令和元年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年12月5日、日医会館小講堂で開催された。
担当の城守国斗常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、まず、47年目を迎えた日医医師賠償責任保険(以下、日医医賠責保険)制度の運営に対する各都道府県医師会担当役員の協力に謝意を示した。
その上で、診療報酬改定の議論が大詰めを迎えていることに触れ、「まずは年末の予算編成で財源を確保すべく各方面に働き掛けているが、消費税率引き上げへの対応で薬価改定の財源の半分以上が昨年10月に予算計上されているため、厳しい状況である」と説明。多くの業界で人件費が引き上げられる中で、医療界だけ取り残されることのないよう、診療報酬本体のプラス改定を強く求めていくとの考えを示した。
また、医療事故を繰り返す医師を対象とした、日医医賠責保険制度における「指導・改善委員会」が6年目を迎えたことに触れ、各都道府県医師会での再発防止の取り組みの状況の共有に期待を寄せた。
続いて、城守常任理事から、「指導・改善委員会」の活動内容と状況についての説明がなされた。
引き続き、都道府県医師会での会員への指導・改善の取り組みとして、沖縄県、大阪府両医師会より報告が行われた。
沖縄県医の稲田隆司常任理事は、同県の医事紛争は産婦人科・内科・整形外科の事案が多いことや、医事紛争処理委員会を年間20~30回開催していることを報告。地域の実情を踏まえ、再発防止のためには会員個人や医療機関だけでなく、へき地医療のサポート体制の構築も課題となっており、関係学会との連携も図っているとした。
大阪府医の笠原幹司理事は、同府では多くの相談があるが、そのうち医事紛争となるものについては、医師紛争特別委員会内に「外科」「産婦人科」「内科・小児科・放射線科」「整形外科」など五つの専門委員会を設けて、毎月1回開催しているとし、再発防止に対しては、会員への"指導"ではなく"支援"の立場で臨んでいることを紹介した。
その後、日医事務局から、過去10年間における日医医賠責保険付託事案の分析結果について概説し、付託事案のうち76%が審査会で有責、22%が無責と判定され、67%が交渉、27%が訴訟、6%が調停によって解決したとした。
都道府県医師会からは、賠償限度額の算定方法や初期対応のあり方などについての質問や、医療法人が被保険者として特約保険に加入した場合、傘下の医療機関の管理者が会員でなくても補償対象医療機関とする現行の取り扱いに対する意見が出され、城守常任理事がそれぞれ回答した。
この他、日医からの連絡として、同常任理事が、(1)民法改正と日医医賠責特約保険の補償限度額の増額、(2)日医医賠責保険の医療通訳サービス付帯―について説明。
(1)では、日医A会員が日本国内で行った医療行為によって損害賠償請求がなされた場合の支払い限度額について、賠償金額の高額化などを背景として平成13年に日医医賠責特約保険を創設。補償額を「1事故2億円・保険期間中6億円」に増額していたが、近年は2億円を超える解決事案が発生していることに加えて、都道府県医師会より限度額引き上げの要望も寄せられていたことを踏まえ、令和2年7月1日以降、特約保険の掛け金は据え置きのまま「1事故3億円・期間中9億円」に増額するとした。
(2)では、今後、訪日・在日外国人の増加が見込まれることから、医療関係者と患者間の良好なコミュニケーションを確保し、医療事故を防止すべく、令和2年4月より、日医医賠責特約保険の付帯サービスとして、電話による医療通訳サービスをA①会員一人当たり年間20回、無料で利用できるなどの準備を進めているとした。
最後に、平川俊夫常任理事が閉会のあいさつに立ち、本協議会の内容を都道府県医師会に持ち帰り、今後の運営に役立てるよう求めた。
出席者は86名で、その他テレビ会議システムにより16都道府県医師会にも中継を行った。