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令和6年(2024年)2月20日(火) / 日医ニュース

「医師の働き方改革について」をテーマとして活発な討議

「医師の働き方改革について」をテーマとして活発な討議

「医師の働き方改革について」をテーマとして活発な討議

 令和5年度第3回都道府県医師会長会議が1月30日、日本医師会館大講堂で開催された。
 当日は、「医師の働き方改革について」をテーマとし、活発な討議が行われた他、事前に寄せられた意見及び質問に対して日本医師会執行部から回答を行った。また、議事に先立ち、石川県医師会より令和6年能登半島地震の被災地の現状などについて報告が行われた。

 会議は釜萢敏常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、令和6年能登半島地震の犠牲者へのお悔やみと、被災者に対するお見舞いの言葉を述べるとともに、発災直後に会内に災害対策本部を設置し、石川県医師会を始めとする被災地との緊密な連携の下、JMAT派遣を行っていることを報告。また、被災地支援のために、全国の会員より多くの支援が寄せられていることに感謝の意を述べた。
 更に、本日の会議のテーマである「医師の働き方改革」に言及。本年4月より医師の時間外・休日労働の上限規制が適用されることを受け、限られた人的資源の中で地域医療体制を維持していくという困難な対応が求められているが、本日の議論を踏まえ、都道府県医師会と行政が連携して地元の医療機関の支援へとつなげられるよう努めていくとした。
 その他、多くの都道府県並びに郡市区等医師会の協力により、2023年12月1日現在の日本医師会の会員数は、前年比で2000名を超える大幅な会員増となったことに改めて謝意を表明。今後も入会促進を始めとする組織強化に取り組んでいくことが重要との認識を示し、引き続きの協力を求めた。

被災地の現状について説明受ける

 続いて、安田健二石川県医師会長が、JMAT派遣や全国の医師会から寄せられた支援等に対して謝意を表した上で、(1)震源に近い珠洲市、液状化現象が発生した内灘町の状況、(2)能登地震医療福祉機関の現状と対策、(3)県内DMATの活動状況、(4)被災地からの避難(2次避難・1.5次避難)、(5)2次避難所受け入れ状況―などについて報告を行った。
 (2)では、能登半島北部から金沢以南への高齢者や患者の搬送が進んでいる一方、医療提供体制が各地でひっ迫する状況もあり、範囲を広げて受け入れを依頼していることを報告。DMAT活動が2月中旬まで延期される他、今後のJMATの活動は、能登北部と1.5次並びに2次避難所への支援という両面作戦で進めていくことになるとした。
 (3)では、2次避難所(ホテル・旅館)への避難者リストが未整備のため、健常者と要配慮者が混在して避難してくるという事態が生じているとした上で、平時からの連携と、有事の際には速やかに個人情報が得られる法整備が必要ではないかと指摘した。
 その他、1月30日現在で、県内で合計25のJMATチームが活動中で、2次避難所避難者のサーベイとアセスメント等を行っているものの、今後も息の長い支援が必要になるとして、引き続きの協力を要望した。
 その後は二井栄三重県医師会長が進行役を務め、Fグループの医師会(山形県、福井県、三重県、千葉県、和歌山県、徳島県、長崎県)による討議が行われた。
 共通した問題意識として、(1)大学病院からの医師派遣が引き揚げられることによる地域医療体制の崩壊、(2)宿日直許可取得が目的化することへの懸念、(3)タスクシェアやIT化等を進めることによる効率化促進の必要性、(4)医師の健康確保と地域医療体制の維持の両立―等が挙げられ、議論が行われた。
