グローバルに活躍する若手医師たち(前編)

日本医師会の若手医師支援

JMA-JDNとは

Junior Doctors Network(JDN)は、2011年4月の世界医師会(WMA)理事会で若手医師の国際的組織として承認されました。JDNは、世界中の若手医師が情報や経験を共有し、未来の医療を考えて行動するための画期的なプラットフォームです。日本医師会(JMA)は2012年10月に国際保健検討委員会の下にJMA-JDNを立ち上げました。これまで若手医師の集まりは学会や医局、地域、NGOなどの枠組みの中でつくられてきました。JMA-JDNは、多様な若手医師がそれらの枠組みを超えて、公衆衛生や医療分野において自由に自分たちのアイデアを議論し行動できる場を提供したいと考えています。関心のある方は検索サイトやFacebookで「JMA-JDN」と検索してみてください。

今回は、JMA-JDNの若手医師より、ラトビアで開催された世界医師会理事会・JDN会合、フランスで開催されたJDNの会議、スイスで開催された世界保健総会(WHA)の報告を寄せてもらいました。

 

ラトビアでの世界医師会理事会に出席して

北海道大学病院 内科I JMA-JDN役員(国際)  佐藤 峰嘉

2018年4月26日から28日にかけて世界医師会理事会がラトビアの首都リガで行われました。リガの旧市街は世界遺産に登録されており趣がありました。

さて、理事会に先立って25日には卒後10年以内の医師のネットワークであるJunior Doctors Network (JDN)の会合が行われ、世界各地から10余名の医師が参加しました。加えて今回はラトビアの若手医師も数名出席し、自国の若手医師の研修環境について現状を聞く機会がありました。日本では考えにくいことですが、ラトビアでは研修先が不足しており、研修医としての職に就くことができない医学部卒業生が多くいるとのことでした。また、研修を途中でやめてしまったり、専門医試験に不合格になったり、研修した専門分野で3年以上働かなかったりした場合、年に7,000ユーロ支払わなければならないのだそうです。そして、そのような研修環境の改善のために若手医師が国に働きかけているとのことでした。日本では新しい専門医の仕組みが始まったばかりで混沌とした状況ですが、他の国でも研修環境には課題があり、それに対して若手医師が主体的に改善に向けて取り組んでいるということからは、我々も学ぶべきところがあると感じました。他には「ヘルスケアにおけるリーダーシップ」や「気候変動と健康」のワークショップがありました。

翌日からの理事会においては、各国医師会からの理事らが、医の倫理や公衆衛生上の諸問題について議論しました。核兵器廃絶・母子保健・終末期医療・災害医療、さらには、遠隔医療や人工知能等、我々に影響しうる新たな事象について、全世界の医師を代表する組織としてどのように考え、取り組むべきかが検討されました。これらは最終的には声明文等の形で発信されることになります。

医師としてどのように働いていくのか、また、命と向き合う者として諸問題にいかに取り組むのか考えさせられる4日間になりました。

佐藤 峰嘉
2012年北海道大学卒。砂川市立病院で臨床研修修了。北海道の地方中核病院で呼吸器・総合内科を研修後、現在に至る。

message
ラトビアでは名物の薬草酒「ブラックバルサム」を飲みました。

 

世界医師会におけるJDNの意味
~pre-WHA JDN会議に参加して~

英国キングスカレッジ病院 胎児科、 NPO法人親子の未来を支える会代表理事、 千葉大学医学薬学府大学院博士課程
JMA-JDN役員(国際)  林 伸彦

2018年5月19~20日に、フランスの世界医師会本部にて、JDNの会議が行われました。これは毎年、世界保健総会(WHA)に先立って、その年のWHAで取り扱われるテーマに関してあらかじめ知識を深めるため若手が自主的に行っている会議です。世界保健機関(WHO)の職員の方にご講演いただいたり、世界医師会の役員らを交えて意見交換をしたりしました。

会議では、日頃の臨床ではあまり考えることのないスケール感の議論が行われておりました。気候変動による健康被害や、大気汚染による健康被害、技術革新によって新たに生まれた医療の形(モバイルヘルス)などについての議論がありました。特にモバイルヘルスなど、住環境の変化により生まれた新たな医療の可能性などについては、若手だからこそ述べられる意見もあるということを感じました。2日目には、WHOが主催で行っているWalk the Talkイベントに参加しました。環境汚染による健康への影響などを書いた看板を持って歩く啓発イベントです。各国から、WHO関係者もそうでない方も参加され、大変な盛り上がりでした。

様々な宣言を行っている世界医師会ですが、医療の変遷とともに変わりゆく倫理観に対し、どのように未来を見据えて適切なタイミングで適切な声明を発するか、大変苦慮されているということも知りました。そして宣言の採択や改訂に若手の意見を取り入れる仕組みがあることに感銘を受けました。また、コミュニティリーダーを目指して取り組むうえで、より広く長期的な視点で人類の健康を守る立場になることと、比較的短期的な視点で患者の健康を守る現場の医療を行うこととの乖離に葛藤があるということは、多くの参加者共通の意見でした。目の前の患者を救う視点に加え、より広く長期的な視点で医療者がどこへ向かっているかを多くの医師が理解することで、個々人では克服できないような課題を克服できるようになるのではないでしょうか。

林 伸彦
東京大学で発生学を学んだ後、千葉大学医学部へ学士編入。千葉県内で研修後、ロンドンの大学病院で胎児医療研修中。

message
外に出てみて、医師のキャリアプランがたくさんあることに気付きました。

※先生方の所属は2018年7月現在のものです。

 

グローバルに活躍する若手医師たち(後編)

国際保健における若手の活躍と期待されること

ブランデンブルク心臓病センター JMA-JDN副代表(内務) 岡本 真希

2018年5月21~26日、ジュネーブにて世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関である第71回世界保健総会(WHA)が開催されました。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals,SDGs)の「目標3(全ての人に健康と福祉を)」の達成のため、政府・国際機関・ヘルスケアプロバイダーなど多くの方々が一堂に会し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジや非感染性疾患(Non-Communicable Diseases,NCDs)・気候変動の健康被害・栄養・モバイルヘルスなど、多岐にわたるテーマが話し合われました。

今回私たちは世界医師会のサブデリゲートとして、上記の様々なテーマに関して声明を作成し、会議で発言するという貴重な機会を頂きました。若者の死因の多くを占める自殺や精神疾患に対する若手医師の適切なトレーニング確立の必要性、健康アプリやネット情報が急速に広まるなかで患者が信頼できる情報のみにアクセスするための業界水準や規制の構築、新規抗結核薬開発や耐性抑制の研究に対する投資増額など、若手として問題視していることを取り上げ発言しました。驚いたことに、医学生で発言している方もいました。

何より加盟各国代表が参加し、オンラインで世界中に配信される正式な会議の場で、若手にも同様に発言の機会が与えられるのは非常に素晴らしいことだと感じました。そして物怖じせず発言する仲間の姿にとても刺激を受けました。こういったことに目を向け、活動を起こしている若手が世界にいることを知っていただき、皆さんも医学生・医師として社会に貢献できることは何か考え、行動につなげるきっかけとしていただければと思っています。

岡本 真希
洛和会音羽病院にて臨床研修修了。2017年よりドイツ・ブランデンブルク心臓病センター留学中。循環器内科医。

message
WHAには世界各国から50名以上の若手医師と医学生が参加していました!

 

 

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※先生方の所属は2018年7月現在のものです。