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令和3年(2021年)1月20日(水) / 日医ニュース

新型コロナウイルス感染症入院症例レジストリCOVIREGI-JPの意義と今後

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 2019年12月に、中国武漢市において肺炎の集団発生がみられ、気道上皮細胞より新規のコロナウイルス(2019-nCoV, SARS-CoV-2)が分離された。それ以降、このウイルスによる感染症である新型コロナウイルス感染症(以下、COVID―19)が全世界で猛威を振るっている。
 COVID―19については、臨床経過・臨床像に関する検討はまだまだ十分になされていない。そしてその重症化率、致命率などの状況は時間とともに変化していく。行われる治療も短期間で変化しており、これが患者の予後に与える影響も無視できない。このような情報を可能な限りリアルタイムに把握し、その結果を公衆衛生の現場、医療現場に直接に還元していくことで、COVID―19への対応に資することができる。
 これらのことから、本邦のCOVID―19の入院症例に関する臨床経過・臨床像を明らかにするための仕組みとして立ち上げられたのが、「COVID-19 Registry Japan」(以下、COVIREGI-JP)である(https://covid-registry.ncgm.go.jp/)。
 本研究では、COVID―19において、治療として薬剤投与された場合を含め、登録症例について既存資料としての診療情報を収集している。本研究で収集されたレジストリデータは、今後の治療薬剤開発、臨床試験や臨床研究の実施などの方針や研究デザイン、エンドポイントなどを判断する際に役立つ資料となり得る。更に、将来的に適応追加等を検討する際に本研究での情報を利用できる可能性がある。このレジストリも既に2020年11月30日時点で1万7197例ものデータが集積し、その解析結果も出つつある。今回はそのうち二つの結果を紹介する。
 本邦の新型コロナウイルス感染症のレジストリであるCOVIREGI-JPに参加している2638例を対象として疫学的特徴を検討した。
 入院患者の年齢中央値は56歳〔四分位範囲(IQR):40~71歳〕であった。症例の半数以上が男性であり、(58・9%、1542/2619)症例の60%近くがCOVID―19の確定例または疑い例と密接な接触をしていた。
 入院までの症状の持続期間の中央値は7日(IQR:4~10日)であった。併存疾患は高血圧(15%、396/2638)と合併症を伴わない糖尿病(14・2%、374/2638)が最も多かった。
 非重症例(68・2%、n=1798)は入院時の重症例(31・8%、n=840)の2倍であった。入院時の呼吸支援は、酸素支援を受けていない者(61・6%、1623/2636)、次いで補助酸素を受けた者(29・9%、788/2636)、IMV/ECMO(機械的換気または体外膜酸素療法)を受けた者(8・5%、225/2636)であった。
 全体では66・9%(1762/2634例)の患者が自宅に退院したが、7・5%(197/2634例)が死亡した。
 他国の既存の入院患者を対象とした研究と比較すると、併存疾患が少なく、死亡率が低い傾向にあることが示された。
 また第2の研究では、いわゆる日本国内での第1/第2波の比較研究を行った。対象は5194例(第1波3833例、第2波1361例)であった。
 入院時の重症患者の割合は第2波では第1波に比べて少なく(12・0%対33・1%)、発症から入院までの期間も第1波に比べて短かった(中央値、4日対7日)。第2波患者は、年齢が若く(年齢中央値、37歳対56歳)、他院からの転院が少なく(3・8%対15・0%)、心血管疾患(1・9%対5・9%)、脳血管疾患(1・8%対6・1%)等の併存疾患が少ない傾向にあった。死亡率(1・2%対7・3%)も第2波では低かった。
 第2波のデータは、人口統計学的に若く、併存疾患が少なく、入院時の重症患者の割合が低く、死亡率が低下していることを示している。しかし、年齢と入院時の重症度を層別化しても、第2波では死亡率が低かった。
 これは、発症から入院までの期間が短かったこと、患者の背景や併存疾患の違い、治療法の進歩などが原因と考えられる。

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