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平成30年(2018年)6月20日(水) / 日医ニュース

11項目からなる要望の実現に理解を求める

11項目からなる要望の実現に理解を求める

11項目からなる要望の実現に理解を求める

 「2019年度政府概算要求に対する日本医師会要望の説明会」が5月29日、厚生労働省で開催され、横倉義武会長始め常勤役員が出席した。
 横倉会長は日医の要望に対する理解を求め、その実現に対する協力を要請した(要望の全文は日医ホームページを参照)。

 本説明会は、政府概算要求に対する日医の要望について、直接説明することでより理解を深めてもらうことを目的として例年開催している。
 今回の要望は、国民が将来にわたって必要とする医療・介護を過不足なく受けられる社会を構築し、国民が安心して医療や介護を受けられることを目指して取りまとめられたものである。
 具体的には、別掲の11項目で構成されている。
 新規の項目としては、「外国人医療対策の充実」「ゲノム情報を活用した新たながん検診のエビデンス構築に向けた研究の推進」「医師のキャリアデータベースの構築」「介護医療院転換のための経費の助成」「H20〔Health Professional会合:世界医師会加盟医師会とWHO地域事務局がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進をテーマに議論する場〕開催のための予算確保」などが盛り込まれている。
 冒頭あいさつした横倉会長は、国民皆保険を維持していくためにも健康寿命をいかに延伸させていくかが大きな課題となっており、日医としても既に宮城県や静岡県で行われている日本健康会議の都道府県版を全国に広げていくことを目的として、「都道府県医師会予防・健康づくり(公衆衛生)担当理事連絡協議会」を6月15日に開催することを説明。「今回の要望は、国民が安心して医療や介護が受けられるよう、取りまとめたものである。ぜひ、ご理解の上、その実現に協力願いたい」と述べた。
 引き続き今村定臣常任理事が、資料に基づいて11の項目ごとに日医の要望の概要を説明した。

日医の要望に一定の理解―厚労省

 厚労省事務局は、日医の要望に対して一定の理解を示した上で、「地域医療」に関しては、「地域医療介護総合確保基金をしっかり確保していきたい」と回答。その配分方法については、「制約もあるが、配分に当たっては、あらかじめ都道府県と十分な話し合いを行っていく」との姿勢を示した。
 「災害対策」に関しては、JMAT活動に対する感謝の意を示した上で、「被災地で適切な医療を提供するためにも、平時から準備を進めていく必要があり、そのための予算を確保していきたい」とした他、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた協力を求めた。
 「医療安全」について、日医が医療事故調査等支援団体の運営や院内調査に要する費用に対する予算確保を求めたことに対して、「『まずは医療機関の負担で』ということで始めた事業ではあるが、適切な補助は必要と考えている」と回答。また、死因究明については、「円滑な運営のため、どのようなことが必要かを引き続き検討していきたい」とした。
 「働き方改革」については、「医師の健康への配慮」「地域医療の継続性」という二つの点を両立する必要があるとの日医の主張に賛意を示すとともに、今後は「医療勤務環境改善支援センター」の役割が重要になると指摘。「各センターの活動にもバラツキがあり、活性化できるようにしていきたい」と述べた。
 「消費税対応」に関しては、「大きな課題であり、しっかり対応していきたいと考えている。日医が中心となって、ぜひ、医療界の意見を取りまとめて欲しい」とした。
 「医療の国際貢献推進」として、来年6月のG20(金融世界経済に関する首脳会合)の開催に併せて、H20の開催を求めたことに関しては、「G20に併せて、岡山での保健大臣会合を始め、さまざまな会合が行われると思うが、厚労省としても、UHCの推進に取り組んでいきたい」とした。
 「ICT・AI・IoT活用」に関しては、費用対効果の観点も考慮に入れながら進めていくとした他、医療等分野専用のネットワーク構築については2020年度の運用開始に向けて現在検討を進めているとして、引き続きの協力を求めた。
 また、「健康医療」「薬務対策」「介護保険」については、「国民への健康増進に向けた啓発活動に努めていること」「不適切な広告に対する監視モニター事業を開始したこと」「介護医療院への転換に関しては地域医療介護総合確保基金に新たなメニューを入れて対応していくこと」など、厚労省の取り組みについて説明があった。
 その後の意見交換では、中川俊男副会長が、消費税率10%への引き上げの際には医療に使える財源をしっかりと確保すべきとして、協力を要請。
 今村聡副会長は、日医が中心となって作成した健診標準フォーマットの活用を改めて求めた。
 石川広己常任理事は、日医がレジリエントな地域包括ケアシステムづくりを進めていることを説明し、その視点に立った要配慮者への支援体制の構築に向けた支援を要請。更に、「ラグビーワールドカップ2019」に向け、12会場のある都道府県・郡市区医師会と協力して対策を検討していく考えを示し、協力を求めた。
 羽鳥裕常任理事は、医師の地域偏在・診療科偏在の解消のためにも、しっかりとした医師のキャリアデータベースを構築する必要があると指摘した。
 釜萢敏常任理事は、昨今の麻しん感染拡大例に言及。「接種希望者が増えることで一時的にでもワクチンが足りなくなるようなことがないよう、余裕のあるワクチン供給をお願いしたい」と述べるとともに、風しんに対する男性の抗体価が特定の年齢層で低いことを指摘し、積極的な対応を求めた。
 温泉川梅代常任理事は、妊婦の歯科健診並びに1歳になる前の子どもの健診に対する財政措置を要望した。
 松本吉郎常任理事は、働き方改革の中には、予算の裏付けがなければ進まないものもあるとし、特に救急医療、周産期医療に関する対応を要望した。
 これらの要望に対しても、厚労省事務局は前向きに検討していく考えを示し、今後も両者が協力して厚生労働行政を進めていくことを確認。
 最後に、武田俊彦医政局長が、「本日は多岐にわたる要望を頂いたが、その全てが重要なことばかりである。財政状況が厳しい中ではあるが、本日の意見を踏まえ充実した概算要求となるよう取り組んでいくので、引き続き協力をお願いしたい」とあいさつし、説明会は終了となった。
 なお、日医では、今回の要望を基に、政府与党並びに関係省庁に対して、その実現を強く求めていくこととしている。

2019年度予算概算要求へ向けての日本医師会要望(11項目)
(1)地域医療への予算確保
(2)健康医療への予算確保
(3)ICT・AI・IoT活用への予算確保
(4)災害対策への予算確保
(5)医療安全への予算確保
(6)薬務対策への予算確保
(7)医学・学術への予算確保
(8)働き方改革への予算確保
(9)介護保険への予算確保
(10)医療の国際貢献推進への予算確保
(11)消費税対応への予算確保

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