肛門部がおかしい
肛門の調子とおなかの調子
排便回数には個人差があり、1日に何回もする子ども、毎日きちんと1回する子ども、2、3日間隔でする子ども、1週間以上便が出ない子どももいます。便秘に明確な定義はなく、しいて言えば便が出ないことで不都合が生じる状態といえます。便秘の場合、通常便が硬くなります。発達途上にある子どもの便が硬いと、さまざまな問題が起こります。たとえば、肛門近くの粘膜が傷つき出血し、同時に痛みを伴います。痛みを伴うと肛門括約筋(かつやくきん)が緊張し、さらに便秘がひどくなるという悪循環になります。
女の子の場合
便秘がちの女の子のなかには、肛門から膣への会陰(えいん)部分に魚の背びれのような形をしたイボ状の物ができる場合があります。ときに赤くはれていることもあり、これを「見張りイボ」と呼んでいます。便秘を改善することで徐々に治りますが、炎症がある場合は抗生物質の入った軟膏を使うこともあります。
男の子の場合
生まれて3か月以内の男の子に起きることが多い肛門の問題に、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)があります。下痢や便秘で、肛門の小さなくぼみにばい菌が入り、うみを作ります。抗生物質を使ったり、膿瘍が大きいときは切開排膿します。肛門周囲膿瘍は場所がら清潔を保つことが難しく、治癒するにも時間がかかります。治癒と再発を繰り返しますが、どんなに再発を繰り返しても、一般的には3歳までに自然治癒します。膿瘍ができた後に空洞が形成され、肛門管皮膚とがつながった状態を「乳児痔瘻(にゅうじじろう)」と言います。これは飲み薬やぬり薬では治らないため、手術除去が必要です。
炎症で痛みがあるときは・・・
肛門周囲膿瘍や肛門部が切れているときは、場所がら消毒をする必要はなく、汚れた部位をお湯でしぼった清浄綿で優しく拭き取ります。
ぎょう虫について
ぎょう虫は、長さ約1センチの寄生虫です。寄生されると、かゆみが出たり、睡眠不足になったり、夜泣きの原因になったりします。ぎょう虫は寝ている間に肛門周囲に卵を産むため、肛門に貼ったテープを顕微鏡で確認し、卵を見つければぎょう虫卵陽性となります。これをセロハンテープ法と呼びます。陽性の場合、肛門部の卵は接触した手を介して家族にうつりやすいため、本人と家族に駆虫剤を服用してもらいます。肛門についた卵は孵化して幼虫になり、この幼虫が動くとかゆみを伴い、その結果お尻をかくことになります。これが集中力を欠く原因になります。滅多にありませんが、消化管、特に虫垂に卵が多く溜まると、虫垂炎(盲腸)と同じ症状になります。ぎょう虫卵の有無の検査は集団生活では義務づけられており、陽性になった場合はプールなどの集団行動ができません。