下痢・便秘
消化について
食べ物は口に入り、歯でかみくだされ、ごっくんと飲み込まれて、食べ物の通り道、食道に行きます。食べ物は噴門(ふんもん)から胃に入ります。胃の中で食べ物はさらに胃酸で細かくなります。胃から幽門を通って十二指腸に入ります。
先天性幽門狭窄(せんてんせいゆうもんきょうさく)は、生まれてから2週間目ごろに赤ちゃんが突然吐き続けて脱水症になる病気です。
十二指腸では肝臓から胆汁(たんじゅう)、膵臓(すいぞう)からいくつかの消化酵素が出て食べ物をさらに細かくします。十二指腸の次が空腸、回腸です。この3つを小腸と言います。小腸は食べ物を消化して体の中に栄養素を吸収していきます。
残った食べ物は大腸へと進みます。大腸は盲腸、上行結腸(じょうこうけっちょう)、横行結腸(おうこうけっちょう)、下行結腸(かこうけっちょう)、直腸と分かれています。大腸は栄養素の吸収と多量の水分を吸収します。
最後に肛門から便となって出ます。食べ物は、口から肛門へと長い旅をして便となりますが、この便の性状についていろいろと考えたいと思います。
便の硬さはどう決まるの?
便の硬さは、基本的には水分量で決まります。水分が多いと軟らかくなり、少ないと硬くなるのです。
小腸や大腸は栄養素を吸収すると同時に水分も吸収します。特に大腸は、栄養素の吸収よりも水分の吸収が大きな機能なのです。
小腸や大腸で食べ物を肛門の方に送り込もうとする動きを蠕動(せんどう)と言います。腸の動き、蠕動が活発なときは、消化された食べ物は早く肛門から出ます。反対に蠕動が活発でないときには遅く出ます。早いということは、食べ物の小腸や大腸における滞在時間が短いということです。滞在時間が短ければ、水分の吸収量も少なくなります。その結果、便は軟らかくなります。
反対に蠕動が活発でなければ、滞在時間が長くなり、水分を十分吸収するため便は硬くなるのです。
食べ物によっては水分を吸収しにくくしたり、反対に体から水分を消化管に引き寄せる働きのあるものがあります。このような食べ物が消化管にあるときには結果として便は軟らかくなるのです。
どんなとき便は硬くなるの?
小腸や大腸の蠕動が活発でないとき、便は硬くなります。蠕動は消化管の動きです。この動きは、自律神経によって指令が出されています。自律神経は交感神経と副交感神経です。この二つの神経のバランスで動きが決まるのです。
先天性巨大結腸症は、生まれつき大腸の一部に神経がない病気です。神経のない部分の広さで、結腸が大きくなる程度が違います。同時に蠕動が弱くなるので便秘になるのです。「便秘」と「便が硬いこと」は同じではないのですが、一般的には便秘の人は便が硬い傾向があります。
便秘には、便が何日でなかったからそうだというきちんとした決まりはありません。しいて言えば、便が出ないことによって苦痛を感じているときに便秘と言います。1週間便が出なくてもけろっとしているときは、別に病気とはいえないのです。
便が軟らかくなるとき
蠕動が活発で、食べ物が消化管にある滞在時間が短いときは、便は軟らかくなります。水分の体内への吸収が十分できないからです。また体内から水分を引き寄せるようなことが起こっているときも、便は軟らかくなります。下痢は水分量の多い便のことを言いますが、しかしきちんとした決まりは便秘と同じようにないのです。
下痢の原因は1番が胃腸炎です。子どもでは、ウイルス性の胃腸炎がいちばん多いのです。ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスが代表的な原因ウイルスです。
細菌性の胃腸炎は、食中毒の原因である大腸菌、サルモネラ、ブドウ球菌、キャンピロバクターなどがあります。消化管にこれらのウイルスや細菌で炎症が起こると腸の蠕動が活発になります。粘膜がやられるため体から水分を引き寄せます。その結果、水様便になり、ときに脱水になることもあります。
アレルギーも下痢の原因になります。また精神的なストレスでも下痢になったり便秘になったりします。
便秘や下痢の対策
下痢と便秘は、コインの裏と表の関係です。便秘の治療は、下痢のときやってはいけないことをすればいいのです。すなわち蠕動を活発にすることが基本になります。おなかをもむことは、消化管を物理的に刺激して蠕動を活発にしようとすることです。同様に、こよりや綿棒で肛門を刺激することも同じことです。繊維成分の多い食べ物を食べるのは水分の吸収を妨げる作用があるからです。便が硬くてどうしても出ないときは浣腸をします。
下痢の治療には、以前は便秘の反対のことをよくしていました。しかし感染性胃腸炎のときは、かえってウイルスや細菌を外に出す自浄作用を妨げることから、下痢を積極的に止めるようなことはしなくなっています。
下痢の治療とは、脱水の予防であり治療です。ミネラルの入っている飲料水を飲んだり点滴をすることが治療になっています。
下痢の原因は多くあります。大部分は胃腸炎ですが、アレルギーや心因性のこともあります。また食べ合わせのこともあります。
全身状態をチェックしながら原因を考えて治療することが大事です。元気なときはゆっくり自然にまかせることも大事です。便の性状は子どもの健康バロメーターです。おとなは必ず子どもたちの便のチェックを忘れないでください。