 山形県医師会は、診療所、中小病院、総合病院共に、大学病院からの医師派遣を受けて診療体制を維持している現状を報告。常勤医の確保が困難な状況下において医師の派遣が途絶えると、常勤医の少ない病院では診療体制の維持が不可能になるとの危機感を示した。
 また、医師の引き揚げにより、専門医の診療継続を必要とする患者が専門外来のある病院への通院を余儀なくされるとした上で、地方では通院のための公的交通手段が乏しいため、患者が通院難民となることが危惧されるとした。
 福井県医師会は、「医師の働き方改革」を実現する必要性に理解を示す一方、「宿日直扱い」の取得により医師の確保を進めて当座をしのぐことで、医師の過剰労働を減らすという改革の本来の意義が見失われているのではないかと指摘。また、国民に対して「上手な医療のかかり方」を周知、啓発していく必要性もあるとの認識を示した。
 三重県医師会は、人件費の高騰が大学病院からの医師派遣抑制を招き、結果、医局員の収入減や、大学における研究力低下につながると指摘した。
 千葉県医師会は、4月から医師の働き方改革が進められることには理解を示しつつも、救急医療の崩壊につながらないような方策を模索しているとの説明がなされた。
 和歌山県医師会は、勤務医から、繁忙期などに勤務実態にそぐわない安易な宿日直許可の取得を行うことに反対があり、結果として、病院との交渉で連続休暇の確保が可能となり、解決に至った事例の他、地域の小児救急医療体制維持のため、繁忙期などに特例的に宿日直許可が認められている事例などを紹介した。
 徳島県医師会は、特例水準(B、C水準など)の申請数の現状と、医療機関勤務環境評価センターによる評価の進捗状況について質問。特に、2024年4月からの医師の時間外労働の上限規制開始に先立ち、評価業務が完了可能か否かについて回答を求めた。
 長崎県医師会は、県内のほぼ全ての病院がA水準を選択している現状を報告。そのために、スタッフの増員、IT化、効率化、タスクシフトが急がれるとした。
 また、病院によっては、タスクシフトの一環として特定行為研修を修了した看護師(特定看護師)の養成を急ぐ他、集約化の影響で二次救急の返上を検討している施設もあるとし、地域医療の崩壊を危惧するとともに、今後、地域医療維持のために取るべき施策等について、日本医師会の見解を質した。
 徳島県医師会からの質問に対しては、城守国斗常任理事が、1月30日時点での評価申し込み件数は469件で、そのうち、約8割(375件)の評価が完了していることを報告。2024年3月上旬中には、全ての評価結果を医療機関に通知できる見込みであると回答した。
 長崎県医師会からの質問に対しては、タスクシェアの一環として特定行為研修を進めていくべきとする一方で、医療安全等の観点から、NP(ナースプラクティショナー)の資格の創設には引き続き反対であることを強調。また、在宅医療の場では、オンライン診療(D to P with N)等の対応も可能とした上で、「医師との連絡が取りづらい」との意見があることについては真摯(しんし)に受け止め、医師側が訪問看護師と連携を密にして指示を出し、必要に応じて自ら対応すべきとの考えを示した。
 その他、当日は、岡山県、茨城県、東京都、大阪府、京都府、神奈川県、鹿児島県、群馬県の各医師会からも発言があり、①働き方改革の理念形骸化への懸念②地域医療構想・医師偏在是正とのバランスを取りながらの改革推進③国との交渉は日本医師会が先頭に立って行う必要がある④宿日直許可の下にある医師の業務範囲⑤救急医療体制維持の困難化⑥勤務医の労働環境や条件に係る相談窓口設置の必要性⑦勤務医の収入減少に起因する人材流出への懸念―等といった指摘や要望がなされた。

