横倉義武会長は6月3日、全日本ろうあ連盟及び東京都聴覚障害者連盟の役員らと薬師寺みちよ自民党愛知2区支部長/前参議院議員/医師の来訪を受けて、松本吉郎常任理事と共に懇談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響によって、ろう者が手話通訳者を伴わずに医療機関を受診しなくてはならず、医療者との意思疎通に困難を来していることに対し医療機関での配慮を求める要望書を受け取った。
要望書は、(1)タブレット端末などを用いた「遠隔手話サービス」や「電話リレーサービス」についての理解、(2)医師や看護師などの表情や口元(口形)が見える工夫や、マスク着用の際はコミュニケーションの補助手段への配慮、(3)筆談の際には短く分かりやすい文章で伝える配慮―を求めている。
久松三二全日本ろうあ連盟常任理事/事務局長は、(1)の電話リレーサービスについて、通訳オペレーターが手話や文字を利用して電話を双方向につなぐ民間団体のサービスであり、2021年度からは国の公的サービスとなることを説明し、「ろう者がビデオチャットのように手話言語で通話できるもので、まだそのような場面に出会っていない医師の方々にも理解と対応をお願いしたい」と手話で述べた。
(2)に関しては、マスクをしていることで相手の表情や口元の動きが読み取れないことから、メモやイラスト、身振りなどを用いたコミュニケーションの他、フェイスシールドや透明マスクの活用を要望した。
(3)に関しては、日本語の読み書きが苦手な人もいることから、専門用語や二重否定などの言い回しを控えた、分かりやすい言葉で筆談する重要性を強調した。
越智大輔東京都聴覚障害者連盟事務局長は東京都の状況を報告し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、遠隔手話サービスが始まったものの、発熱外来が対象となっていないことを指摘。スマートフォンやタブレットの貸し出し方法などにも課題があるとして、同サービスには改善が必要だとした。
薬師寺自民党愛知2区支部長/前参議院議員/医師は、「ろう者はCTの指示が聞こえないので断られてしまったり、電話受診ができないために新型コロナウイルス感染症禍で抗がん剤の投与が受けられないというシビアなケースも生じている」とし、ろう者も平等に医療を受けられるよう、電話リレーサービスの普及への協力を求めた。
横倉会長は、全都道府県医師会に要望の内容を伝えるとともに、『日医ニュース』を通して会員に周知を図るとし、透明マスクの生産についても働き掛けていく姿勢を示した。