閉じる

令和3年(2021年)2月5日(金) / 日医ニュース

必要な時に適切な医療を受けられる体制に戻すためあらゆる取り組みの強化・徹底を要請

必要な時に適切な医療を受けられる体制に戻すためあらゆる取り組みの強化・徹底を要請

必要な時に適切な医療を受けられる体制に戻すためあらゆる取り組みの強化・徹底を要請

 令和2年度第3回都道府県医師会長会議が1月19日、WEB会議により開催され、「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制」「診療報酬改定・介護報酬改定」をテーマとして、活発な討議が行われた。

 第3回目となる今回の会議はAグループ(北海道、山形県、栃木県、石川県、福井県、愛知県、兵庫県、奈良県、山口県、福岡県、佐賀県、鹿児島県)、Bグループ(宮城県、秋田県、群馬県、新潟県、富山県、静岡県、大阪府、島根県、広島県、高知県、大分県、宮崎県)に分かれ、グループごとに討議並びに全体討議が行われた。
 会議は松本吉郎常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした中川俊男会長は、「新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は増加の一途をたどっており、医療崩壊から医療自体を受けることのできない医療壊滅の状態になる恐れがある」と現状を危惧。必要な時に適切な医療を受けられる体制に戻すためのあらゆる取り組みの強化・徹底を呼び掛けた。
 また、安定した医療機関経営を維持するためには、診療報酬上、介護報酬上の特例的対応などの更なる対策が必要になるとするとともに、引き続き厚生労働省など関係各所と協議の上、本日の会議での提言等も参考にしながら地域の実情に則した取り組みを推進していく考えを示した。

Aグループ 「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制について」

 Aグループでは中目千之山形県医師会長が議長、池端幸彦福井県医師会長が副議長をそれぞれ務め、「新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療提供体制について」をテーマとした議論が行われた。
 まず初めに、緊急事態宣言対象地域の医師会(愛知県、福岡県、兵庫県、栃木県)から緊急事態宣言に至る経緯、病床確保状況、改善に向けた取り組み、要望等がそれぞれ報告された後、主に新型コロナウイルス感染症の診療状況、受け入れ体制に関して、議論が行われた。
 愛知県医師会は、入院病床占有率、入院患者数・自宅療養者数の推移等を基に、年末年始を経て新規患者数が急増している状況を説明。今後の医療提供体制に関しては、入退院を調整する機関として「医療危機対策タスクフォース(仮称)」の設置や、病院の負担軽減のために新型コロナウイルス専門の介護施設を創設する考えを明らかにした。
 福岡県医師会は、重症者等以外の陽性者が療養しているホテルにJMATとして医師を派遣し、24時間体制で対応していることを報告。その一方で、療養施設となるホテルの確保が課題となっているとして、今後は自宅待機患者、軽症者の療養が可能となるよう、増床に向け協力を求めていくとした。
 兵庫県医師会は、家庭内感染などにより新規感染者数が急増し、入院待機者数が増えることによって、病床占有率は逼迫(ひっぱく)した厳しい状況にあると説明。その解決のためには、入院調整機能だけではなく、退院調整を含めた総合的な調整が必要であるとの考えを示し、宿泊療養者へのオンライン面談、往診などの取り組みを含め、今後、県医師会を中心に医療機関間の連携に関する協議の場を設置するとした。
 栃木県医師会は、年末年始を経て、爆発的に急増した患者の分析、介護施設等のクラスター発生に対して、医師会が協力し「発生施設支援チーム」を派遣することでケアをしていることなどを紹介。併せて中等症以下の患者に対応している医療機関が自主的に入院、宿泊療養の管理、保健所の調整の全てに関与していることや、待機者のメディカルチェックによる重症度のトリアージを行っていることなどを報告した。
 その後のディスカッションでは、新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法等の改正(奈良県医師会)や入退院調整システム(Covid Chaser)による情報の可視化(北海道医師会)、入退院コーディネーターとしてDMATの活用(福井県医師会)、発症患者に対する県を越えた医療連携の問題(鹿児島県医師会)、日本医師会を始め四病院団体協議会等で構成する「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」(別記事参照)の方向性(福岡県医師会)等について意見が出された。
 その後の全体討議では、回復患者の受入体制(群馬県医師会)、愛知県提案の新型コロナ専用の介護施設の開設主体や看護師の配置基準(沖縄県医師会)、新型コロナに特化して対応している神戸市民病院の運営状況(広島県医師会)、地域医療構想における病床機能分化のあり方を踏まえた議論(茨城県医師会)、軽症、中等症患者へのコンセンサスを得た対応と継続した感染症に関する研修会の実施(大阪府医師会)などに関して、各医師会間で活発な質疑応答が行われた。
 これらの議論を踏まえてコメントした釜萢敏常任理事は、「医療現場に対する誤った情報により、医療提供体制に影響が及ぶことがないよう、理解を求めていく」とした他、入退院の調整を行うシステムを各地域で確立していくことを要請。自宅、宿泊療養者等に対しては訪問看護ステーションの看護師の活用などを提案し、日本医師会としても体制構築に向けたバックアップをしていく考えを示した。

