日医主催による国民向けシンポジウムを昨年12月1日に、「いま語り合う『人生100年時代』」をテーマとして、都内で開催した。
本シンポジウムは、人生100年時代と言われる中で、この時代とどう向き合っていけば良いのか、国民と共に考えることを目的として行ったものであり、2500名を超える応募者の中から抽選で選ばれた約700名が参加した。
女優の檀ふみ氏の司会で開会。「人生100年時代に必要なこと~地域を支えるこれからの医療~」と題して、基調講演を行った横倉義武会長は、「ボランティア活動や稽古ごとの有無」と「自立率」の関係性を示した東京都健康長寿医療センターの研究結果などを基に、「人生100年時代を明るく過ごすためにも、できるだけ体を動かし、社会と関わりをもつことが必要になる」と指摘。
また、安心して暮らしていくためにも、多くの方に「かかりつけ医」をもって欲しいと述べるとともに、「かかりつけ医を国民に定着させることができれば、医師の働き方改革にもつなげることができる」と述べた。
更に、横倉会長は終末期医療のあり方についても言及。「尊厳ある最期を迎えるためにも、どういう亡くなり方をしたいのか、家族やかかりつけ医なども交えて日頃から考え、その結果を書き記しておいて欲しい」とした。
「人生100年時代は、環境新時代」をテーマとして、特別講演を行った小泉進次郎環境大臣兼原子力防災担当大臣は、世界レベルで気候変動による危機が叫ばれる中、日本においても、脱炭素化を宣言する自治体や企業が増加してきていることなどを紹介。「環境問題と人の健康は密接な関わりがあり、今後もその取り組みを進めていきたい」とした。
また、ストローが鼻に刺さってしまった亀の映像を示しながら、海洋プラスチックごみの問題が環境変動の最大の課題になっていると指摘。「このまま何もしなければ、海の中は、魚よりもプラスチックごみの方が多くなってしまう」と危機感を示し、「自分でできることから、プラスチックごみをできるだけ出さないような取り組みを始めて欲しい」と呼び掛けた。
その後は、檀氏も交えたパネルディスカッションが行われた。
人生100年時代に必要なことを問われた横倉会長は、自身が毎朝ラジオ体操や自宅の周りを早足で歩くことなど、実践していることを紹介しながら、改めて体を動かすことの重要性を指摘。また、「認知症予防のためにも、社会からの孤立を避け、できるだけ社会と関わりをもつようにして欲しい」とした。
小泉環境大臣は、東京都町田市の取り組みを例に、認知症になっても生きやすい社会をつくっていくことも、これからは必要になるのではないかとの考えを示すとともに、今後については、「100歳以上の方が増えていくと言われる中で、これまでの考え方を大きく変える必要があると考えている。いつになっても学び直しができる、そして、定年も社会から決められるのではなく、一人ひとりが自分で決めることができるような社会をつくっていきたい」と述べた。
その他、横倉会長と小泉環境大臣は、人にどれだけの影響が出るのかがまだ明らかではない、魚を食べることによって人に蓄積されるマイクロプラスチックの問題について、日医と環境省が協力して対応していくことを確認した。
※本シンポジウムの模様は、後日、日医ホームページのメンバーズルームで視聴可能とする他、1月5日付の朝日新聞にもその採録を掲載する予定であるので、ぜひ、ご覧頂きたい。