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平成31年(2019年)2月5日(火) / 日医ニュース

多くの重要案件に対し機に先んじて事に当たっていく決意を示す

多くの重要案件に対し機に先んじて事に当たっていく決意を示す

多くの重要案件に対し機に先んじて事に当たっていく決意を示す

 平成30年度第3回都道府県医師会長協議会が1月15日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、「2019年10連休中の医療提供体制の確保」「控除対象外消費税の問題」など、7県医師会から出された多岐にわたる質問並びに要望に対して担当役員から回答した他、日医から「医師の働き方改革」「風しんの抗体検査と予防接種」等について報告を行い、理解と協力を求めた。

会長あいさつ

 協議会は小玉弘之常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、昨年末、日医が長年にわたり取り組んできた、①医療に係る消費税問題②成育基本法―の二つの課題に大きな進展があったと説明。今年も、医師の働き方改革、第30回日本医学会総会2019中部、G20に合わせて開催するH20、消費税率の引き上げ、来年度診療報酬改定率を決定する予算編成に向けた議論等、重要な案件が目白押しであり、機に先んじて事に当たっていくとした。
 更に、今後の医療制度を考えるに当たっては、オプジーボに代表されるがん免疫療法や、長足の進歩を遂げるAI(人工知能)、ICT(情報通信技術)など、安全性を担保しつつ医療に取り込んでいく基本となるルールを医師主導でつくり上げていくこと、少子高齢化が進むわが国の人口動態を加味しつつ、社会保障制度の給付と負担の在り方も含め、必要な経済成長と財政規模について国民的議論として喚起していくことが重要だと指摘。引き続き、これらに対応することで国民医療の更なる推進に努めていくとして、一層の協力を要請した。

協議

(1)2019年10連休中の医療提供体制の確保について

 福岡県医師会からの、4月27日から5月6日までの10連休中の医療提供体制確保についての質問に対して、小玉常任理事は、日医が昨年12月に実施したアンケートへの協力に対する謝意を表すとともに、都道府県行政の危機意識が全体的に低い等の結果を報告。その結果を基に、全国の地方行政に対して、危機意識を高めてもらい、都道府県・郡市区医師会との連携を強化するよう、改めて厚生労働省に指導を求めるとした。
 また、休日加算の算定ができる場合の一つに、「客観的に休日における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる医療機関を患者が受診した場合」があり、地域医療支援病院、救急病院・救急診療所、休日当番医・輪番制においては、診療応需体制(診療時間内の受診)にあっても算定可能であると説明。
 10連休における医療提供体制構築の際には、地域の医師会が病院団体や自治体と相談し、一時的な対応として、一般の医療機関の協力を得て、在宅当番医や病院群輪番制により、体制を整えることが重要との考えを示した。

(2)地域医療介護総合確保基金の医療、介護の申請方法の違いについて

 宮城県医師会からの地域医療介護総合確保基金の医療、介護の申請方法の違いに関する質問には、江澤和彦常任理事が回答した。
 同常任理事は、同基金の介護分については、「介護施設等の整備に関する事業」と「介護従事者の確保に関する事業」を対象に、介護保険事業計画に基づいて、都道府県が取りまとめて国へ交付申請することになっていると説明。今後は、将来の介護ニーズを的確に反映した介護保険事業計画の策定の見直しや、地域の実情に応じた基金の利用使途について、都道府県の裁量をより大きくしていくことが必要になるとした。
 また、「喫緊の対応が求められている介護人材の確保のため、施設整備事業と介護従事者確保事業の区分を都道府県ごとの裁量で柔軟に取り扱えるようにすべき」との日医の指摘を踏まえ、平成30年度の各都道府県への配分、31年度予算に関してもその配分において施設整備分と介護人材分の一体的な執行が初めて行われることを紹介。一定の評価をする考えを示した上で、「引き続き、国に対して強く申し入れを行うとともに、より効果的な活用方法を提案していきたい」と述べた。

(3)新生児聴覚スクリーニング検査費用の国庫補助と関連法令整備の要望

 新生児聴覚スクリーニング検査費用の国庫補助と関連法令の整備を求める兵庫県医師会からの要望に対して、平川俊夫常任理事は、「乳幼児の聴覚障害は音声言語発達に重大な影響を及ぼすことから、全ての新生児を対象としたスクリーニング検査が無償で提供されるべきであり、地域による格差がなく、全国一律に検査が受けられる仕組みと公的支援が必要」という日医の考えを述べた。
 更に、昨年成立した成育基本法では、政府に成育医療等基本方針の作成と、施策を実施するために必要な法制上、財政上の措置を義務づけていることを紹介。日医として、同方針の重要項目に新生児聴覚検査事業を盛り込むよう、強く働き掛けていくとした。
 その上で、各都道府県医師会に対しては、管内の市区町村における本事業に関して、さまざまな関係機関との連携体制を図るとともに、地域の実情に応じた施策に位置づけられるよう、積極的な活動を求めた。

