平成28年(2016年)5月5日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
財政制度等審議会財政制度分科会における薬剤を巡る状況の議論に対する日医の見解を説明
横倉義武会長、中川俊男副会長
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日医定例記者会見 4月6日
横倉義武会長は、財政制度等審議会財政制度分科会(4月4日開催)における薬剤を巡る状況の議論に対する日医の見解を説明した。
同会長は、技術の進歩に伴い開発された画期的な新しい医薬品の安全性と有効性が確認され保険収載されることは、患者のみならず、病に苦しむ患者を助けたいという医療人も望んでいることであるとする一方、高額な薬剤が保険収載されることは、持続可能な保険財政の観点から考えれば、医薬品の費用の適正化を進めざるを得ないと指摘。「薬価の問題については、薬価算定組織が用いる評価指標や評価時期など、具体的には中医協の議論を尊重すべきであり、国民皆保険の財政を揺るがすような高額な薬価のあり方については、中医協の判断を高めなくてはならない」との見解を示した。
その上で、高額薬剤を保険収載するために財政審が提言している、①スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率の引き下げ②長らく市販品として定着したOTC類似医薬品を保険給付外とすること―に対しては「容認できない」と強調。「高額薬剤を保険収載するために市販品類似薬を保険給付の対象外とすることは全く別の問題であり、診療に必要な医薬品を保険給付の対象外とすることは、公的医療保険の給付範囲の縮小となり、国民皆保険を崩壊させる危険性もあるため、慎重な議論が必要」との考えを示すとともに、「患者の自己負担を増加させる施策は、社会保障の充実という方向性と逆行することから、まずは負担能力に応じた公平な負担という視点に基づき、金融資産を含めた資産の多寡に応じた負担を求めるべきである。安易な市販薬へのシフトはかえって健康を損ねる危険があり、そういった意味からも、かかりつけ医を中心としたサポートが重要になる」とした。
更に、人口が減少していく中、国民皆保険を堅持していくために、医療側から、①財政主導ではなく、症状や患者特性に応じてコスト意識をもった処方を診療ガイドラインに掲載する等、学会活動の支援や、過不足のない医療提供体制を提言していく②高額な医薬品については適正使用のガイドラインを定め、高い専門性を有した医師が適切な処方をする―ことも必要になると指摘。
更に、貴重な医薬品が最も必要な患者に適切に処方されるよう、処方のあり方などについて、生涯教育等を通じて啓発していくことも日医の役割と考えており、それを実践していきたいとした。
中川俊男副会長は、財政審が、「2001年以降の薬価が年平均3・2%下落したのに対し、実際に国民が負担した薬剤費は2・6%増加している」と指摘していることについて、「薬剤の単価(薬価)と薬剤費総額(薬剤量の国民負担)を比較することは適切ではない」とした上で、院外処方された内服薬単価(1種類1日当たり費用)を見れば、2006年以降、薬価改定に伴って一定程度抑制されていると説明した。
また、財政審で取り上げられたオプジーボに関しては、「効能追加により市場が拡大したことによって、原価は下がっているはずだ」とし、効能が追加された時点で薬価の見直しを行うべきであったと指摘。「今回の診療報酬改定においては、市場拡大再算定の通常分に加えて特例分も外枠に位置付けられてしまったことを踏まえると、これまで診療報酬改定に合わせて行ってきた薬価の見直しについては、効能が追加されたような際にも、見直す必要があるのではないか」との考えを示した。
更に、現在の薬事承認の仕組みについても触れ、薬価に関することが議論の俎上(そじょう)に上がってこないことを問題視。「今後、高額薬剤が出てくると予想される中で、薬事承認に関する議論を行う際には、薬価や患者数の予測も踏まえた上で丁寧な議論を行う時期にきているのではないか」とし、厚生労働省に対して、その見直しを求めていく考えを示した。
問い合わせ先
日本医師会総合医療政策課、地域医療第1課 TEL:03-3946-2121(代)