さてアッという間に60歳、還暦を迎えることになった。無趣味な私も1年ほど前から60歳になったら何か始めないとこれから先、寂しい余生を過ごすことになってしまうと焦っていた。
そんなある日、妻に付き合って楽器店に行った際、何気なくサックスの並んでいるショーケースを眺めていた時、カワイイ若い魔女が耳元で囁(ささや)いた。「何かお探しですか? このサックスきれいでしょう、指運は小学校で習っていた縦笛とほとんど変わらず比較的簡単ですよ」。
この一言で中学時代音楽の通信簿屈辱の2、10年ほど前コードFで断念したエレキギターなどの苦い思い出が吹っ飛んだ。ひとつこれをマスターして息子の結婚式で(いつになるか全く分からないが)カッコ良く弾きこなしたら苦手のスピーチを回避できるかも、そしてオネーチャンに少しはモテるのでは、などとよこしまな考えが頭の中をグルグル巡った。30分後、お察しのとおりクレジットカードを差し出し週1回のレッスン予約まで契約していた。
それからが苦難の始まりである。まず楽譜が読めない(学生の頃の不勉強&老眼)、サックスが思ったより重く首と腰にくる、指運も縦笛とは異なる(特にシャープ、フラット)、リズムが取れない、自宅で練習しようと思ってもご近所への騒音問題が気になるし、飼っている愛犬は怯(おび)えて吠えまくるし問題山積みだ。
しかしこれからの老後の趣味生活、資本投下(結構高額)も考えここでやめる訳にもいかず、頑張って続けていこうと思っている。
目指せ世界のナベサダ!(笑)
長崎県 佐世保市医師会報 第146号より