閉じる

令和6年(2024年)1月20日(土) / 日医ニュース

東京の中小病院

勤務医のひろば

東京の中小病院

東京の中小病院

 私はこれまで都下の病院勤務医として二十余年を過ごしてきたが、改めて見えてきた特色のある東京の病院事情について考えてみたい。
 東京の病院は640もあり、9割が民間病院で、しかも200床未満が7割を占め、欧米と比べると違いが際立っている。欧州では中世から医療の中心だった教会や、慈善団体から発展した病院、及び行政による公的病院が主体である。米国でも事情は同様だが、近代になって登場してきた利益重視の医療企業によるプライベート病院を付け加える必要があるだろう。欧米ではその成立過程からおのずとほとんどの病院は規模が大きく広域向けだ。
 一方、東京では個人の診療所からスタートし、病床を持ち、少しずつ拡張しながら発展してきた病院が多数見られる。現在では、人口約2万人当たり1病院が都下に分散する。無床診療所は人口約2万人当たり20施設だ。ちなみに大阪では人口約1万5000人、札幌では9000人につき1病院である。
 その生い立ちから、地域コミュニティの求めに応じて展開し、比較的狭い地域を向いて経営がなされてきた故、中小病院が多いのが道理であり、そこに特色と意味を見出せるだろう。このような日本の病院は医療制度の変遷や、経済の浮沈(ふちん)、代替わりなどさまざまな波を乗り越えて踏みとどまっており、その経営の苦労へ思いが至る。
 歴史的にわが国の地域医療や保健衛生を支えてきたのは、診療所と地域の中小病院である。この観点から言えば、今でいう地域包括ケアに以前から取り組んでいるのであり、連綿と果たされてきたその役割は大きな遺産だ。
 残念ながら東京の物価・地価の重圧にあえぐ中小病院の経営は苦しく、施設老朽化や働き手不足などさまざまな課題がある。しかし、世界で最も先鋭化したわが国の高齢社会を支える医療は、特に東京のような都市部においては、中小病院と在宅医療を含めた診療所がかかりつけ医機能を存分に発揮するより他にないのではないかと信じている。経緯を分断することなく、未来へ適応する発展を望むばかりである。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる