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令和元年(2019年)10月20日(日) / 日医ニュース

ORCAプロジェクトや医師資格証の今後等に理解求める

ORCAプロジェクトや医師資格証の今後等に理解求める

ORCAプロジェクトや医師資格証の今後等に理解求める

 令和元年度都道府県医師会情報システム担当理事連絡協議会が9月19日、日医会館小講堂で開催された。
 当日は、ORCAプロジェクトや医師資格証の今後等について日医から説明を行い、理解と協力を求めた。

 石川広己常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、2016年6月に「日医IT宣言2016」を公表し、日医として「安全なネットワークの構築」や「個人のプライバシーポリシー保護」を重要視し、IT化を進めてきたと説明。厚生労働省が現在、データヘルス改革の一環として各種データの利活用に向けた動きを急ピッチで進めていることに対しては、「日医は、利活用ありきではなく、患者の究極の個人情報である医療情報を確実に守ることが最も重要であると考えている」とした上で、いったんネット上に流通した情報を完全に削除することは不可能な状況の中で、現時点では些細(ささい)と思える情報でも、将来的に重要な情報になってしまう可能性を指摘するとともに、関係者のリテラシー醸成や医療等分野専用ネットワーク・医療等IDの整備、保健医療福祉分野公開鍵基盤(HPKI)の普及が、これらの懸念や不安の払拭には不可欠であると強調した。
 引き続き行われた議事では、(1)ORCAプロジェクトの今後、(2)医師資格証の今後、(3)次世代医療基盤法への対応、(4)医療IT委員会の検討経過報告、(5)その他―についての解説が行われた。

周辺部分のサービスを有償化―ORCA

 (1)では、石川常任理事が、ORCAについて、各種レセプトコンピュータの中でも代表的な存在で、現在業界2位のユーザ数であること等を紹介した。
 その一方で、クラウド版の普及が遅れていることに加え、日医標準レセプトソフト(日レセ)に接続する電子カルテは増えているが、その多くが無償提供されている院内設置型の日レセを利用していることから、「現在の延長線上で事業を進めていても、今後のORCA事業の運営への貢献が極めて厳しい状況が明らかとなった」と説明。これらの状況を鑑み、オープンソースの考え方を崩さずに、周辺部分のサービスに関する有償化措置を実施するという結論に至ったとした。
 今後については、日医としてORCA管理機構に対し、①日レセユーザへの丁寧な説明②日レセクラウド利用者の増③ORCA事業と親和性の高い新たな付加価値サービスの提供④各種サービスを統合的に利用できる医療機関向けのICTポータルの構築―を求めていく方針を示した。
 上野智明日本医師会ORCA管理機構代表取締役社長は、同機構の設立の経緯や現在供給しているサービス、最近の新規導入状況について紹介した上で、クラウド版の普及が遅く、当初計画のままでは維持が困難であり、収益面でも苦戦していること等を説明。「ORCAを、国民皆保険の保険請求基盤として維持発展させていくため、持続可能な体制づくりにご協力願いたい」と理解を求め、具体的な協力依頼として、「オンプレ版(院内サーバー型)ユーザのクラウド版へのシフト」「オープンソースの理念は崩さずに、周辺サービス部分に対して費用を徴収することへの理解」を挙げた。
 また、オンプレ版を2020年1月以降は「商用版(周辺サービス付パッケージ)」とする意向を示し、具体的なサービス内容や利用料金、利用料導入に関する流れ等、現行案を解説。「ORCAを何としても自立させ、ユーザに末永く使って頂けるようにしたい」と運営の改善に向けた決意を示した。

