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令和元年(2019年)10月5日(土) / 日医ニュース

「医師会共同利用施設の意義とこれからの方向性」をメインテーマに開催

「医師会共同利用施設の意義とこれからの方向性」をメインテーマに開催

「医師会共同利用施設の意義とこれからの方向性」をメインテーマに開催

 第28回全国医師会共同利用施設総会(主催:日医、担当:三重県医師会)が9月7、8の両日、「医師会共同利用施設の意義とこれからの方向性」をメインテーマとして、約350名の参加の下、三重県志摩市内で開催された。
 日医からは、横倉義武会長を始め、今村聡副会長、小玉弘之・松本吉郎・羽鳥裕各常任理事が出席した。

地域の特性を踏まえた施策の推進の重要性を強調―横倉会長

 7日に開催された総会は二井栄三重県医師会副会長の司会で開会。冒頭あいさつした横倉会長は、持続可能な社会保障が最重要課題となっているとした上で、「時代に即した改革を進めながら、かかりつけ医を中心とした多職種連携による地域包括ケアシステムの構築・発展、健康寿命の更なる延伸が求められる」と述べ、行政と医師会が方向性を共有し、地域の特性を踏まえた施策を進めることが重要とした。
 その後、松本純一三重県医師会長、鈴木英敬三重県知事、竹内千尋志摩市長のあいさつに引き続き、横倉会長が「日本医師会の医療政策」と題した特別講演を行った。
 横倉会長は講演の中で、(1)医師会の歩み、(2)「医師会の役割」と「医の倫理」、(3)明るい長寿社会に向けて、(4)超高齢社会、人口減少社会に向けた医療のあり方―について解説。
 (3)では、健康寿命を延伸し65~74歳までの方が社会参加を続けることで、社会保障の維持に繋(つな)がるとの認識を示すとともに、高齢者まで切れ目のない全世代型社会保障としていくためには、①成育基本法に基づく少子化対策の一層の強化による妊娠期から成人期までの更なる支援②働き方改革に伴う、働く世代への産業保健の充実による健康寿命の延伸―が必要になるとした。
 (4)では、「都道府県において、地域の医療提供体制の将来のあるべき姿を検討し、地域の実情に応じて、医療資源を活用すべき」と述べた上で、外来医療計画や地域医療構想、働き方改革への対応等に対する考え方を解説した。
 働き方改革の解説の中では、タスクシフティングについての私見として、「シフティング」よりも「シェア」という観点の方が実情に馴染(なじ)むのではないかとの考えを披露した。
 続いて、山本貴弘全国医師会共同利用施設施設長検査健診管理者連絡協議会長/大分市医師会副会長が、平成30・令和元年度の同連絡協議会の活動について報告。その後、三つの分科会に分かれてシンポジウムが行われた。

各地域の取り組みを説明

 第一分科会(医師会病院関係)〔座長:松本常任理事〕では、原寿夫福島県医師会常任理事/郡山医師会副会長/同市医療介護病院長が、同病院のこれまでの経緯や現状・課題、今後の展望等を紹介。会員へのアンケート結果等を受け、必要な機能ははっきりしてきているものの、いわゆる"200床の壁"が問題になっているとした。
 目々澤肇東京都医師会理事は、主に、東京都医が主導で行っている「東京総合医療ネットワーク」について解説。ベンダー間で仕様が違うため、そのままでは連携できない電子カルテを連携させるために取り組んでいることなど、進捗の状況を説明するとともに、更なる広域運用に意欲を示した。
 川名隆司宮崎市郡医師会長/同市郡医師会病院長は、同病院の概要等を説明した上で、民間では担うことが困難な役割として、①広域重症型急性期医療②循環器疾患の最新治療③医療防災ゾーン―を挙げ、これらを医師会病院として担っていきたいとした。
 上ノ町仁鹿児島市医師会長は、鹿児島市医師会病院が経営の悪化による病院存続の危機から脱するために行っている各種取り組みを紹介。依然として厳しい状況は続いており、「生き残るためには、今アクションを起こさなければこれまでと同じ、じり貧化の恐れあり」という考えの下、今年度もダウンサイジング等の体制変更を行ったとした。

検査・健診センターでの取り組みを紹介

 第二分科会(検査・健診センター関係)〔座長:池田秀夫佐賀県医師会長/日医医師会共同利用施設検討委員会委員長〕では、有川卓山形市医師会健診センター所長が、平成30年5月に新築・移転した同センターの現状について説明。経営環境は厳しいものの、地域住民の健康を守るために、地域と行政のニーズに応えるという立場で事業を展開していく必要があるとした。
 富山県の白崎文朗高岡市医師会臨床検査センター担当副会長は、同医師会が開発した検査オーダリングシステム「TAK SYSTEM」について、開発に至った経緯や目的を説明。興味がある医師会があれば連絡して欲しいとした。
 川邉一徳岡山市医師会事務局次長/同市医師会総合メディカルセンター管理者が、同センターの体制や検査情報システムについて、JA岡山厚生連と連携していることや、「メディカルリンク(クラウド型検査データ連携システム)」を構築・運営していること等を紹介した。
 福岡県の本多直美小倉医師会健診センター所長は、同センターが導入したストレスチェック解析システムについて、導入後の実績を始め、会員へのアンケート調査に基づき書式を改善したことや解析システムのPR強化を図っていること等を説明した。

多職種協働による取り組みを説明

 第三分科会(介護保険関連施設関係)〔座長:利根川洋二埼玉県医師会副会長/日医医師会共同利用施設検討委員会副委員長〕では、小川郁男埼玉県医師会地域包括ケアシステム推進委員会委員長が、平成27年度から展開している「在宅医療提供体制充実支援事業(金井プラン)」として、在宅医療支援センターを平成29年4月までに全30郡市医師会に設置したことや、情報共有、急変時の入院先確保の状況等を説明した。
 三重県の平岡直人松阪地区医師会居宅介護部門担当副会長は、同医師会の地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みとして、「松阪地域在宅医療・介護連携拠点」や「松阪市認知症初期集中支援チーム」を設置したことなどを紹介した。
 大阪府の長田栄一東成区医師会長は、同医師会が取り組んでいる在宅拠点事業の取り組みについて、行政との連携の状況を中心に説明するとともに、コーディネーターの役割の重要性を強調した。
 島根県の入江秀樹安来市医師会診療所院長/介護医療院みずかぜ施設長は同医師会の医師会病院を介護医療院に転換した経緯や課題について紹介。既存の老人保健施設との役割分担が明瞭になった一方で、生活の場として利用者に親しみのある施設にするためには、更に工夫が必要とした。

全体討議、施設見学を実施

 2日目には、初めに石田亘宏三重県医師会理事より、三重県内の共同利用施設の紹介があった。
 その後、各分科会報告に続き、松本常任理事を座長として全体討議が行われた。
 その中では、健康寿命延伸に関する日医の取り組みや「検査基準値」と「臨床判断値」の関係についての質問や要望が出された。
 最後に、今村副会長が、「地域それぞれの事情を抱えた中で、それらの解決・発展に向けた糸口が見い出せたのではないか。今回の成果を是非地域に持ち帰って頂きたい」と総括。総会終了後、参加者はそれぞれ、県内の施設見学を行った。
 なお、次回の本総会は、北海道医師会の担当で令和3年9月11、12の両日に開催される予定となっている。

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