城守常任理事から回答示す

 続けて、12都県医師会から事前に寄せられていた、(1)医師の働き方改革に対する日本医師会の考え方及びこれまでの取り組み、(2)宿日直許可の取得(自己研鑽(けんさん)と時間外労働の線引きの考え方)、(3)宿日直許可における対応業務範囲、(4)医師の働き方改革が地域医療に与える影響、(5)働き方改革に係る財源の確保、(6)医師偏在及び増員対策、(7)国民への周知・啓発、(8)医療DX推進に係る国による費用負担―等の質問に対し、城守常任理事から回答が行われた。
 (1)では、まず、改革の目的は、①医師の健康確保②より良い地域医療提供体制の継続③医療医学の質の維持と向上―であると、日本医師会として主張し続けていることを強調した。更に、2022年3月に日本医師会の呼び掛けにより、四病院団体協議会、全国有床診療所連絡協議会と共に、後藤茂之厚生労働大臣(当時)に宿日直に関する要望書を提出したことに言及。その結果、2022年4月に、医療機関からの医師の宿日直許可の申請に関する相談窓口が厚労省に設置され、更に、同年7月発出の厚労省通知「医療機関の医師の宿日直許可に関する取扱いについて」において、各労働局に対し、医療機関に寄り添って対応することや、医療機関の個別の状況に応じて丁寧な説明を心掛けることが求められたことを紹介した。
 (2)では、「宿日直許可の取得が目的化し、現実と乖離した状況になっているのではないか」との質問に対し、同様の懸念を抱いているとした上で、許可取得は目的ではなく、医療機関の実態に即した運営を行うための手段であることを強調。更に、自己研鑽と時間外労働の線引きについて、院内規定の策定が重要であることを指摘するとともに、トップダウンでの策定ではなく、医局員全員の協議の下、合意形成の上で策定し、周知することが重要と指摘。この点については、医療機関勤務環境評価センターでも重要な評価ポイントであるとした。
 (3)では、厚労省より、通達においてその範囲が例示されているものの、実際には内容に連続性があり、業務の切り分けは困難であるため、各医療機関はそれぞれの事情に応じたシフト表や勤務計画を作成し、働き方改革の趣旨に沿った対応を取ることを求めた。
 (4)では、昨年10月に日本医師会が実施した「医師の働き方と地域医療への影響に関する調査」の結果に改めて言及。①宿日直体制の維持が困難②派遣医師の引き揚げへの懸念③救急医療、専門的医療、周産期医療の縮小撤退―などの問題が共通して挙げられる一方、地方においては「へき地医療の縮小撤退」への懸念が強かったことを紹介。その上で、現在、制度開始直前の現状を把握するため、第2回目の調査を実施中であるとし、回答への協力を求めた。
 (5)では、働き方改革の実効性を担保するには、人員を確保するための財源が極めて重要との認識を示した上で、財源は基本的には診療報酬であるとし、令和6年度診療報酬改定においては、40歳未満の勤務医を始めとする医療従事者等の賃上げを目的とした引き上げが行われることに言及。今後、診療報酬を軸に税制措置や補助金の新設要望等、あらゆる手段を活用して財源の確保を進め、医療提供体制構築に取り組んでいきたいとした。
 (6)では、平成15年度から19年度の医学部定員は7625名だったが、その後の臨時定員増により、令和6年度は9403名となっていることを報告した。一方、高齢化と少子化の進行により人口が減少し、2029年には医師の需給が均衡するとの厚労省によるデータに言及。現在の医学部定員を維持することは適当ではないとの認識を示した。
 その上で、取り組むべきことは医師の地域偏在是正であるとするとともに、そのためには、地域枠や地元出身者枠を臨時定員ではなく、恒久定員内に設けることが必要になると指摘した。
 (7)では、医師の働き方改革を進めていくためには国民の理解と協力が不可欠であるとして、国に対して、その周知と啓発を求めるとともに、日本医師会としても啓発動画を作成し、公式YouTubeチャンネルで公開することなどを検討してきたいとした。
 (8)では、医療DXを国策として推進するのであれば、その費用は国が全額負担すべきと政府の各種審議会等で繰り返し主張しているとし、2023年2月16日には、加藤勝信厚労大臣(当時)に、「電子処方箋(せん)導入に伴う補助金の拡充に関する要望」を提出したことを改めて説明。今後も、医療機関側のコスト及び労力を最小化するための働き掛けを続けていくとの意向を示した。

生活習慣病に係る医学管理料見直しの内容等を説明

 その他、当日は、長島公之常任理事から、1月26日に開催された中医協総会において「生活習慣病に係る医学管理料の見直し」の提案が行われたことに関する説明が行われた。この説明は、一部のマスメディアにより、同提案の中で、「特定疾患療養管理料」の対象疾患から、脂質異常症、高血圧症、糖尿病を除外することのみ強調して報道されたため、多くの会員の間で誤解と不安が広がっていることを受け、行ったものである。
 説明の冒頭、長島常任理事は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病に対する特定疾患療養管理料に代わり、新しい点数として、検査等を包括しない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設されることを強調。現在、特定疾患療養管理料を算定している医療機関の大部分が、この新しい管理料に移行できるとの見通しを示すとともに、点数の詳細については、今後の中医協における議論の中で決定されていくとした。
 また、釜萢常任理事は1月25日に日本医師会から発出した文書「組織強化に向けた取り組みについて(依頼)」に言及した上で、改めて各都道府県及び郡市区等医師会の協力に謝辞を述べ、今年度以降についても、(1)新臨床研修医を始めとする会費減免対象者の入会促進、(2)臨床研修修了後の異動手続きの徹底と入会継続、(3)会費減免期間終了後の入会継続―の三つの観点より、管内郡市区等医師会との一層の協力の下での取り組み推進に引き続きの協力を求めた。
 総括を行った松本会長は、施行が目前に迫った医師の働き方改革について熱心な議論が行われたことに謝意を示しつつ、「医師の健康確保と地域医療体制の維持を、バランスを取りながら共に実現していくことは大変難しい課題である」と指摘。今後も知恵を出し合い、医療現場でも必要な改革を行いながら進めていく必要性があるとの認識を示した。
 また、医師の需給については、現在の定員数を維持していけば、近い将来に医師数が過剰になるとし、その点についても議論を尽くす必要があるとした他、現在、大詰めを迎えている中医協における次期改定の議論についても、現場に混乱を来さないよう、注意を払いながら主張していくとの意向を示した。

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