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令和3年(2021年)2月20日(土) / 南から北から / 日医ニュース

半沢ロス

 日曜日の夜が寂しくなってから久しい。先日、ドラマ「半沢直樹」が最終回を迎えた。わが家も世間の例にもれず、日曜日の夜は家族で「半沢直樹」を見ていた。夫は片手にビールを、長男は片手にジュースを持ちながら鑑賞するのが常であった。
 小学校1年生が「債権放棄」という言葉を理解しているかどうかは甚だ疑問であったが、彼なりに勧善懲悪のストーリーが爽快であったようだ。別の日に正月のことを話していたら、「福袋の『ふく』って、副頭取の『ふく』?」と尋ねてくるほど半沢ファンになっていた。4歳の次男は大和田取締役の顔芸が心の琴線に触れたらしく、事あるごとに「死んでもいやだね」を繰り返して周囲をいらだたせていた。
 私はストーリーを楽しむ反面、半沢の妻である半沢花の良妻ぶりを見てはわが身を省みることがしばしばであった。さりげなく映される料理の品数の多さに、若干気まずい思いをしていた。
 シーズン1の話になるが、花が半沢の故郷へ行き、義母に話を聞いてくる場面があり、その日の食卓シーンに出てくるみそ汁だけ白みそであった(と、半沢マニアのTBS安住アナウンサーが言っていた)。製作スタッフが細かなところまで配慮していたのがうかがえる話だと思った。
 花を見ていると、いつも笑顔でいるだけで家族が前向きになれるということを改めて思い知らされた。半沢が退職の覚悟を決めた時に発した「生きていれば、何とかなる!」というセリフはシンプルながら力があると感じた。今後の人生で「つらい、もう駄目だ」と思うことがあっても、「生きてさえいれば」と思うと、カウント8で起き上がれる気がする。
 ふと見ると、三男がよちよち歩きながら寝室へ入っていった。日頃自分にちょっかいを出す次男が眠っていることをしっかり確認すると、次の瞬間、おもちゃで殴打し始めた。「倍返し」を果たした彼の顔は、心なしか晴れやかに見えた。

北海道 北海道医報 第1227号より

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