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平成31年(2019年)1月20日(日) / 日医ニュース

「糖尿病性腎症重症化予防」等をめぐる各種取り組みを報告

 第6回日本糖尿病対策推進会議総会が昨年12月6日、日医会館大講堂で開催された。
 羽鳥裕常任理事/日本糖尿病対策推進会議常任幹事の司会で開会。日本糖尿病対策推進会議会長である横倉義武会長(今村聡副会長代読)はあいさつの中で、厚生労働省が定める『糖尿病の医療体制構築に係る指針』や「日本健康会議」において採択された「健康なまち・職場づくり宣言2020」の中でも、糖尿病対策推進会議等の活用が示されていること、また、平成28年3月には、日本糖尿病対策推進会議、厚労省、日医の三者により、「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結し、三者共同で策定した「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」の全国への展開を推進していることを説明。
 また、多くの地域の自治体担当者も参加していることに触れ、地域における糖尿病対策においては、医療関係者のみならず、自治体との連携が不可欠であり、関係職種が一丸となって取り組むことが非常に重要との認識を示し、本総会が地域における糖尿病対策の一助となることに期待を寄せた。
 続いて、羽鳥常任理事が、構成団体及び役員等を紹介した後、演者7名による講演が行われた。

1.糖尿病診療データベースの構築について

 (1)J―DREAMS診療録直結型全国糖尿病データベース事業:植木浩二郎国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長/日本糖尿病学会常務理事/日本糖尿病対策推進会議常任幹事は、日常診療での電子カルテの記載がそのままデータベース化されるJ―DREAMSについて、登録者数の進捗(しんちょく)を報告の上、今後の予定が示された。
 更に、J―DREAMSデータベースの運営と利活用に当たっては、日医のJ―DOMEとも将来連携を図っていきたいとした。
 (2)日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース研究事業(J―DOME):江口成美日医総研主席研究員・研究部専門部長は、①J―DOMEの概要②かかりつけ医の糖尿病診療の実態③J―DOMEの今後―について解説。今後の予定としては、「参加施設・症例を更に増やすこと」「地域の重症化予防事業との連携」「解析研究とフィードバックの継続」を考えているとし、かかりつけ医の糖尿病診療推進のための基礎データ蓄積に向け、地域の糖尿病対策推進会議、医師会、関係団体の協力を要請した。

2.糖尿病性腎症重症化予防に対する国の取組について

 野村知司厚労省保険局国民健康保険課長は、①糖尿病性腎症重症化予防に対する取り組みの推進に向けた動き②「都道府県国保ヘルスアップ支援事業」や「保険者努力支援制度」などに関連する予算事業等③「都道府県版重症化予防プログラムの策定が43都道府県(91・5%)に達していること」などの市町村や都道府県における取り組みの現状④周知啓発や財政支援、評価指標の見直しといった今後の方向性―について報告し、取り組みの推進に向けた支援を求めた。

3.地域・団体での取り組みについて

 (1)埼玉県における糖尿病重症化予防プログラムの取り組み:片山茂裕埼玉糖尿病対策推進会議副会長/埼玉医科大学名誉教授/埼玉医科大学かわごえクリニック院長・埼玉医科大学医師会長は、"埼玉県方式"について具体的に紹介。今後の課題としては、「受診勧奨者の受診率」や「保健指導の参加率と次年度の継続支援参加率」を向上させることなどを挙げ、「この方式を県内だけでなく、全国展開も図っていきたい」とした。
 (2)日本糖尿病学会の糖尿病対策:門脇孝東京大学大学院医学系研究科特任教授/帝京大学医学部常勤客員教授/日本糖尿病学会理事長/日本糖尿病対策推進会議副会長は、「第2次対糖尿病戦略5カ年計画」に基づく日本糖尿病学会のアクションプラン2010(DREAMS)の成果として、①HbA1cを取り入れた新しい診断基準の策定②HbA1cの国際標準化③血糖治療目標の熊本宣言―を挙げるとともに、糖尿病有病者数の増加は緩やかになり、予備群は減少に転じていること、糖尿病性腎症により透析を導入する割合がここ数年横ばいとなっていることを報告した。
 更に、「第3次対糖尿病戦略5カ年計画」の実現のためにも、「超高齢社会に向けた基盤整備」が重要になるとした他、当日、日本糖尿病学会HPに「糖尿病腎症重症化予防における日本糖尿病学会市町村担当医」の一覧を掲載したことも紹介した。
 (3)日本糖尿病協会における最近の取り組み:内潟安子東京女子医科大学東医療センター病院長/日本糖尿病協会理事は、小児から若年期の糖尿病対策として、糖尿病専門医とインスリンメンター(若手の1型糖尿病患者)による、教職員向け出張授業「KiDS(Kids and Diabetes in Schools)Project」を展開していること、就労者対策として、ライオンズクラブ国際協会との連携強化や産業医・産業保健スタッフ向け教育事業の開講、高齢糖尿病患者への対策として、サルコぺニア予防啓発などの取り組みについて紹介した。
 (4)日本腎臓学会による糖尿病対策の取り組みについて:要伸也日本腎臓学会理事/杏林大学医学部第一内科教授は、「日本腎臓学会5カ年計画(2017)」「糖尿病性腎症病期分類の改訂」「糖尿病対策委員会・糖尿病性腎症合同委員会による"かかりつけ医から専門医への紹介基準""専門医から専門医への紹介基準"」「日本腎臓病協会の設立」「腎疾患対策検討会報告書(2018年7月)」等の取り組みについて説明した。
 最後に、公務のため途中参加となった横倉会長が閉会あいさつに立ち、「国民の健康寿命の延伸」の実現を考えた場合、糖尿病対策は地域のみでなく職域においても一体的な取り組みが求められているとの考えを示し、参加者に対して、「今後はそうした視点も視野に入れて、地域の実情に合わせ、さまざまな取り組みを一層進めて欲しい」と呼び掛けた。
 当日の参加者は、TV会議システムを含め256名であった。

キーワード:日本糖尿病対策推進会議とは
190120j.jpg 糖尿病の発症予防、合併症防止等の糖尿病対策をより一層推進し、国民の健康の増進と福祉の向上を図ることを目的として、日医、日本糖尿病学会、日本糖尿病協会の3者で平成17年2月に設立した組織。現在は前述の3団体に日本歯科医師会を加えた4つの幹事団体、14の構成団体からなり、横倉義武会長が会長を務めている。

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