Bグループ 「診療報酬改定・介護報酬改定について」

 Bグループでは佐藤和宏宮城県医師会長が議長、松村誠広島県医師会長が副議長をそれぞれ務め、「診療報酬改定・介護報酬改定について」をテーマとした議論が行われた。
 議論では、主に(1)新型コロナ禍における診療報酬等による経営支援、(2)オンライン診療、(3)有事と平時における医療、(4)介護報酬改定等―について意見交換が行われた。
 (1)に関して、新潟県医師会は受診抑制等により現場の負担は大きく、診療報酬だけでなく、制度としての支援も必要になっているとするとともに、診療報酬上の時限的・特例的対応についても、期限までに通常の医療に戻るとは考えられないとして、更なる延長を要望。富山県医師会も同様に延長が必要とした上で、初・再診料の議論の必要性も指摘した。
 (2)では、多くの医師会から拡大に慎重な姿勢が示された他、大阪府医師会はオンライン健康相談やBtoB(病理診断等)などと、検査が必要な初診等との住み分けを求めた。
 (3)に関して、大阪府医師会は医療機関や企業に平時の余裕が無くなっているため、有事に対する対応力が弱くなっていると指摘。平時に余裕をもつことが必要であり、診療報酬においても平時と有事で差をつけてはどうかと問題提起した。
 富山県医師会は、日本の医療は医療従事者の過重労働によって成り立っているとして、その改善を要求。静岡県医師会は、新型コロナウイルス感染症が収束したとしても受療行動は元に戻らないとの見方を示す一方で、次回の診療報酬改定は、その対応のため、現行の診療報酬体系を抜本的に見直すチャンスでもあると指摘した。
 (4)では、大阪府医師会が介護分野で人材を確保するためにも、他産業並みの給与等が必要とした他、介護報酬改定についても、会議体のあり方を含め、より充実した議論を求めた。
 富山県医師会は、介護現場における感染防護が難しいとして、現場への支援を要望。群馬県医師会も、施設基準や人員の補充等について弾力的な対応が必要とした。
 その他、広島県医師会は介護現場の環境改善等に対して、「地域医療介護総合確保基金」の活用を求めた。
 全体討議では、岡山県医師会が診療報酬上の時限的・特例的な対応の効果について質問。また、介護現場でクラスターが発生した際、入院できずに介護施設で対応せざるを得ない事例があるとして、診療報酬上の取り扱いの改善を求めた。
 回答した松本常任理事は、時限的・特例的対応について「十分とは思っていないが、一定の効果はある」とした上で、特に、4月から初・再診料、入院基本料の点数が引き上げられたことの意義を強調。その他の対応を含め、継続できるよう努めていくとした。
 茨城県医師会からは、今回の介護報酬改定について、データベース等に関する項目が多く盛り込まれたことへの見解及び医療との連携について質問が出された。
 江澤和彦常任理事は、介護データベースへのデータ提出について、加算等で評価する仕組みが4月から始まることを説明。データの活用が科学的介護の推進及び質の向上につながることへの期待感を示すとともに、収集するデータには医療と関連のあるものも含まれることから、医療と介護の連携も深まっていくのではないかとの見方を示した。
 鹿児島県医師会は、「地域医療介護総合確保基金」の要件の緩和や介護の人材不足への日本医師会としての対応を要望。これに対し江澤常任理事は、引き続き厚生労働省と協議していくとした。
 全体討議後、松本常任理事と江澤常任理事が、Bグループの議論を受けての発言を行った。
 松本常任理事は、「次回の診療報酬改定に向け、どのような対応が必要になるか、都道府県医師会の意見等を基に考えていきたい」と述べるとともに、毎年改定となった薬価改定の財源の問題や消費税問題等に関しても、引き続きその改善に向けて尽力していくとして、理解を求めた。
 また、オンライン診療については、「日本医師会として、初診からのオンライン診療は認められないという考えに変わりはない」と強調。次回改定に向けた今後の中医協での議論に対し、更なる支援を求めた。
 江澤常任理事は、今回の介護報酬の改定内容(改定率や新型コロナへの特例的対応の概要及び感染症対策など)を解説するとともに、厚労省が公開しているマニュアル類や、現在弾力的な活用が可能になっている各種交付金の活用を要請。更に、介護施設での新型コロナウイルス感染症への対応については、各地域で対応していく必要性を強調するとともに、施設内で対応する際の課題についても、引き続き国と協議していく考えを示した。
 総括を行った中川会長は、新型コロナウイルス感染症の対応病床等に関して、昨今、各種メディアにおいて公的医療機関と民間医療機関の対立を煽(あお)るような論調で報道がなされていることを危惧。「有事にある今こそ医療界が一致団結する必要がある」と強調した。
 更に、平時の余力への考え方については、医療提供体制と診療報酬の二つの側面で考える必要があり、両面の改善に向けた努力を粘り強く続けていく考えを表明した。
 その上で、中川会長は「新型コロナは必ず収束する。そのためには、新規感染者数を減少させるしかない」として、引き続きの協力・支援を求めるとともに、収束後の受療行動についても今後の動向を注視し、その対応策を考えていく意向を示した。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる