喫煙は体の細胞の遺伝子や器官を傷つけ、がんの他、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器疾患、糖尿病などの生活習慣病、さらに歯周病などさまざまな病気の原因になります。
また妊娠中の喫煙は、血流を介しておなかの赤ちゃんにも影響し、早産や低出生体重児などが起こるリスクを高めます。しかも妊娠に気づきにくい初期は、胎児の内臓をつくる細胞が成長する大事な時期ですので、妊娠前から喫煙をやめ、たばこの煙を避けるようにしましょう。
喫煙していると歯周病にかかりやすいことも分かっています。
歯周病が怖いのは、進行すると歯を失う原因になるだけでなく、全身の健康にも影響することです。
その他、ヤニで歯が黄色くなる(写真)、ひどい口臭がするなど、美容やエチケット面でもマイナスばかりです。
お口の健康のためにも、禁煙したいものですね。
喫煙が喫煙者本人に影響を与える病気は科学的にも証拠があり、喫煙との因果関係が十分にあると推定される病気を「レベル1」、「レベル1」ほど十分でないが因果関係が示唆される病気を「レベル2」として公表されています。
(注1)妊婦の喫煙との関連
喫煙の健康影響に関する検討会編:
世界に感染が広がった新型コロナについては、非喫煙者と比べて、喫煙者の方が重症化するリスクが高かったことが明らかになっています。
また、その他にも喫煙者は呼吸器に関する病気にかかりやすいという報告もあります。
*1 Guo FR. J Med Virol. 2020; 92: 2304‒5.
*2 Lawrence H, et al. J Infect. 2019; 79: 401‒6.
*3 Han L, et al. Epidemiology. 2019; 30: 405‒17.
*4 Alraddadi BM, et al. Emerg Infect Dis. 2016; 22: 49‒55.
*5 Nam HS, et al. Int J Infect Dis. 2017; 58: 37‒42.
*6 Baskaran V, et al. PLoS One. 2019; 14: e0220204.
新型コロナの罹患後に人々を苦しめる後遺症の症状についても喫煙が発症を高めるリスクとなっていることが各国で報告されています。
非喫煙者と比較した喫煙者の発症確率 | |
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中国*1 | 中国*11.55倍 |
イスラエル*2 | イスラエル*21.53倍 |
イギリス*3 | イギリス*38.39倍 |
*1 Wong MC, et al. JMIR Public Health Surveill. 2023; 9: e42315.
*2 Tene L, et al. Int J Infect Dis. 2023; 128: 3‒10.
*3 Paul E, et al. BMC Public Health. 2022; 22: 1716.
喫煙者の死亡率は非喫煙者より高く、国内で喫煙に関連する病気で亡くなった人は年間で19万人1)、世界では年間500万人以上と推定されています。喫煙は、一時の至福感と引き換えに、自分の寿命を削っているのです。
厚生労働省:健康日本21(第三次)の推進のための
Sakata R, et al. BMJ. 2012; 345: e7093.
35歳~40歳で禁煙すれば喫煙前の余命を取り戻すことができます。また、50歳で禁煙しても6年、60歳なら3年寿命を延ばすことができるといわれています3)。禁煙はいつから始めても遅すぎることはありません。先送りせず、禁煙する気になった時がやめ時です。
Doll R, et al. BMJ. 2004; 328: 1519.
たばこには発がん性物質など数千種類の物質が含まれています。たばこの煙を吸い込むたびに、気管や肺はこれらの有害物質にさらされ、炎症を引き起こしているのです。