃れているのである。
 この先もネコのアレルギーに対して「花粉症です」ときっぱり偽りながら、患家へお邪魔させて頂こうと思っている。

徳島県 徳島市医師会報 第43号より

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