日本酒党である。しかし、若い頃は自他共に認めるビール党であった。日本酒は、寒い冬に温めて飲む、似たような味わいの個性のない寒さを紛らわせるだけの飲み物だった。ところが、40代も後半くらいからだろうか、徐々に日本酒党にシフトし、そういや親父も晩酌は日本酒だったなあなんて思い出す今日この頃。
思い返せば、町内夏祭りで近所の酒屋のオヤジに勧められて飲んだ瀧澤(たきざわ)(@長野県上田市)との出会いが始まりだったのかも知れない。豊かな米の香りとうまみ、でも一方ですっきりとした淡麗さ。こんな暑い夏の日はビールだろうとの認識は見事打ち砕かれた。夏でも旨いじゃないか、日本酒!
その後出会った日本酒は、味わいが一つ一つ全然違って個性的だった。その上名前も個性的。田酒(でんしゅ)(@青森市)、寫楽(しゃらく)(@福島県会津若松市)、獺祭(だっさい)(@山口県岩国市)、醸し人(かもしびと)九平次(くへいじ)(@名古屋市)、酔鯨(すいげい)(@高知市)。その面白さに気付いたら、いつしかどっぷり日本酒にはまっていた。
山梨の酒はと飲んでみると、ワインだけじゃなかった山梨県。日本酒の蔵がいくつもあり、クオリティーもなかなかのものだ。中でも笹一(ささいち)は親父の晩酌の定番だったのでひいきにしてしまう。毎年11月に笹子の笹一酒造で開催される新酒祭りは、新酒の原酒や濁りが飲み放題。屋台や大道芸、抽選会もありなかなか楽しい。外飲みの気分の良さも手伝って、つい長居して飲み過ぎてしまう。
うまい酒を求めての遠征は心躍る。春秋2回開催される「上諏訪街道 呑みあるき」。上諏訪駅から徒歩10分、国道20号線沿いのわずか500メートルくらいの間に5軒の個性豊かな酒蔵が並び、全ての蔵の酒が飲み放題である。最もメジャーな真澄(ますみ)はもちろんだが、小さい蔵にもそこでしか出会えない逸品がある。
毎年10月1日(日本酒の日)に開催される静岡県酒造組合主催の地酒まつりもいい。静岡県は知る人ぞ知る酒どころである。30ほどの酒蔵の酒が一堂に会し、飲み放題である。たくさんのいい酒との出会いはもちろん、地元の酒好きオヤジ達との会話もとても楽しい。
居酒屋で飲む。その土地のうまい酒、肴、そして人との出会い。学会や会議などで出掛けた先で思いがけずよい出会いがあると忘れられない思い出となる。
うまい日本酒との出会いで休日はフル回転のわが肝臓。しかし、最近少しは休みが欲しいと言う。そこでフル回転明けの月曜日は肝臓の休日とした。今週土日は大学の当直で、飲むのは厳禁。休日の友に会えない寂しい気分の私を尻目に、肝臓はのんきに土、日、月のロングバケーションを楽しんでいる。次なるうまい酒との出会いに期待し、たまには少し羽を伸ばしてもらうとするか。
(一部省略)
山梨県 山梨県医師会報 No.548より