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令和元年(2019年)8月5日(月) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「医師、看護師等の宿日直許可基準」及び「医師の研鑽」に関する厚労省局長通知が発出される

 厚生労働省労働基準局から7月1日付で、「医師、看護師等の宿日直許可基準」及び「医師の研鑽(けんさん)に係る労働時間に関する考え方」について局長通知(右記に発番記載)が発出された。
 今号では、その内容を説明するとともに、通知発出を受けて7月3日に松本吉郎常任理事が行った記者会見の模様を紹介する。

 今回の二つの通知は、本年3月末に、今村聡副会長、城守国斗常任理事が出席していた厚労省の「医師の働き方に関する検討会」が報告書を取りまとめたことを受けて、解釈の明確化を図るために発出されたものである。
 「宿日直許可基準」に関する通知では、まず、(1)通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものである、(2)宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度のまたは短時間の業務に限る、(3)(1)、(2)以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしている―ことの全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得る場合であることを、労働基準法施行規則第23条に基づき宿日直の許可を得ることができるための条件として挙げている。
 その上で、(2)に関しては、①医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や看護師等に対する指示、確認を行う②医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行う―ことといった具体例を示している。
 また、一つの病院や診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限定して宿日直の許可を受けることができると明記。具体的には、「医師以外のみ」「医師について深夜の時間帯のみ」の他、「病棟宿日直業務のみに限定しての許可」を得ることも可能としている。
 更に、小規模の病院、診療所等において、医師等がそこに住み込んでいる場合には、これを宿日直として取り扱う必要はないとしている。
 今回の通知が発出されたことにより、昭和24年に出された通知「医師、看護婦等の宿直勤務について」は廃止されることになった。
 なお、「医師、看護師等」の「等」の範囲について、厚労省事務局は7月18日に行われた社会保障審議会医療部会でその考えを説明した。
 具体的な例として、診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師、薬剤師、保健師、助産師などを挙げるとともに、「一連の患者対応に携わらず、電話対応や会計などのみを行う事務職に関しては、必ずしも通知の対象になるものではない」としている。

所定時間外における医師の研鑽について3類型を示す

 一方、研鑽に関する通知は、医師の研鑽に係る労働時間該当性に係る判断の基本的な考え方、並びに医師の研鑽に係る労働時間該当性の明確化のための手続き及び環境整備について記すために、初めて出されたものである。
 所定労働時間内の研鑽の取り扱いに関しては、当該研鑽に係る時間は当然に労働時間になるとする一方、所定労働時間外において医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・目次の指示に寄らずに自発的に行われるものも少なくないとして、研鑽を(1)一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習、(2)博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成、(3)手技を向上させるための手術の見学―の3類型に分類。類型ごとに、その判断の基本的考え方を示している。
 また、通知には、事業場における研鑽の労働時間該当性を明確化するため、研鑽を行う医師が属する医療機関等に対して取り組むべき手続きや環境の整備などについても触れられている。
 手続きについては、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化するよう要求。環境整備に関しては、①診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しない②通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずる③医療機関ごとに研鑽に対する考え方などを示した書面等を作成し、研鑽を行う医師の上司や所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に周知する―ことなどが望ましいとしている。

医師の業務を明確化・現代化したものと評価―松本常任理事

 今回の通知が発出されたことを受けて、松本常任理事は7月3日に記者会見を行い、二つの通知に対する日医の見解を説明した。
 記者会見で、同常任理事はまず通知の概要を説明した上で、これまで日医が主張してきた「医師の健康への配慮」と「地域医療の継続性」の両立という観点から取りまとめられた厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」報告書に基づいたものであるとし、「医師の活動の実態を踏まえ、医師の業務を明確化・現代化している」と評価。
 今後、各地域で、都道府県労働局・都道府県医師会・都道府県医療勤務環境改善支援センター共催の説明会が開催されていくことから、日医としてもその周知に努めていくとするとともに、各医療機関において勤務環境の改善が図られていくことに期待を寄せた。
 また、7月5日より厚労省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(別記事参照)での議論が開始されることを踏まえ、「医師の働き方については、2024年4月の時間外労働の上限規制適用までに医療法の改正を始め、関係する各制度が整っていなければならない」との考えを示し、「引き続きスピード感を持って検討を進めて欲しい」と要望した。

 
労働基準法第32条
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。


労働基準法施行規則第23条
 使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第32条の規定にかかわらず、使用することができる。

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