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平成30年(2018年)9月20日(木) / 日医ニュース

「勤務医の参画を促すための地域医師会活動について」~その2~

勤務医のページ

 今号では、(別記事)に引き続き、勤務医委員会(委員長:泉良平富山県医師会副会長)答申「勤務医の参画を促すための地域医師会活動について」の概要を紹介する。

3.日医理事(勤務医枠)と勤務医委員会との定期的な懇談を介しての地域医師会勤務医活動の活性化

 今後、勤務医の声をより広く日医会務に反映していくためには、日医勤務医枠理事の活動の幅を更に広げていくための工夫が必要である。以下にその具体案を挙げる。
①ブロック医師会選出の本委員会委員との協働による地域医師会活動の活性化
 ブロック医師会選出の本委員会委員と協働して、ブロック内の医師会勤務医との懇談会を開催し、医師会活動における問題点を提起し、また組織率向上のための活動を行う。
②ブロック医師会での「勤務医(特別)委員会」の開催の支援
 中部医師会連合が開催した「勤務医特別委員会」のような、勤務医に係る問題を協議する委員会を、各ブロック医師会で常在委員会として開催することを日医が支援し、その結果を広報することによって、地域医師会活動の活性化を促す。
③郡市区等医師会での勤務医役員との懇談
 都道府県医師会勤務医担当役員と共に、県庁所在地医師会役員との懇談会を行い、地域医師会活動の活性化を図る。その他、医師数の多い地域での懇談を行う。
④日医会内委員会への日医理事としての参加
 勤務医に係る日医会内委員会に参加し、その委員会審議の内容について、本委員会にて報告・説明を行う。

4.若手医師の医師会活動への参画推進

(1)日医における医学生、研修医など若手医師との活動
 日医では、女性医師バンクの創設とともに、「医学生、研修医等をサポートするための会」を開催する一方、「男女共同参画フォーラム」を担当都道府県医師会の協力の下で開催するなど、女性医師が能力を発揮できるように多くの取り組みを実施してきた。
 また、行政も女性医師支援相談窓口事業の補助金を準備し、人的資源である女性医師の地域医療への貢献を推進してきた。
 北海道医師会では、この窓口を利用し、キャリアを継続した成功経験を後輩につなぎながら、「医学生、研修医等をサポートするための会」等の参加者と共に、医師会活動に参加する多くの若手医師が育ってきた。こうした活動の中から今後医師会活動に参画する医師を育成していく契機として欲しい。
 また、日医では、若手医師、医学生の団体との連携も図られているが、それらを一層推進しながら、若い視点から医師会活動を活性化していただきたい。
(2)都道府県医師会勤務医部会・若手医師専門委員会
 北海道医師会では、勤務医部会の部会内委員会として若手医師専門委員会を創設し、勤務医の課題解決に取り組んでいる。さまざまな課題を共有し、地域医療を担うために必要な地域への働き掛けなどを、若手医師達が発信し始めた。
 平成29年度全国医師会勤務医部会連絡協議会(担当:北海道医師会)の翌日には、同医師会の主催による「勤務医交流会」が開催されたが、これは、企画段階から全ての進行を若手医師専門委員会に任せて実現したものである。参加者の世代間ギャップを乗り越えながら盛会裏に開催できたことは、若手委員のステップアップにつながったことと思われる。勤務医交流会を継続的に開催していくことで、勤務医の役割と意識改革を広げていくことが望まれる。

5.会費、会員の待遇など

 勤務医にとって、医師会会費の負担は軽いものではない。その点、平成30年度より、日医医師賠償責任保険の保険料引き下げに伴い日医会費が改定(引き下げ)されたことは高く評価したい。
 個々の医師会への入会メリットとしては、勤務医個人に対する訴訟も増加する中で、日医医賠責保険の恩恵は極めて大きいと言える。また、金利設定が有利で利便性の高い日医年金も、大きな支援の一つになろう。
 勤務医の参画を促すための地域医師会活動を推進するためには、勤務医にとって有意義な事業の更なる充実と、医師資格証の活用等も視野に入れた入退会・異動手続きの簡素化が必要であり、今後一層の議論が求められる。
 同時に、医師会の組織強化に向けては、医師会入会の窓口となる郡市区等医師会の意識啓発と積極的な取り組みの推進が期待される。

6.医師資格証の利用

 医師資格証とは、日医電子認証センターが発行しているICカードである。
 身分証としての利用は、医療機関での医師採用時に、医師資格証の提示により医師資格の確認が可能となった(平成29年12月18日付医政医発1218第1号)。
 また、IT上での利用としては、コンピューターでの紹介状、診断書、主治医意見書、電子処方せん等、医師の署名・捺印が必要な文書の作成や、今後ITを利用した地域医療連携時などのネットワークを通じての本人確認、医師会の生涯教育制度、認定医制度、かかりつけ医機能研修制度等、各種研修会の出欠管理等が可能である。
 勤務医にとっての医師資格証利用としては、医師会異動時にも、手続きの簡素化を図れることが考えられる他、今後専門医などの情報の登録が可能になれば、さまざまな場面での利用が考えられる。
 日医会員の医師資格証の利用料は無料である。勤務医の医師会への入会を促し、医師資格証の取得を推進することは、医師会及び若手医師を中心とした勤務医にとっても重要であると考える。

7.勤務医の一層の参画を促すための取り組み

(1)都道府県医師会役員への勤務医の更なる登用
 都道府県医師会における勤務医の構成割合を考えれば、各都道府県医師会における勤務医のより積極的な役員への登用が望まれる。
 また、昨今の医療制度の改正等を見ても、医師会活動において勤務医が活躍する場は広がっており、むしろ勤務医こそが担うべき事業も増大している。例えば、医療事故調査制度は、医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を医療事故調査・支援センターが収集・分析することで、再発防止につなげ、医療の安全を確保するための仕組みであるが、同制度に果たす勤務医の役割は極めて大きいものと考える。
 勤務医が都道府県医師会役員として活躍することが、勤務医の医師会活動の裾野を広げ、ひいては、勤務医の医師会入会にもつながっていくものと考える。
(2)日医勤務医部会の創設
 勤務医部会のある都道府県医師会は27、勤務医委員会が設置されている都道府県医師会は27で、ほぼ全ての都道府県医師会に勤務医部会もしくは勤務医委員会、あるいはその両方が設置されていることになる。
 日医勤務医部会創設を願う大きな理由は、全都道府県医師会に勤務医部会が設立されることにつながり、その代表が日医勤務医部会構成員となり、地域医師会、ブロック医師会単位での勤務医部会活動が活性化されることである。地域医師会活動により多くの勤務医の参画がかなえば、地域医療連携の更なる強化となり、地域医療の一層の充実を期待できる。重要なのは地域医師会活動に参画する勤務医の声を、日医の会務にしっかりと反映していくことであると思う。
(3)郡市区等医師会での勤務医活動の活性化
 病院完結型医療から地域完結型医療を目指すためには、それぞれ顔の見える医療連携を構築することが極めて重要である。
 各地域においては、地域医師会等に診療科ごとの医会等があり、病院勤務医師が参加し講演するような研修会等も多々ある。こうした活動に参加することにより良好な連携を進めることができる。地域医療構想は、構想区域ごとに地域医療構想調整会議にて検討されており、地域包括ケアシステムを構築する医療・介護連携にも地域医師会の関与が大きい。また、学校医部会等での活動も地域貢献に重要であり、学校保健事業・委員会への参加及び学校医として勤務医会員の活躍が期待されている。
 病院勤務医が地域医師会に加入して活動する必要性は大きく、極めて大事である。

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