医師免許証のHPKI機能付きカード型への協議を開始

 (2)では、長島公之常任理事が説明。医師資格証発行数の低迷は依然として続いており、会内の医療IT委員会の答申で「従来の手法には限界もある」と指摘されたことに加え、マイナンバーカードと医師資格の一体化の動きもあることから、今後、「HPKI機能の迅速かつ確実な普及のために、電子的・アナログ的活用場面の拡大等を行う」「マイナンバーカードと医師資格一体化の阻止をスピード感を持って進める」―ことを基本姿勢として対応していくことを決めたとした。
 更に、現在の紙の医師免許証を「HPKI機能付きカード型」免許証に切り替えることについて、厚労省と協議していくことを明らかにし、実現した際の普及効果や必要性の認知度向上、アナログ的利活用の拡大等における効果は極めて大きいと予測した。
 また、HPKIが電子署名法に則り5年ごとの更新が必須となることから、医師資格の更新制度につながるのではないかという懸念に対しては、「医師の資格(身分)は医師法で定められている。別々の法律であるため、資格更新と直接的に結びつくことはないが、将来的な不安を払拭するため、日医は一定の条件を満たさない限り、カード化には絶対に協力しない」と断言。必要な条件としては、①医師免許証とHPKI機能を分離する②既に取得した免許証は、カードへの切り替えの義務無しとする③資格更新制への不安・心理的抵抗を払拭する厚労省の対応を求める―ことを挙げた。
 (3)では、城克文内閣官房健康・医療戦略室次長と石川常任理事が説明を行った。
 城次長は、同法について、「商売に利用するものではなく、医療の質の向上に使われるもの」と強調した上で重要なポイントとして、①認定匿名加工医療情報作成事業者(認定事業者)を定め、不適切な取り扱いがあった場合には罰則が設けられている②医療機関はあらかじめ本人に通知し、本人が拒否しない場合、認定事業者に対し、医療情報を提供することができる③死亡した個人の情報も保護の対象となる―ことを挙げた。
 また、同法制定の背景として、「インプットのみならずアウトカムも含む医療情報の利活用」「医療情報の分散保有」「改正個人情報保護法の施行」があるとした他、匿名化加工については、「認定事業者による何らかの問題が起きた場合、日本の医療情報の利活用は10年遅れる可能性がある」として、国として慎重に進めていく方針を示した。
 石川常任理事は、同法による生涯保健事業の体系化に向けた課題として、各種保健事業の実施主体や所管省庁・部局等が異なり、データが一元的に管理されておらず、国民の健康情報が十分に活用できていないこと等を指摘。その解決のために、①個人情報の厳格な管理を前提として、国民一人ひとりの生涯を通じた保健情報が一元的に管理され、これを基に一次予防から三次予防までの保健事業を、国民のライフサイクルに応じた「生涯保健事業」として的確に実施②これらの事業で一元化されたものは、個人ごとに本人の閲覧を可能とし〔パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の事業の構築〕、自らの健康情報として日常生活に反映することを普及させ、国民の健康資本を増大させる③乳幼児期から成人・老年期までつながる疾病や健康上の課題の抽出、解明―を進める必要があるとした。
 また、認定事業者として認定を受けるため、平成31年3月7日に登記申請を行った「一般財団法人日本医師会医療情報管理機構」が申請の準備をしているとして、認定取得に向けた今後の見通しを説明した。
 (4)では、塚田篤郎医療IT委員会委員長が、同委員会の検討経過等について説明した。
 (5)では、石川常任理事が、オンライン資格確認等システムに関する厚労省の検討状況について報告。オンライン資格確認の導入に向けたシステム調達等の準備状況やマイナンバーカードの初回登録の仕組み、医療機関等のシステム整備のスケジュール等について、現時点で明らかとなっていることを説明した上で、「これから先、全医療機関にネットワークが整備されていくこの機会を活用し、医療機関の連携等における問題等も一緒に解決していきたい」と意欲を示した。
 それぞれの説明の後、質疑応答が行われ、大阪府、広島県、熊本県の各医師会からの事前質問並びに会場からの質問に対し、日医役員及び厚労省が回答した。
 最後に総括を行った松原謙二副会長は、「『HPKI機能付きカード型』免許証については、10年先、20年先のことを考えながら対応する必要がある」と述べ、医師資格の更新制に利用されることだけは避けなければならないとの認識を示し、協議会は終了となった。

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