平成27年度都道府県医師会医事紛争担当理事連絡協議会が昨年12月10日、日医会館小講堂で開催された。
担当の笠井英夫常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、日頃の都道府県医師会の医事紛争防止に向けた献身的な活動並びに日医医賠責保険制度の円滑な運用への協力に対して謝意を述べるとともに、平成27年10月から開始された医療事故調査制度について、「医療事故が少しでも減少するよう、本制度の効果的な運営をお願いしたい」と述べ、引き続きの協力を求めた。
続いて、担当事務局から、日医医賠責保険制度の運営に関する経過報告が行われた後、山口、山梨、茨城の各県医師会から、医療事故紛争対策と活動状況の報告が行われた。
林弘人山口県医師会常任理事は、医事紛争減少に向けた取り組みとして、県内の病院に出向き、警鐘的事案例に関する医事案件調査専門委員会での審議ポイントや結論、関連法規、判例等を示し周知を図っていることを報告。「医師が十分な治療方針を説明したとしても、患者が理解していなければ意味はない。医師の説明と患者の理解の相違を確認するためにも、後日、看護師等から再確認してもらうことも必要」だとした。
また、医療事故調査制度に関する取り組みとして、山口大学協力の下、会内に医療事故調査委員会を設置したこと、会員向けにAi研究会等を開催していることなどを紹介した。
松澤仁山梨県医師会理事は、平成23年から現在までに県医師会医療事故処理委員会に報告のあった医療事故の主な内容を具体的に説明するとともに、万が一、事故が発生した場合、後方支援病院への紹介搬送を含め、迅速・適切な対応が重要になると指摘。
また、今後の課題については、顧問弁護士に医療に関する知識を高めてもらうことを挙げるとともに、人が関与する限りヒューマンエラーを無くすことは不可能だとして、全ての医師が「本当に正しいのか」「何のための投与か」等、常に原点に立ち戻ることを肝に銘じることが求められるとした。
石渡勇茨城県医師会副会長は、県医師会が行っている、医療ADR「茨城県医療問題中立処理委員会」の活動を紹介した。
本委員会は、弁護士、学識経験者、市民代表、医師会役員を委員とし、申立事案が発生した場合、委員長は弁護士または学識経験者、医師はアドバイザーとして「あっせん・調停会議」を開催。その運営は、申し込み費用及び成立手数料を無料とし、全て医師会が費用負担しているとした。
その上で、本委員会の目的は、患者側と医療側が話し合える場を提供し、中立の立場で問題処理への支援を行うことにあり、決して医療機関の責任の有無や賠償額を判定する機関ではないことを強調。たとえ不可避的な事故であっても真摯な態度で問題に対処することが最も重要であるとした。
続いて、笠井常任理事から、「最近の医事紛争から」と題して、(1)産科医療補償制度と日医医賠責保険、(2)審査会回答と対応方針、(3)付託事案から再発防止に向けた取り組み、(4)医事紛争発生時の対応、(5)指導・改善委員会からの指導内容に対する都道府県医師会での対応─について説明が行われた。
(1)では、産科医療補償制度と日医医賠責保険との金額調整について、相談事例を挙げて説明した他、(3)については、増加傾向にある象徴的な事例を紹介し、改めて注意を呼び掛けた。
その上で、指導・改善委員会からの依頼に対する各都道府県医師会の再発防止に向けた取り組みに感謝の意を示し、引き続きの協力を求めた。
次に、今村定臣常任理事からは、医療事故調査制度開始後2カ月の現状並びに今後の進め方として、まず、医療事故調査・支援センターへの医療事故報告件数は45件、相談件数は410件であったこと、日医医療事故調査費用保険の状況は、保険付託件数4件で、実際に保険金を支払うに至ったケースはないこと等を報告。
その上で、支援の実施に関しては、地域内でのAi、解剖、専門委員の手配等の「資源」を把握し、情報共有、役割分担するためにも、支援団体連絡協議会の設置が不可欠だとするとともに、全国の支援団体の状況を正確に把握するため、実施中の調査に対する協力を求めた。
また、今後については、院内事故調査、支援団体業務を担う人材の育成が重要だとして、日医が行う「医療機関向け研修会」「支援団体向け研修会」の積極的な活用を求めるとともに、院内調査に備え、遺体の冷蔵保管、搬送に関する業務の協力協定を全日本葬祭業協同組合連合会と日医の間で締結したこと、都道府県医師会からAi情報センターに読影依頼をする場合の条件を交渉中であること等を報告した。
その後は、事前に寄せられた質問・要望等について、それぞれ回答が行われ、松原謙二副会長の総括で、協議会は終了となった。
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