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平成30年(2018年)12月20日(木) / 日医ニュース

手洗いの父、母親の救世主センメルヴェイスの胸像除幕式に横倉会長が出席特別寄稿

センメルヴェイスの胸像
日本赤十字社医療センター

センメルヴェイスの胸像
日本赤十字社医療センター

 センメルヴェイス(Semmelweiss:1818~65年。わが国ではゼンメルワイスと呼ばれることが多い)はハンガリー出身で、ウィーンで医学を学び、産科に勤務していたが、当時恐れられていた産褥熱は診療に従事する医師や医学生が汚れた手で、妊産婦を診療するためであることを看破し、診療の前に次亜塩素酸カルシウムの溶液で手洗いをすることで産褥熱を防ぐことができることを実証した。
 その後、ハンガリーの首都ブタペストに戻った後も手洗いの重要性を説き、その普及に努めたが、46歳にして世を去った。
 当時は病原体としての細菌の存在も知られていなかった時代で、その支持者は少なかったが、後に彼の業績は高く評価され、母親達の救世主と崇められ、ハンガリー人の誇る人物となって、今ではブタペストの広場に彼の像が立ち、記念館も開設されている。
 本年はその彼の生誕200年に当たり、ハンガリー政府の肝いりで日本でもセンメルヴェイス生誕200周年顕彰事業実行委員会が発足し、横倉義武会長がその委員長を務められているが、事業の一つとしてセンメルヴェイスの胸像を渋谷の日本赤十字社医療センターに設置することになり、11月14日、その除幕式が皇后陛下のご臨席の下に執り行われた。
 日本赤十字社医療センターはそもそも古くからあった産院と病院が合併してつくられたもので、現在でも年間約3000例と東京都では最大数のお産を扱っており、産裾熱の防止に貢献したセンメルヴェイスの胸像の設置場所として選ばれたと思われる。
 式は横倉実行委員長のあいさつに続いて、ハンガリー政府代表、駐日大使、本間之夫医療センター院長のあいさつがあった後、関係者により胸像の除幕が行われた。
 感染症の予防には手洗いが大切で、特に最近では院内感染の防止に医療職の人達の手洗いの実行が重要視されており、このセンメルヴェイス胸像の設置は大きな意義があろう。

(日本赤十字社医療センター名誉院長・森岡恭彦)

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