グローバルに活躍する若手医師たち

日本医師会の若手医師支援

JMA-JDNとは

Junior Doctors Network(JDN)は、若手医師の国際的組織として、2011年4月の世界医師会(WMA)理事会にて設置が承認されました。JDNは、世界中の若手医師が情報や経験を共有し、未来の医療を考えて行動するための画期的なプラットフォームです。これを受けて日本医師会(JMA)も、2012年10月に国際保健検討委員会の下、JMA-JDNを立ち上げました。これまで若手医師の集まりは学会や医局・地域・NGOなどの枠組みの中で作られてきました。JMA-JDNは、様々な分野で活躍する若手医師たちがそれらの枠組みを超えて、公衆衛生や医療分野において自分たちのアイデアを自由に議論し行動できる場にしたいと考えています。関心のある方は検索サイトやFacebookで「JMA-JDN」と検索してみてください。

今回は、JMA-JDNの若手医師より、2016年10月に台湾で開催された世界医師会(WMA)総会および、それに先立って開催されたRegional Meeting、WMA-JDN Meetingの参加報告を寄せてもらいました。

 

世界医師会台北総会
~Regional Meeting~

JMA-JDN 役員(研究担当) 加藤 大祐

世界医師会台北総会(2016年10月19~22日)開催に際し、10月17・18日に行われたWMA-JDN Meetingに先立つ16日、初の試みとして、WMA-JDNの中のアジア・太平洋地域の若手医師が一堂に会し、互いに自国の医療について発表・議論するRegional Meetingが開催されました。本稿では、Regional Meetingについて報告します。

今回のテーマは若手医師の労働条件で、私も若手医師の労働条件とwell-beingについて発表する機会を頂きました。

医師の過重労働は、あらゆる国々で問題となっています。今回参加した多くの国で、週当たりの平均労働時間が80~100時間にのぼるというデータがあります。この問題を考えるとき、労働時間の定義と、医師不足の地域で大きくならざるを得ない医師の負担を労働条件とどのように両立するかということが大きなテーマになります。

また、研修において研修医が期待する教育と、病院経営者が期待する労働を、労働条件の面からどのように統合するかも重要です。米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)は、Nurse Practitioner (NP)、Physician Assistant (PA)が、若手医師をアシストし、彼らの教育の機会を妨げないよう定めており、現在、米国の大学病院の62%がNPとPAを雇用しているそうです。

労働条件の適正化によって、質の高い教育・医師の保護・ストレスの軽減・労働への高い満足度が期待できます。その意味でも、世界中の多くの若手医師が直面しているという意味でも、労働条件は個人の問題ではなく、みんなで取り組むべき大切な問題であると感じました。

現在、JMA-JDNリサーチチームでは、月1回リサーチミーティングを開催し、議論を重ねています。今回の会議期間中に、複数の国の若手医師が私たちの取り組みに興味を示してくれたことは、大きな喜びであり、今後への強い励みになりました。

日本は、来年のアジア大洋州医師会連合(CMAAO)の開催国です。今回実感した合理的な組織のシステムをできるだけ取り入れ、たくさんの気づき、学び、そしてつながりを活かして、この取り組みを一層洗練・加速できるよう励んでいきたいと思います。

加藤 大祐
筑波大学で臨床研修、名古屋大学附属病院総合診療科で後期研修修了。三重大学大学院家庭医療学分野博士課程所属。家庭医療専門医・指導医。認定内科医。

 

グローバルに活躍する若手医師たち

世界医師会台北総会
~JDN Meeting参加報告~

JMA-JDN副代表(内務) 岡本 真希

台湾でのWMA総会に先立ち、2016年10月17・18日の2日間、世界各国の若手医師が集まり様々なことを議論するWMA-JDN Meetingが行われました。

今回、私はJMA-JDNメンバーとして初めての国際会議参加でしたが、普段それぞれの国で若手医師を盛り上げている中心メンバーがオンラインではなく実際に顔を合わせて議論、交流し、時間を共有できたのは、皆の熱意を直に感じるまたとない素敵な機会でした。

会議の中ではNational Taiwan University Hospitalの見学や、WMA-JDN役員の選出、各国代表からの活動状況報告等が行われました。Country Presentationでは、一口に若手医師といっても国ごとに特色があり、アジア諸国は長時間労働が多く、ギリシャやアフリカの国々は医師の労働・教育環境に国の経済破綻や過酷な気候・貧困などが色濃く影響するなど、置かれている状況や立場が異なるのが印象的でした。よりよい環境を求めて政府に働きかけ、法律や医療制度の作成に関わるなど大きなアクションを起こしているメンバーもいました。

会議2日目はEnd-of-life Careをテーマとしたパネルディスカッションが行われました。質問があとを絶たない白熱した議論は、自分の考えをもつこと、そしてそれを表現し、共有し、吟味することの楽しさを再確認させてくれました。JDNの皆からは各国若手医師の思いを代弁して、よりよい労働環境、そしてよりよい医療の実現を目指していく姿勢と強い意志が感じられ、非常に感銘を受けましたし、このような熱い仲間たちと今後の世界の医療を担っていけることを大変頼もしく感じました。日本のJDNとしても今後の活動において視野を世界に広くもちつつ、各地域や各個人の思いを反映できるような活動を心がけていければと思います。

岡本 真希
洛和会音羽病院にて臨床研修・後期研修を修了。現在、同病院にて循環器内科医として勤務中。認定内科医。

 

世界医師会台北総会
~本会議参加報告~

JJMA-JDN 副代表(外務) 鈴木 航太

2016年10月19~22日にかけてグランドハイアット台北で開催された世界医師会(WMA)台北総会に3名の日本医師会JDNメンバーと共に参加しました。今回のWMA総会には、WMAの役員をはじめ、世界各国の加盟国医師会やJDNのメンバーなど、58か国から約300名の医師が参加し、会場は熱気に包まれていました。WMA総会はWMAの最高意思決定機関で、これまでにも「ヘルシンキ宣言」、「ジュネーブ宣言」、「患者の権利に関するリスボン宣言」などの重要な文書の採択をしてきました。WMA総会中は、財務企画・社会医学・医の倫理の各委員会からの報告・議論や、ヘルスケア制度の持続可能性をテーマにした学術集会、WMA次期会長選挙などが行われました。学術集会は、台湾の保健大臣、研究者、臨床家など様々な専門家による講演とパネルディスカッションで構成されており、日本からは東京大学の渋谷健司教授から、「高齢化社会でのヘルスケアの持続可能性、世界的観点から」と題して講演がありました。

WMA次期会長選挙には日本医師会の横倉義武会長の他3か国からの立候補があり、結果、横倉先生が選出されました。会期中には、台湾の蔡英文総統、陳建仁副総統からのスピーチもあり、国を挙げてWMA総会を支援している様子がうかがえました。

今回のWMA総会に参加できたことは、私にとってまたとない貴重な機会であり、大変勉強になりました。普段はなかなかこの様な重要な意志決定を行う会議に参加する機会は少なく、国際保健の最近の潮流を学ぶことが出来たのみならず、国際会議の一連の流れを見ることも大変勉強になりました。また、会期中に各国のJDNのメンバーとの交流の機会を沢山得られたことは、今後の活動にもつながるきっかけとなりそうです。WMA総会で色々と学んだことを、今後、日本のJDNでの活動にも還元していきたいと思います。

鈴木 航太
川崎市立川崎病院で臨床研修修了後、慶應義塾大学病院 精神・神経科学講座へ入局。2016年4月より同大学大学院博士課程所属。精神科専門医。