(4)医療ツーリズム病院を含む自由診療病院開設問題について

 医療ツーリズム病院を含む自由診療病院開設問題に対する日医の見解を問う神奈川県医師会の質問には、釜萢敏常任理事がまず、「自由診療の病院開設により、地域での医療人材の引き抜き等が起き、また、保険医療機関への悪影響により地域住民の保険診療へのアクセスが阻害され、かつ所得により格差が広がる恐れがある大きな問題と捉えており、病床非過剰地域でもその参入に一定の歯止めが必要である」と指摘。
 加えて、昨年の医療法等の改正により、病院の開設については、①「地域医療構想調整会議」に諮ることができるようになった②同会議での協議が調わない場合には、都道府県医療審議会、都道府県知事の判断によることになっている―ことを説明し、同会議での徹底した議論を要請した。
 その上で、自由診療の病院に一定の歯止めをかけるため、既に厚労省と協議を開始していることを明らかにするとともに、「地域医療構想調整会議の協議結果が尊重されるよう、法令改正も視野に強く働き掛けていく」とし、その実現に向けた協力を求めた。

(5)災害医療体制について

 秋田県医師会からの、①JMAT(日本医師会災害医療チーム)の基本編研修の実習内容の短縮・変更②災害の亜急性期から慢性期を担う医療チームをJMATとして統一③後続のDPAT(災害派遣精神医療チーム)に対する公的補助―に関する質問・要望には、石川広己常任理事が回答した。
 まず、①については、実習内容の一部短縮・変更の希望がある場合には今期も引き続き、会内の「救急災害医療対策委員会」の下に設置するワーキンググループにおいて、個別に検討する方針であることを説明。
 ②の提案に対しては、都道府県医師会が災害急性期以降や慢性期を担当する都道府県内の医療チームをJMATとしてまとめ、実際の災害時には日医、被災地の都道府県医師会、統括JMATによるJMATとしてのコーディネート機能の下で活動することが、わが国の災害医療の充実につながるとの考えを示し、理解を求めた。
 ③の要望に対しては、先遣隊と同じように重要な役割を果たすDPATの後続チームへの公的補助の充実に向けて、DPAT事務局や厚労省とも協議の上、2020年度以降の政府予算に盛り込めるよう活動していきたいと回答した。

(6)住宅型有料老人ホームの問題点と対応について

 国が行おうとしている在宅医療の推進及び受け皿づくりの方向性、有料老人ホーム等の指導・監督の在り方についての鹿児島県医師会からの質問には、江澤常任理事が回答した。
 同常任理事はまず、サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの法的位置づけや両者が共に増加していること等を説明した上で、「日医としても、『住宅型』において、必要以上の過剰な医療・介護サービス提供や医療・介護サービスの一定以上の利用を前提とした居住契約等の不適切事例には、厳粛に対応していく」との方針を示した。
 また、地域医療構想の実現に当たり重要な課題となっているポストアキュートの医療介護提供体制について、介護行政担当者や介護団体等の関係者を交えた議論の必要性が高まっている中、今後の在宅医療の需要は地域によって大きく異なってくると指摘。国に対して、将来の在宅医療や介護の必要量の推計を要請していることを報告するとともに、「医療計画は都道府県が策定し、介護保険事業計画は市町村が策定することから、医療と介護の両分野について、行政担当部局と協議できるのは都道府県医師会に他ならない」と強調し、協力を求めた。

(7)なし崩し的なオンライン診療拡大に歯止めを!

 特定企業の利益につながり、偏った受療行動を助長しかねないとして、オンライン診療のなし崩し的な拡大への対応を求める山口県医師会からの要望には、松本吉郎常任理事が回答した。
 同常任理事は、オンライン診療に関する平成30年度改定での経緯として、中医協における日医の主張や、未来投資会議など国の動きを紹介した上で、「特別なルールがないまま、電話等再診を利用する形で行われている実態もあったため、ルールづくりを行う必要があった」と説明。議論の結果、厳しい要件や施設基準を設けた上で、限定的に保険適用とすることになったとした。
 今後は、自由診療も含む厚労省のガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関する改訂議論やオンライン服薬指導の要件に関する議論についても、厳しい姿勢で臨んでいくと強調。「中医協では、前回改定で保険導入したことによる医療現場の影響を調査・検証した上で、次回改定に向けた議論を行っていくことになる。今後も慎重に進めるべきであり、時間を掛けてしっかり検証し、対応していく」と述べた。

