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令和3年(2021年)1月20日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

新型コロナウイルス感染症に関する最近の動向について

日医定例記者会見 1月6日

新型コロナウイルス感染症に関する最近の動向について

 中川俊男会長は記者会見の冒頭、年末年始に多くの国民が外出自粛や感染対策を徹底したこと及び診療に当たった全ての医療関係者に感謝の意を示した後に、新型コロナウイルス感染症に関する最近の動向を踏まえ、以下の7点について日本医師会の考えを説明した。

(1)緊急事態宣言

 1月4日に菅義偉内閣総理大臣が記者会見で、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県を対象に緊急事態宣言を発令する方針を表明したことについて、その決断は医療提供体制の逼迫(ひっぱく)に瀕している医療にとって非常に大きな意義があるとして、高く評価。
 また、今年に入り菅総理に対し、緊急的なコロナ病床の更なる確保は容易ではなく、感染者数の減少を図ることを最優先すべきであることを強く進言したと明かし、その進言が理解されたとの見方を示した。
 更に、今回の緊急事態宣言が1都3県に限定したものとなっていることに関しては、今後の感染拡大の状況によっては全国的な発令も考えなければならない可能性があるとするとともに、昨年4月の緊急事態宣言の時のように、国民に未知のウイルス感染症に対する連帯感を持った危機感・緊張感を取り戻す必要性があると強調。「そのことが新規感染者の増加を減少に転じ、収束への突破口にもなる」とした。
 今後については、医療提供体制の確保と、同ウイルス感染症を正しく恐れ、冷静な行動をとるよう国民に啓発することに重点を置くよう国に求めるとともに、啓発のための方策として、緊急事態宣言下における全国会議員の夜の会食を、人数にかかわらず、全面自粛することを提案。「国会議員に範を示して頂きたい。"まずは隗(かい)より始めよ"ということだ」と述べ、そのような行動が、必ず国民の一部に生じた緩みの解消につながるとした他、政府に対して、今回の宣言で経営危機が深刻化することが危惧される飲食店等への配慮も強く求めた。

(2)医療崩壊の危機などないのではないかという声に対して

 国民の一部で、″まだ医療崩壊の危機ではないのではないか"という声が少なからずあることに対しては、そのような声に多くの医療従事者が傷ついているとした他、″全ての医療機関で同ウイルス感染症を診るべきではないか"という指摘についても、「現在の医療提供体制は、同ウイルス感染症患者の医療とそれ以外の通常の医療が両立しているからこそ機能している」と強調。その両立が困難になるのが医療崩壊であるとした上で、同ウイルス感染症の患者が増加するほど通常の診療が圧迫されることを説明した。
 また、全ての医療機関で日常診療と同時に同ウイルス感染症を診た場合、更なる感染拡大につながり、医療現場に大きな混乱をもたらすとの見方を示した。
 その上で、「必要な時に適切な医療を提供できない、適切な医療を受けることができない、これが″医療崩壊"。必要な時に医療自体を提供できない、医療自体を受けることができないという″医療壊滅"の状態にならなければ医療崩壊ではないというのは誤解で、現実は既に医療崩壊である」と理解を求めた。

(3)新型コロナウイルス感染症を甘く見ないためのお願い

 同ウイルス感染症について、①国民が季節性インフルエンザの流行が激減するような感染防止対策をしていたにもかかわらず、現在のような状況にある②感染力や急激な重症化、致死率等の点で風邪や季節性インフルエンザとは明確に違う―ことを説明。「同ウイルス感染症を単なる風邪の一種だと甘く見てはいけない」とした。

(4)直近の新型コロナウイルス感染症の医療提供体制

 日本医師会が年末に地域の状況把握のための緊急調査を行った結果、年末年始も都道府県行政、保健所、医師会が一体となって体制整備の対応や、宿泊療養施設に医師会員を派遣するなどの取り組みが続けられたことを報告。
 その一方で、体制は依然として不十分との声もあり、特に保健所は手一杯となっていることから、日本医師会として今回把握した現状を国と共有し、きめ細かく、手厚い支援を要請していく意向を示した。

(5)通常診療の受診控えの懸念

 受診控えについて、同ウイルス感染症が発生して約1年が経過し、生活習慣病の重篤化が顕在化するタイミングであることを踏まえ、「日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース(J―DOME)」の分析結果を示しながら、緊急事態宣言で通常診療の受診控えが加速しないようにする必要性を強調。国民に対して、健康に少しでも不安を感じたら、既に全国で2万件以上発行されている「みんなで安心マーク」が掲示されている医療機関に相談、受診することを呼び掛けた。

(6)学校の休校

 学校の休校に関しては、児童・生徒間の感染拡大は限定的であるとのデータが示されていることを踏まえ、「子どもの孤立を防ぎ、保護者の負担を軽減する意味でも、緊急事態宣言下において一斉休校とする必要はない」と指摘。昨年3月の臨時休校の際には保育園、幼稚園が休みとなったことで、医療従事者が一時休職したりするなどの問題が起きたことにも触れ、負担が高まっている保育園、幼稚園の職員に対して国として対応した上で、子どもの受け入れの継続を要請した。

(7)ワクチン接種

 製薬会社によって流通方法や保存方法が異なり、極めて大規模な予防接種の実施体制が必要となるため、会内に中川会長、今村聡・松原謙二・猪口雄二各副会長、釜萢敏・宮川政昭両常任理事をメンバーとした「ワクチン接種体制検討委員会」を立ち上げたことを説明。国民に対しては、ワクチン接種が可能となるまでの間、感染予防対策を辛抱強く続けていくことを要請した。
 中川会長は最後に、改めて同ウイルス感染症が普通の風邪ではないこと等を強調。「同ウイルス感染症に慣れてしまったら、いつまでも長引く。新年を迎え、ここで仕切り直して再び連帯感を取り戻し、危機感と緊張感をもって頑張っていきたい」と述べ、国民への協力を呼び掛けた。

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