令和元年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会が3月11日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、テレビ会議システムを用いて日医会館で開催された。
協議会は、釜萢敏常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、今回の大きなテーマは、2022年度から開始される看護基礎教育の新カリキュラムへの対応であるとした上で、「特に、地域包括ケアシステムの推進において、地域を支える看護職員への期待は大きく高まっている」と指摘。新カリキュラムへの対応に向けて、この協議会が準備の一助となることに期待感を示した。
議事
(1)「看護職員をめぐる最新の動向について」
島田陽子厚生労働省医政局看護課長は、「看護基礎教育カリキュラム」について、臨地実習における1単位当たりの時間数の設定を教育方法の多様性に鑑み、見直したことや、保健師課程・助産師課程・看護師3年課程・准看護師課程における見直しのポイント等を解説。
また、養成所の教育体制、教育環境の見直しの要点として、①看護教員養成講習会の分割受講②養成所及び実習施設における指導体制の充実化③実習施設要件の緩和―等を挙げるとともに、これらに関する指導ガイドライン等の改正の方向性について説明した。
習田由美子厚労省看護サービス推進室長は、平成31年4月の政令改正で特定行為研修制度の各科目の内容及び時間数を変更した他、特定行為をパッケージ化して研修することを可能としたことにより、年間約2000人が研修を受けられるまでに指定研修機関の環境整備が整ってきたことを報告。
更に、特定行為研修修了者の活動による効果について、同修了者を配置した病院では、医師による週平均指示回数や病棟看護師の月平均残業時間が、配置後に有意に減少したことを紹介。「医師の働き方改革の中でも、特定行為研修修了者にタスクシフトを推進していくことが打ち出されている」とした。
その他、『在宅領域における特定行為に係る手順書例集』を作成したことを紹介し、現在、特定行為の実践が少ない在宅介護分野での活用を求めた。
(2)「日本医師会医療関係者検討委員会報告書について」
近藤稔日医医療関係者検討委員会委員長/大分県医師会長は、委員会への会長諮問①准看護師の活用推進と今後の対策②医療・介護人材の国際化の流れについて―の2点に対する答申の内容について概説した。
①では、「現状、入学者の約95%は高卒以上であることを踏まえ、レベルアップを図るために、准看護師の入学資格を高卒以上にする」「准看護師は介護の場でも必要とされていることから、介護福祉士と同様の国家資格とする」「准看護師資格の付加価値向上のために『日本版ラヒホイタヤ』(※)を創設する」「准看護師に対し、各種研修会を開催してレベルアップを図り、介護現場・在宅・保育現場等での活躍を推進する」等を、②では、高い日本語能力や書類作成能力が求められる看護・介護分野において外国人材受け入れには課題が多いことから、併行して、定年を迎えた国内人材を"プラチナ人材"として活用することを、それぞれ提案しているとした。
(3)「福島県における医師会立看護師・准看護師養成所の事例報告」
星北斗日医医療関係者検討委員会委員/福島県医師会副会長は、同県の看護学校養成所の定員充足率(平成22年~平成31年)が、看護師課程ではあまり変化がないのに対し、准看護師課程ではほぼ半減している現状を説明した。
また、『一般社団法人福島県看護学校協議会』と『一般社団法人福島県医療福祉関連教育施設協議会』の沿革と活動内容を紹介した他、同県医師会の活動として、「福島県内医師会立等准看護師養成所の今後に関する検討会」を設置し、養成所の共同運営に向けた検討などを行っていることを紹介した。
(4)「日本医師会からの情報提供」
釜萢常任理事は、まず、日医が制作した国民向けの動画『なな色健康家族』(全4編)のうちの1編"准看護師編"を上映し、「大切な職業である准看護師をPRするために、病院・診療所・学校等でこの動画を活用して欲しい」と述べた。
また、2019年4月に設立した『一般財団法人日本准看護師推進センター』の主な受託業務についても説明した。
その他、日本医師会認定医療秘書については、各医療機関は新たに医師事務作業補助者を配置した場合、6カ月の研修期間が義務付けられているが、資格取得者は、そのうちの基礎知識習得のための32時間以上の研修が免除されることを説明。
その上で、2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されており、医療現場では限られた人的資源で良質な医療の提供が求められているとし、「医師が本来の業務に専念できる環境づくりを進めていくためにも、煩雑な事務的作業の補佐を行う日医認定医療秘書の活躍が、今後ますます期待される」と述べた。
(5)協議
事前に寄せられていた各都道府県医師会からの質問・意見・要望に対して、厚労省と日医の立場からそれぞれ回答を行った。
准看護師教育に関して、単位制の導入を検討すべきとの指摘について、島田課長は、「今回のカリキュラムの見直しでも時間制を維持することになったが、時間制であっても進級した際に、落とした科目のみ再履修ができることになっている。各養成所において規定を設けて、対応して頂きたい」として、理解を求めた。
更に、釜萢常任理事は、「今回行われたカリキュラム改正においては、養成所の負担増とならないよう配慮し、准看護師課程の時間数に変更はない。また、運用面でも柔軟に対応できるようになっている」と述べ、今回の改定に一定の評価を示しつつ、「今後、運用を開始して問題点が生じた際には、ご意見をお寄せ頂きたい」と要請した。
最後に、松原謙二副会長が、「看護師等養成所を運営している医師会の負担は大変大きいが、養成をやめてしまえば地域に根差した看護職の確保が非常に難しくなるため、厚労省に引き続き、地域医療介護総合確保基金を医療介護人材の確保のための事業に配分するように要望していく」と総括を行い、閉会した。
なお、当日は、テレビ会議システムでの参加者は163名であった。
※ラヒホイタヤとは フィンランドの介護や看護、保育など保健医療福祉分野にまたがる基礎資格。 一人で複数分野の仕事をこなせるため、人材の柔軟な活用ができるのが利点。 |