(8)公的医療機関における控除対象外消費税の問題

 公的医療機関の控除対象外消費税の負担についての山口県医師会からの質問には、小玉常任理事が回答した。
 同常任理事は、「医療機関の健全な経営があってこそ、地域医療が守られる。そして公・民について区別することなく、あらゆる医療機関に対して、公平に支援することを重視している」との基本姿勢を示した上で、昨年8月に控除対象外消費税問題の解決に向け、日医、日本歯科医師会、日本薬剤師会、四病院団体協議会で合同提言を行って以降の日医及び医療界の動きを解説。
 その結果、診療報酬の基本診療料の精緻(せいち)化や設備投資への支援措置、各種基金の新設や増額等が盛り込まれるなど、現時点において全体で「医療に係る消費税問題」が解決されたとの考えを改めて示し、理解を求めた(別記事参照)
 同常任理事は、最後に、「今後も地域医療を支える医療機関の経営が安定し、地域の人々が新たな医療の恩恵を受けられるよう、医業に係る税制上の課題の解決を引き続き政府に求めていく」と述べ、都道府県医師会の更なる支援を求めた。

(9)医師の働き方改革について

 昨年6月29日に働き方改革関連法が成立したことを受けて、松本常任理事が、医師以外の医療機関で働く人達に適用となる事項(①労働時間に関する制度の見直し②1人1年当たり5日間の年次有給休暇の取得義務づけ③月60時間を超える残業の割増賃金率の引き上げ④産業医・産業保健機能の強化⑤勤務間インターバル制度の導入促進⑥フレックスタイム制により働きやすくするための制度の拡充)について説明し、注意を呼び掛けた。
 また、医師の働き方改革については、宿日直や自己研鑽(けんさん)の取り扱い、医師の時間外労働規制など、現在、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」で議論されている内容を紹介。その他、賃金等請求権に関する労働基準法の見直しに向けた議論が開始されたことに触れ、「しっかりと対応していきたい」とした。

(10)風しんの抗体検査と予防接種について

 釜萢常任理事は、平成31年より3年間、昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性を対象として、原則無料で実施される風しん対策(①抗体検査②予防接種③夜間・休日の抗体検査・予防接種についても、可能な限り対応)に関して報告。「個々の医療機関等と医療機関のある市区町村で契約を締結してもらい、それを順次拡大することで全国どこでも抗体検査・予防接種を受けられるようにする」「費用請求・支払いに関しては国民健康保険団体連合会・国民健康保険中央会が代行する」などが予定されているとして、協力を求めた(下記参照)
 また、この件については、三宅邦明厚労省結核感染症課長が登壇し、「東京オリンピック・パラリンピックを控え、今年、来年に更なる流行が起きないよう、協力をお願いしたい」と述べた。

その他

 松本常任理事が、社会保険診療報酬支払基金の組織の見直しについて、①「『規制改革実施計画(平成30年6月15日閣議決定)』において、『支部の最大限の集約化・統合化の実現』を前提に集約化の在り方を検証し、それを踏まえた法案提出を行う(平成31年措置)」とされたことを受けて行われる②支部が廃止されるため、審査委員会は本部の下に置かれることとなるが、これまでと同様に、地域医療の特性等を踏まえた審査が行えるよう、設置場所は47都道府県となる―ことなどを説明した。
 なお、協議会の冒頭には、「第30回日本医学会総会2019中部」の齋藤英彦会頭らから、改めて総会概要の説明とともに、総会参加への協力依頼がなされた。

【平成31年1月15日時点における風しんの抗体検査と予防接種に関する厚生労働省による追加的対策の概要】

  1. 実施主体:市区町村
  2. 実施期間:平成31年より3年間
  3. 対象者:昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性(全国)
  4. 実施内容(準備が整った自治体から以下の対策を順次開始)
    (1)抗体検査の実施(原則無料)
    ①市区町村より対象者に個別に書面を送付し、抗体検査の受診勧奨を行う。
    ②医療機関窓口等において上記書面を提示した者に対し、抗体検査を実施する。
    ③①②の実施に当たっては、特定健診や事業所健診の機会を活用できるようにするなど、抗体検査の実施体制を整備する。
    ※③の実現のため、全国の市区町村と全国の医療機関・健診機関との間で契約の締結が必要。これらの契約を円滑に実現するための手段として、都道府県(または全国知事会)と都道府県医師会等の団体を取りまとめ者として集合契約を締結することが想定される。

    (2)予防接種の実施(原則無料)
    ※予防接種法上の定期接種に位置づける。
    ①抗体検査の結果、風しんに対する抗体価が十分でない者に対し、個別に書面により接種勧奨を行う。
    ②接種勧奨の結果、接種を希望する者に対し、MRワクチンの予防接種を実施する。
    (3)夜間・休日の抗体検査・予防接種についても、可能な限り対応。

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